第507回 女子中の算数 速さ 1
「第507回 女子中の算数 速さ 1」
ここまで、中学入試問題の中から、近年、女子中で出された「文章題」、「比と割合(食塩水の濃さ、売買算)」の問題をご紹介してきました。
今回からは、「速さ」に関する問題を見ていこうと思います。
これまでと同様に、はじめは1行問題を見ていくことにします。
【問題】
図のような直線のコースがあり、AB間は泳いで、BC間は自転車で、CD間は走って進みます。さくらさんはAを出発して、休むことなくDに向かいました。さくらさんの泳ぐ速さは毎分30m、 自転車の速さは毎分500m、走る速さは毎分150mです。さくらさんがDに着くのは、Aを出発してから何時間何分何秒後ですか。
(学習院女子中等科 2019年 問題2)
【考え方】
1問目は速さの3公式の問題です。
2000m÷30m/分=200/3分=1時間6分40秒 … AB間
30000m÷500m/分=60分=1時間 … BC間
25000m÷150m/分=500/3分=2時間46分40秒 … CD間
1時間6分40秒+1時間+2時間46分40秒=4時間53分20秒後
本問は、単位をそろえて速さの3公式を用いる問題でした。
では、2問目です。
【問題】
50mをちひろさんは7.6秒、ゆいさんは8.0秒で走ります。2人で50m走をすると、ちひろさんがゴールしたとき、ゆいさんはゴールの何m手前にいますか。
(鎌倉女学院中学校 2019年 問題2-(2) 問題文一部改)
【考え方】
条件を線分図で表してみます。
上の線分図より、ゆいさんが
8秒-7.6秒=0.4秒
で走る距離を求めればよいことがわかります。
50m÷8秒=6.25m/秒 … ゆいさんの速さ
6.25m/秒×0.4秒=2.5m
2問目は、問題の条件を線分図などに整理すると、ゆいさんの速さだけを求めればよいことに気づけます。
なお、この問題は、「速さの3公式」以外に「速さと比」の関係を利用しても解けますし、ダイヤグラムに整理してもよいと思います。
続けて、1行問題を見ていきます。
【問題】
姉が5歩進む間に妹は6歩進みます。また、姉が4歩で進む距離を妹は5歩で進みます。妹が240m歩く間に姉は何m歩くか求めなさい。
(頌栄女子学院中学校 2019年 問題1-(6))
【考え方】
「歩幅の比×歩数の比=距離の比(速さの比)」を利用して解きます。
240m×25/24=250m
3問目は、「歩幅と歩数」の基本問題でした。
では、4問目です。
【問題】
1周が120mある池の周囲を、AさんとBさんが同時に同じ地点から反対方向に歩き始めました。Aさんが毎分100m、Bさんが毎分80mで歩くとき、2人が2回目に出会うのは歩き始めてから何分何秒後か求めなさい。
(晃華学園中学校 2019年 問題1-(2))
【考え方】
「池タイプの旅人算」です。
問題の条件を円形線分図に整理してみましょう。
2つの円形線分図を見ると、2人が歩き始めてから1回目に出合うまでも、1回目に出合ってから2回目に出合うまでも、2人の歩く距離の和が120mであることがわかります。
120m÷(100m/分+80m/分)=2/3分
2/3分×2回=4/3分=1分20秒後
「池タイプの旅人算」では、上の図のように、出合いのときは2人の進む距離の和が池1周分、追いつきのときは2人の進む距離の差が池1周分ということが、問題を解くときの基本ポイントです。
最後にもう1問見ていこうと思います。
【問題】
流れの速さが一定である川の上流にA地点、下流にB地点があり、静水時の速さが異なる船Xと船Yが2地点間を往復しています。船Xが2地点間を下る時間と船Yが2地点間を上る時間は等しく、船Xが2地点間を上る時間と船Yが2地点問を下る時間の比が3:1であるとき、船Yの静水時の速さは川の流れの速さの何倍ですか。
(吉祥女子中学校 2019年 問題1-(7))
【考え方】
問題の条件を状況図(線分図)に整理してみます。
「同じ距離を進むときの時間の比」が分かっていますので、速さの比を求めることができますし、AB間を時間の最小公倍数3と仮定してから、速さを求めることも可能です。
2つの時間の比「1:1」と「3:1」が、「1:1:3:1」のようにつながっていないことに注意しながら、「速さの比←(逆比)→時間の比」を利用して解いてみます。
ここで「流速相殺(上りの速さ+下りの速さ=静水時の速さの和)」を利用します。
ですから、船Yの上りの速さ=2□、船Yの下りの速さ=3□となりますので、
船Yの静水時の速さ=(2□+3□)÷2=2.5□
川の流れの速さ=船Yの下りの速さ3□-船Yの静水時の速さ2.5□=0.5□
または
川の流れの速さ=船Yの静水時の速さ2.5□-船Yの上りの速さ2□=0.5□
となり、船Yの静水時の速さは川の流れの速さの
2.5□÷0.5□=5倍
であることがわかります。
なお、差に着目して、「船Xの下り-船Xの上り=船Yの下り-船Yの上り=川×2」から解いてもよいと思います。
本問は、船Xと船Yが出合っているわけではありませんので、「流速相殺」が利用できることにやや気づきにくいかもしれません。
今回は「速さ」の1行問題を見てきました。
ご紹介した1問目から4問目が速さの3公式を使って解く問題、歩幅問題や旅人算などの定番問題であったように、1行問題の多くは本番の入試では是非とも正解したい基本レベルの問題です。
5年生で「速さ」の単元を学ぶときは、今回見てきましたような基本レベルの問題は必ず正解できるように学習しておくことが、中学入試の学習においてとても大切です。