第486回 2020年度の中学入試 7
「第486回 2020年度の中学入試 7」
ここまで、人気が高まっている大学の付属校について、2020年度の中学入試問題をご紹介しています。
前回は早稲田大学の系属校である早稲田中学校の第1回の入試問題をご紹介しましたが、今回も同じ早稲田大学の系属校から、早稲田実業学校中等部の入試問題を見ていこうと思います。
2020年度の早稲田実業学校中等部の算数の入試問題も、2019年度と同じ大問5題でした。
2020年度 早稲田実業学校中等部 入試問題 算数より
問題4 2つの管A、Bから水そうに食塩水を入れていきます。管Aからは( ア )%の食塩水、管Bからは4%の食塩水がそれぞれ出てきます。この水そうが空のとき、いっぱいになるまで食塩水を入れるのに、管Aのみで入れると48分かかり、管Bのみで入れると( イ )分かかり、管A、Bの両方で入れると18分かかります。今、この水そうの容積の1/6だけ3.6%の食塩水が入っています。この状態から4分間管Aのみで入れると、食塩水の濃度は8%になりました。その後、( ウ )分間管Bのみで入れ、さらにその後( エ )分間管A、Bの両方で入れると水そうはいっぱいになり、食塩水の濃度は7.2%になりました。次の問いに答えなさい。
(1) ( イ )に入る数を求めなさい。
(2) ( ア )に入る数を求めなさい。
(3) ( ウ )、( エ )に入る数を求めなさい。
【解答例】はじめに、問題文前半の条件を整理します。
(1)
上の図1~3より、仕事算を利用すると(イ)が求められそうだとわかります。
そこで、水そうの容積を48分と18分の最小公倍数の144〇とすると、
144〇÷48分=③/分 … 管Aから1分間に入る食塩水の量
144〇÷18分=⑧/分 … 管AとBの両方から1分間に入る食塩水の量
とわかりますから、
⑧/分-③/分=⑤/分 … 管Bから1分間に入る食塩水の量
が求められます。
144〇÷⑤/分=28.8分
答え 28.8
(2)
上の図だけでは管Aから出る食塩水の濃度を求めることはできませんので、問題文の続きの条件も整理していきます。
図4から、「天秤法(または面積図)」を利用すれば、管Aから出る食塩水の濃度を求めることができそうだとわかります。
上の図より、
1□=8%-3.6%=4.4% → 2□=8.8%
8%+8.8%=16.8% … 管Aから出る食塩水の濃度
とわかります。
答え 16.8
(3)
最後の条件もこれまでと同じように整理してみます。
図5より、次のような天秤図をかくことができます。
上の図より、
3□=8%-7.2%=0.8% → 1□=4/15%
?%=7.2%-4/15%=104/15%=6 14/15% … 管Aと管Bを使って加えた食塩水全体の濃度
とわかります。
このことから、
という天秤図をかくことができます。
108〇×11/48=24.75〇 … 管Aから入れた食塩水の量
108〇-24.75〇=83.25〇 … 管Bから入れた食塩水の量
24.75〇÷③/分=8.25分 … 管Aから食塩水を入れた時間(エ)
83.25〇÷⑤/分=16.65分 … 管Bから食塩水を入れた時間(ウ)+(エ)
16.65分-8.25分=8.4分 … (ウ)
答え ウ 8.4、エ 8.25
(3)は「つるかめ算」のようにも見えますが、問題の条件を図などにかいて見やすくしてみると、食塩水を入れている合計時間がわかりませんので、濃さを利用しなければいけないことに気づけます。
現在の学校教育法には「基礎的な知識および技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力その他の能力を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない」という規定があります。
この規定を中学入試の算数にあてはめてみると、学力の3要素である「思考力」、「判断力」「表現力」を問う問題が、「思考力」問題であるといえるでしょう。
本問は、8行にわたる問題本文から、各問いを解くために必要な条件がどれであるかを見つけ、適切な解法を選択させるという点において、「判断力」を問う「思考力」問題であるということができます。
2021年度の受験生は、記述問題に代表される「表現力」を問う問題に対する準備も大切ですが、本問のようなこれまでも中学入試で出題されてきた、「判断力」を問う長文の「思考力」問題に対応するために、その基礎となる「知識」、「解き方」を6年生の前半に固めることも非常に重要な学習だと思います。