第491回 合否を分ける問題の解き方 流水算
「第491回 合否を分ける問題の解き方 流水算」
中学入試の算数の問題は、基本的な学力を測る問題(=基本問題)、問題文の意味や条件の理解、条件の使い方が問われる問題(=応用問題)、難度の高い問題(=発展問題)の3段階で構成されていることが一般的です。
これらの問題のうち、合否を分けるのが応用問題です。
ある学校を受験する場合、その中学校のレベルにおける基本問題で失点せず、かつ応用問題を半分以上正解できれば、多くの学校で合格最低点を超えることができます。
そこで、今回から、このような合否を分ける問題とその解き方について考えていこうと思います。
はじめに見ていく問題は「流水算」です。
「流水算」の基本問題は、次の「上りの速さ」、「下りの速さ」、「静水時の速さ」、「流速」の4つの速さの関係を理解することで解くことができます。
しかし、「流水算」の応用問題はこれ以外の知識や解き方を身につけていないと正解することができません。
その1つの例が「エスカレーター問題」や「動く歩道」の問題です。
【例題 … エスカレーター問題】
ある下りのエスカレーターに立ったまま乗っていると下りきるまでに24秒かかり、1秒に1段ずつ歩きながら下っていくと16秒かかります。このエスカレーターの段数は何段ですか。
【解答例】
「エスカレーター問題」では、上記の流水算の基本にある「流速」がエスカレーターの動く速さ、「静水時の速さ」が歩く速さにあたります。
このように、「エスカレーター問題」は、流水算の基本である4つの速さの「読み替え(=条件の理解)」を行うと、あとは基本と同じ解き方を利用することができます。
【別解】
この例題を「線分図解法」を用いると次のようになります。
歩いて下る速さをエスカレーターの速さと歩く速さに「分解(=条件の使い方)」する解き方です。
「エスカレーターに16秒運ばれつつ、自分でも16秒歩いて下りきった」と考えると上のような線分図になりますから、エスカレーターが
24秒-16秒=8秒間
に進む距離が16段とわかります。
16段÷8秒=2段/秒 … エスカレーターの速さ
2段/秒×24秒=48段
このようにして解く「エスカレーター問題」の類題が中学入試でも出されています。
次の入試問題は、合格者の50%以上が正解したのに対し、受験者全体ではおよそ35%で、出題校の合否を分ける1つの問題となっています。
2019年度 世田谷学園中学校 入試問題 1次試験 算数より
問題3 ある川をカヌーで上流のA地点から下流のB地点まで移動します。カヌーを40回こいで下ると30秒かかり、こがずに下ると50秒かかります。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) 静水時にA地点からB地点までと同じ距離を移動するには、何回こげばよいですか。
(2) A地点からB地点まで20秒で下るには、1秒間に何回のペースでこげばよいですか。
【解答例】
(1)
上の例題と同じように「速さと比の関係」を整理すると、次のようにして解くことができます。
また、この問題も例題と同様に、線分図解法を用いることができます。
上の線分図から、
静水時にAB間をこぐ回数=40回×5/2=100回
とわかります。
(2)
線分図解法を利用してみます。
上の線分図から、
流速で50秒に進む距離:流速で20秒に進む距離=5:2
流速で50秒に進む距離:こぐ速さで20秒に進む距離=5:3
20秒間にこぐ回数=100回×3/5=60回
とわかります。
60回÷20秒=3回/秒
答え 3回
合否を分ける1問となった流水算の応用問題では、「読み替え」や「分解」といった問題文の意味や条件の理解、条件の使い方が問われました。
ですから、中学入試の勉強では、基本的な知識の習得に加え、「読み替え」が使いやすくなる比の書き並べ方や、「分解」を見やすくする線分図のかき方など、条件の整理方法を身につける学習が重要だと思います。