第473回 中学入試で出題される「数の性質」 4
「第473回 中学入試で出題される「数の性質」 4」
こんにちは。中学受験情報局算数主任の前田昌宏です。
前回まで、中学入試で出された「数字の個数」、「数の個数」、「N進法」をテーマとした「数の性質」に関する問題を見てきましたが、やはり「数の性質」というと「倍数と約数」の問題をイメージすることも多いと思います。
そこで、今回は「倍数と約数」に関わる問題をご紹介していきます。
はじめは「倍数」の基本的な問題です。
サピックスなどの大手進学塾ではこの単元を5年生の2~3月に学習し、6年生になっても同じ時期に取り扱われることが多いですから、習ったことを思い出すつもりでチャレンジしてみてもよいでしょう。
2019年度 慶應義塾普通部 (四谷大塚 80%偏差値 64)より
問題2
□△67は4桁の整数で、13で割っても17で割っても割り切れます。この整数を求めなさい。
【解答例】
13と17のどちらでも割りきることができる整数ですから、□△67は13と17の公倍数です。
13と17の最小公倍数は
13×17=221
ですから、
221×○=□△67
となる○の一の位の数は7とわかります。
221×7=1547
次に、1547に☆◎※0のような一の位の数が0である221の倍数を加えていきます。
221×10=2210
より、
1547+2210×2=5967
が□△67であることがわかります。
答え 5967
本問は「倍数」に「虫食い算」が合わさったような問題ですが、問題の難度としては基本といえるでしょう。
2問目は「約数」の問題です。
2019年度 慶應義塾中等部 (四谷大塚 80%偏差値 男子64・女子70)より
問題2-(1)
約数が6個で、90との最大公約数が15である整数は( ) です。
【解答例】
最大公約数を「すだれ算(逆割り算)」で求める方法と、素因数分解を利用した「約数の個数」の求め方を利用します。
はじめに、最大公約数を「すだれ算」で求める方法を利用して、問題の条件を整理します。
上の「すだれ算」より、Aは15=3×5の倍数、Bは6=2×3と「互いに素(公約数が1しかない)」であることがわかります。
「ある整数X=PA×QBの約数の個数は、(A+1)×(B+1)個 ただし、P、Qは異なる素数」という求め方より、
約数の個数 6個=(1+1)×(2+1)
のときですから、
A=31×52=75です。
※ A=(素数)5の場合も約数の個数は6個ですが、Aは15の倍数ですからあてはまりません。
答え 75
本問は「最大公約数の求め方」と「約数の個数」が組み合わさった問題です。
Aが15の倍数とわかりますから、15、30、45、…と順に調べていっても75を求めることはできます。
しかし、Aがもっと大きな値になる可能性もありますから、「約数の個数」を計算で求められるようになっておくとよいでしょう。
最後にもう1問、ご紹介します。
2019年度 海城中学校 (四谷大塚 80%偏差値 63)より
問題6
整数nについて、nのnを除く約数の和を[n]で表すことにします。例えば、6の6を除く約数は1、2、3なので、[6]=1+2+3=6です。また、[1]=0とします。
(1) [1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]、[10]の平均を求めなさい。
(2) [x]=1となる整数xの中で、100に最も近い整数を求めなさい。
(3) 連続する整数のうち、小さい方をx、大きい方をyとして、[x]+[y]=yとなるような整数yを考えます。例えば、xとして7、yとして8があります。このような整数yの中で、100以上150以下の整数を1つ求めなさい。
【解答例】
(1)
[1]=0
[2]=1
[3]=1
[4]=1+2=3
[5]=1
[6]=1+2+3=6
[7]=1
[8]=1+2+4=7
[9]=1+3=4
[10]=1+2+5=8
(0+1+1+3+1+6+1+7+4+8)÷10=3.2
(2)
(1)より、[素数]=1とわかりますから、100に最も近い素数を探します。
99は3の倍数ですが、101は素数ですので、100に最も近い整数xは101です。
(3)
(1)で、
[3]=1、[4]=3 → [3]+[4]=4
[7]=1、[8]=7 → [7]+[8]=8
のように、連続する2つの整数が(素数、2n)のとき、(3)の条件にあてはまることがわかります。
2n=2、4、8、16、32、64、128、256、…ですから、100以上150以下である128について調べます。
127は素数ですので、[127]=1
[128]=[27]=1+2+4+8+16+32+64=127
ですから、
[127]+[128]=128
で(3)の条件にあてはまります。
答え 128
本問は(1)、(2)が(3)の答えを導き出すための大きなヒントとなっている「誘導形式」の大問でした。
大問形式の問題で、(1)、(2)が易しい問題であるとき、それらが(3)を正解させるためのヒントとなっていることは少なくありません。
「数の性質」の問題では「調べて解く」という問題があります。
問題演習をするときは、「調べる範囲を上手く絞り込む」のに小問(1)や(2)が利用できないかということも頭において取り組むことができればいいなと思います。