第503回 女子中の算数 比と割合 2
「第503回 女子中の算数 比と割合 2」
「比と割合」の問題について、最近の女子中の入試問題から見てきています。
前回は、「比と割合」の問題の中から、「食塩水の濃さ」の1行問題について考えましたが、今回は同じ「食塩水の濃さ」をテーマとする大問形式の問題を取り扱います。
【問題】
3つの容器A、B、Cがあり、容器Aには6%の食塩水が600g、容器Bには8%の食塩水が900g、容器Cには10.5%の食塩水が1800g入っています。これらの容器について、次の操作をします。
【操作1】容器Aからある量を取り出し、容器Cから同じ量だけ取り出して、それぞれに移し加える。
【操作2】容器Bからある量を取り出し、容器Cから同じ量だけ取り出して、それぞれに移しかえる。
【操作1】の後、【操作2】を行ったところ、容器A、B、Cの食塩水の濃さがすべて同じになりました。
(1) 容器A、B、Cの食塩水の濃さは何%になりましたか。
(2) 【操作1】を行う前と後で、容器Cの食塩水に含まれる食塩の量は何g減りましたが。途中の式や考え方なども書きなさい。
(吉祥女子中学校 2018年 問題3-(2))
【考え方】
問題文より「同時に等しい量の食塩水を交換する」問題だとわかりますので、その様子を流れ図に整理して、着目ポイントを見つけやすくします。
流れ図は、上のように「交換」に関係していない容器についても濃さと食塩水の重さを書いておくと、より考えやすくなると思います。
(1)
(1)を解くために必要な解法知識は、「やりとりをすると食塩水の濃さがすべて同じになる場合、やりとり後の食塩水の濃さははじめの食塩水をすべて混ぜたときの濃さと同じである」ということです。
本問では、はじめの食塩水について食塩水の重さも濃さもわかっていますから、「塩テントウ(塩分数)」、「面積図」、「天秤法」のいずれを用いても「ア%」を求めることができます。
今回は「塩テントウ(塩分数)」を使って計算してみます。
297g÷3300g=0.09 → 9%
(2)
(1)でわかったことを流れ図に書き込んでみます。
上の図の赤線枠内の容器Aに着目すると、操作1により食塩水の重さは600gのままで、濃さだけが6%から9%となりましたから、含まれている食塩が
600g×(0.09-0.06)=18g
増えたことになります。
容器AとCの間で食塩水をやりとりしても、2つの容器に含まれる食塩の重さの和は変わりませんから、容器Aで食塩が18g増えれば、容器Cの食塩は18g減ります。
答え 18g
(別解)
上の図の青線枠に着目します。
容器BとCとの間で食塩水をやりとりしても、2つの容器に含まれる食塩の重さの和は変わりませんから、(1)と同様に「塩テントウ(塩分数)」を用いて「イ%」を求めることができますし、次の図のように「天秤法」でも計算できます。
上の天秤図で、
②=9%-8% → ①=0.5%
9%+0.5%=9.5% … イ%
と求められます。
従って、容器Cに着目すると、操作1により食塩水の重さは1800gのままで、濃さだけが10.5%から9.5%となりましたから、含まれている食塩が
1800g×(0.105-0.095)=18g
減ったとわかります。
本問は、(2)に複数の解き方があったように、問題を解くための条件が多く与えられています。
そのため、どこから手をつけようか一瞬迷うかもしれませんが、流れ図を書いてやりとりの状況を整理すると、着目するポイントが見つけられます。
今回は、「比と割合」の問題の中から、「食塩水の濃さ」の大問形式の問題を取り扱いました。
大問形式の問題を解くためには、1行問題で用いた「塩テントウ(塩分数)」や「面積図」、「天秤法」などの計算方法が使えることに加えて、条件が整理できること、「(やりとりをすると)食塩水の濃さがすべて同じになる」などの解法知識を身につけていることの2点が必要であることがわかりました。
大問形式の「食塩水の濃さ」の問題が苦手だという場合、計算方法、条件の整理、解法知識のどの部分に課題があるかを確認し、課題に応じた学習に取り組んでいきましょう。