第485回 2020年度の中学入試 6
「第485回 2020年度の中学入試 6」
前回から、人気が高まっている大学の付属校について、2020年度の中学入試問題をご紹介しています。
今回は、早稲田大学の系属校である早稲田中学校の第1回の入試問題を見ていこうと思います。
早稲田中学校の第1回の算数の入試問題は、2019年度と同じく大問5題という構成でした。
2020年度 早稲田中学校 入試問題 第1回 算数より
問題1-(1) からある数を引いて最も大きい整数にします。そのある数は何ですか。約分できない分数で答えなさい。
【解答例】
一瞬、何を問われているのか、戸惑いそうになる問題ではないでしょうか。
しかし、上記のような式に表すと、問題の仮分数を帯分数に直す問題であることがはっきりします。
51005÷3232=15あまり2525
ですから、
となります。
本問の計算は簡単ですが、「文章を正しく読む」ことができないと、「?」が頭に飛びかねない問題だったでしょう。
このようなところにも、新しい「大学入学共通テスト」で「思考力」問題が出されることが反映されているように思えます。
では、もう1問です。
問題3 三角すいABCDの頂点Aに点Pがあり、点Pは1秒ごとに他の頂点に移動します。たとえば、2秒後に点Pが頂点Aにある移動の仕方は全部で3通りです。次の問いに答えなさい。
(1) 3秒後に点Pが頂点Aにある移動の仕方は全部で何通りありますか。
(2) 4秒後に点Pが頂点Aにある移動の仕方は全部で何通りありますか。
(3) 5秒後に点Pが頂点Aにある移動の仕方は全部で何通りありますか。
(4) 9秒後に点Pが頂点Aにある移動の仕方のうち、3秒後に頂点Bにあり、6秒後に頂点Aにある移動の仕方は全部で何通りありますか。
【解答例】
各頂点への行き方が何通りあるかを1秒ごとに自分で図をかいて解く問題です。
(1)
点Pが、1秒後、2秒後、3秒後に移動する仕方が何通りあるかを順にかいて調べます。
上の図より、3秒後に点Pが頂点Aにある移動の仕方は全部で6通りとわかります。
答え 6通り
(2)
(1)の図より、点Pが3秒後から4秒後に頂点Aに移動する仕方は、頂点B、C、Dからそれぞれ7通りありますから、
7通り×3=21通り
です。
答え 21通り
(3)
(1)の図より、点Pが4秒後に頂点Bに移動する仕方は、頂点Aから6通り、頂点C、Dからそれぞれ7通りありますから、
6通り+7通り×2=20通り
とわかります。
従って、点Pが5秒後に頂点Aに移動する仕方は、頂点B、C、Dからそれぞれ20通りありますから、
20通り×3=60通り
です。
答え 60通り
(4)
(1)~(3)と同じように、5秒から9秒後までの図をかいて調べてもOKですし、次のように「踏み台解法」を利用して解くこともできます。
上の表より、9秒後に点Pが頂点Aにある移動の仕方のうち、3秒後に頂点Bにあり、6秒後に頂点Aにある移動の仕方は全部で294通りとわかります。
答え 294通り
(別解)
(1)の図を利用します。
点Pが頂点Aから3秒後に頂点Bに移動する仕方は7通りです。
3秒後に点Pが頂点Bから頂点Aに6秒後に移動する仕方は、(1)で頂点Aから3秒後に頂点Bに移動する仕方と同じですから、
7通り×7通り=49通り
です。
同様に、6秒後に点Pが頂点Aから頂点Aに9秒後に移動する仕方は、(1)で頂点Aから3秒後に頂点Aに移動する仕方と同じですから、
49通り×6通り=294通り
のようにして求めることもできます。
本問は、「自分で図をかく」、「小問(1)~(3)を通して規則性に気づく」という点から「思考力」問題だといえそうです。
しかし、そのためには「時間ごとの道順解法(時系列のイチイチ解法)」が使いこなせることも必要ですから、「知識」も問われているといえるでしょう。
このように、「思考力」問題を解くためには、十分な「知識」とそれらを正確に使いこなせる「アウトプット力(答えまで過程を正確に処理する力)」が欠かせません。
ですから、志望校別の傾向対策が始まるまでの約半年がこの「知識」と「アウトプット力」を高める期間、9月以降が「思考力」問題対策の期間と考えて、6年生前半の学習に取り組んでいくことが望ましいと思います。