第488回 応用問題が解けるようになろう 2
「第488回 応用問題が解けるようになろう 2」
前回から、中学入試で出される算数の応用問題の解き方について考えています。
応用問題は、基本問題が解き方をそのままあてはめて解くことができるのに対し、いくつかの解き方を組み合わせるまたは基本の解き方を元にして解く問題や、条件を整理することが必要です。
前回にご紹介した2020年度の海城中学校の入試問題の時計算の場合ですと、時計算の基本の解き方である「□時0分の時計をかく → 2針を動かす または 短針を止めて考える」を、「1日が8時間、1時間が40分」という問題の条件に合わせることで正解を導き出すことができました。
今回は、この続きの(2)、(3)について、その解き方を見ていこうと思います。
2020年度 海城中学校 入試問題 一般入試① 算数より
問題5 ある星では、1日が8時間で、1時間が40分です。この星の時計は下の図のようになっており、例えば、図1は3時ちょうど、図2は3時20分を表しています。次の問いに答えなさい。
(2) 長針と短針のつくる角の大きさが90°となるのは1日で何回ありますか。
(3) 現在4時16分です。次に長針と短針のつくる角の大きさが128°となるのは何分後ですか。
【解答例】
前回と同様に、海城中学校の問題と基本問題を比べながら、応用問題の解き方をみていきましょう。
(2)の基本問題
長針と短針のつくる角の大きさが90°となるのは0時から12時までの12時間に何回ありますか。(1日=24時間、1時間=60分)
「2針を動かして」解く方法もありますが、今回は絵がかきやすい「短針を止める」解き方を用いてみます。
はじめに、0時0分の時計をかき、そこから長針だけを動かして長針と短針のつくる角の大きさが1回目に90°になる絵、2回目に90°になる絵をかき加えます。
上の図から、0時0分から初めて長針と短針のつくる角の大きさが1回目に90°になるまでの時間は180/11分間、1回目から2回目までは360/11分間、それ以降も360/11分間ごとになることがわかります。
60分×12時間=720分間 … 0時から12時までの時間
(720分間-180/11分間)÷360/11分間=21回あまり180/11分間
1回+21回=22回
本問の解き方
本問では「1日が8時間で、1時間が40分」になっていますから、長針と短針が1分間に動く角の大きさは
360°÷40分=9°/分 … 長針
360°÷8時間÷40分=9/8°/分 … 短針
です。
上の図から、0時0分から初めて長針と短針のつくる角の大きさが1回目に90°になるまでの時間は80/7分間、1回目から2回目までは160/7分間、それ以降も160/7分間ごとになることがわかります。
40分×8時間=320分間 … 0時から8時までの時間
(320分間-80/7分間)÷160/7分間=13回あまり80/7分間
1回+13回=14回
このように、海城中学校の入試問題の大問5-(2)も前回の(1)と同様に、「ふつうの時計で2針が90度なす時刻」の解き方の理由がわかっていれば、まったく同じ考え方で解くことができます。
なお、(2)は上記の解き方以外にも、「2針が重なってから次に重なるまでに、90°になることが2回ある」という考え方を利用することもできます。
では、続けて大問5-(3)です。
(3)の基本問題
現在4時16分です。次に長針と短針のつくる角の大きさが128°となるのは何分後ですか。(1日=24時間、1時間=60分)
この問題も「2針を動かして」解くことはできますが、前問と同じように「短針を止める」解き方を用いてみます。
はじめに、4時0分の時計をかき、そこから長針だけを動かして長針と短針のつくる角の大きさが128°になる絵をかき加えます。
上の図より、長針と短針のつくる角の大きさが128°となる時刻は4時45 1/11分とわかりましたから、答えは、
4時45 1/11分-4時16分=29 1/11分後
です。
本問の解き方
基本問題と同じように、「短針を止めた絵」をかいて考えてみます。
上の図より、4時16分より後で長針と短針のつくる角の大きさが128°となる時刻は4時39 1/9分とわかりましたから、答えは、
4時39 1/9分-4時16分=23 1/9分後
です。
大問5-(3)も前問の(2)と同じく、基本問題を元にした解き方で正解することができました。
なお、この(3)も、「4時16分の絵」を利用する別解があります。
前回と今回は2020年度の海城中学校の入試問題の大問5を例にして、応用問題の解き方を考えてみました。
応用問題は、初見の問題が多い発展問題とは異なり、基本問題の解き方の理由が理解できていれば、その考え方を利用することで正解することができます。
ですから、中学入試に向けた算数の学習では、「基本の解き方」とその「理由」の両方を身につけておくことが大切になっていることがわかります。
次回は、応用問題のもう1つのパターンである、「条件を整理する」ことで正解が可能な問題を見ていこうと思います。