第498回 合否を分ける問題の解き方 立体図形の影の問題
「第498回 合否を分ける問題の解き方 立体図形の影の問題」
最近の中学入試問題の中から、前回までは作図力が求められる「図形の回転移動」をテーマとした問題について考えてきました。
今回も、作図力が必要となる問題の中から、「立体図形の影」をテーマにした問題をご紹介していきます。
その前に、まずは基本問題として、「壁が作る影」の問題の解き方を見ていきましょう。
【基本問題】
下の図のように、高さ2m、長さ10mの長方形の壁と、その前方12mのところに高さ6mの電柱があり、その先端についている電灯の光で壁の影ができています。この影の面積は何m2ですか。
【解答例】
「壁が作る影」の問題は、投影図を「真横から見た図 → 真上から見た図」の順に、上下にならべてかくことが、基本の解法です。
始めに「真横から見た図」をかくと、次のようになります。
上の図で相似を利用すると、CD=6mとわかります。
次に、「真上から見た図」を「真横から見た図」の下に並べてかきます。
上の図で相似を利用するとBC=15mとわかりますので、影の面積は
( 10m + 15m ) × 6m × 1/2 = 75m2
と求められます。
このように、影の問題は、投影図をかく力が重要なポイントです。
それでは、入試問題の中から、「立体図形の影」がテーマの問題を見てみましょう。
今回取り扱う立体図形は四角すいです。
四角すいの影の問題は、2019年度の灘中学校の算数2や駒場東邦中学校などで出されていますが、問題文が長いため、ご紹介するのは灘中学校と同じ兵庫県の甲陽学院中学校の入試問題です。
2019年度 甲陽学院中学校 入試問題 第2日 算数より
問題6 広く平らな砂漠の上に、底面が1辺60mの正方形で、高さが60mの四角すいの形をしたピラミッドがあります。図はそれを真上から見た図です。また、砂漠のA地点からの高さが120mの所をP、B地点からの高さが90mの所をQとします。いま、Pに強力なライトをつけたドローンが静止していて、砂漠の上にピラミッドの影ができています。ただし、ピラミッドの下は影にふくまないものとします。
(1) 砂漠の上にできているピラミッドの影の面積を求めなさい。
(2) ドローンがPからQにまっすぐ移動したとき、砂漠の上でピラミッドの影が通ったすべての部分の面積を求めなさい。
【解答例】
(1)
四角すいの影の問題は、その投影図から考えていきます。
本問の四角すいは、A地点から見ると三角形CDEを見ていることと同じになります。
この三角形の形をした「壁」があると考えると、上記の基本問題と同じ作図方法が利用できます。
問題文に「ピラミッドの下は影にふくまない」とありますから、求める部分は下の図の直角三角形です。
30m×60m×1/2=900m2
(2)
はじめに、ドローンが点Qにあるときにできる影を作図します。
Bから見える「壁」は、三角形CGHです。
ですから、その影は次のようになります。
従って、ドローンがPからQに移動したときにピラミッドの影が通過した部分は、下の図の通りです。
(60m+150m)×150m×1/2-(60m×60m+60m×150m×1/2)=7650m2
これまでの中学入試で出された立体図形の影の問題には、角柱や角柱を組み合わせた図形、円柱などいろいろな立体図形あります。
柱体であれば側面によってできる影と上側の底面によってできる影の2つに着目しなければならないなど、ポイントは題材となる立体図形によって少しずつ異なりますが、見取り図や投影図を利用するという点は共通です。
見取り図は求める部分の形状をつかむために、投影図は求める部分の正確な長さを計算するために用いますので、最終的には正確な作図力が問題の成否を決めることになります。
立体図形の影の問題が苦手なときは、投影図が上手くかけるように方眼ノートやドットノートを使ったり、着目する面や頂点の勉強をしたりするとよいと思います。