第466回 中学入試で出題される「場合の数」1
「第466回 中学入試で出題される「場合の数」1」
秋も深まり、2020年度の中学入試が次第に近づいてきています。
この時期になると6年生の学習も志望校に向けた傾向別特訓が中心となるのか、過去問からの質問をよく受けます。
質問される問題の分野は、整数の性質、速さ、図形などいろいろあるのですが、今回はそれらの中から、「場合の数」の「さいころの目の出方」に関する問題を見ていこうと思います。
2019年度 海城中学校 一般入試① より
問題2
図のような正方形ABCDの頂点Aにコマを置き、大小2つのサイコロを使って決められた数だけ、反時計回りに頂点から頂点ヘコマを進めていきます。例えば、2だけ進めるときはコマは頂点Cにとまり、5だけ進めるときはコマは頂点Bにとまります。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) 大小2つのサイコロの出た目の和だけコマを進めるとき、コマが頂点Dにとまる目の出方は何通りありますか。
(2) 大小2つのサイコロの出た目の積だけコマを進めるとき、コマが頂点Aまたは頂点Cにとまる目の出方は何通りありますか。
【考え方】
(1)
大小2つのサイコロの目の和ととまる頂点の関係を調べてみます。
上の図より、コマが頂点Dにとまる目の和は3、7、11とわかりますので、それぞれの場合について目の出方を調べます。
目の和が3のとき…(大、小)=(1、2)、(2、1) → 2通り
目の和が7のとき…(大、小)=(1、6)~(6、1) → 6通り
目の和が11のとき…(大、小)=(5、6)、(6、5) → 2通り
2通り+6通り+2通り=10通り
(2)
(1)の図を活用すると、Aにとまるのは2つのサイコロの目の積が4の倍数になるとき、コマが頂点Cにとまるのは2つのサイコロの目の積が4の倍数ではない2の倍数になるときとわかります。
2つのサイコロの目の出方は「六六表」を利用して整理することができますから、積について六六表にまとめてみると次のようになります。
表より、コマが頂点Aまたは頂点Cにとまる目の出方は27通りです。
ところで、(1)でコマが頂点とまるサイコロの目を次のような表に表しておくと、(2)でも、コマが頂点Aまたは頂点Cにとまるときは「目の積は偶数」、頂点Bまたは頂点Dにとまるときは「目の積は奇数」、ということに気づきやすくなります。
※問題(1)の表です。
2つのサイコロの目の出方は、
6通り×6通り=36通り、
2つのサイコロの積が奇数になる目の出方はサイコロ大、小がともに奇数のときだけですから、
3通り×3通り=9通り
です。
ですから、コマが頂点Aまたは頂点Cにとまる目の出方は、
36通り-9通り=27通り
のように求めることもできます。
このように「全体の場合の数から答え以外の場合の数を引く」考え方を、場合の数では「余事象」といいます。
平面図形や立体図形の求積で、直接、面積や体積が求めにくいときに「全体から引く」のと同じです。
「余事象」は本問の他、次のような問題で利用することができます。
【例題】
大、中、小のサイコロがそれぞれ1個ずつあります。これらのサイコロを同時にふったとき、2個のサイコロの目が同じになるような目の出方は何通りありますか。
【解答例】
3個の目の出方には、次の3つの場合があります。
① 3個のサイコロの目が全て異なる場合
② 2個のサイコロの目が同じ場合
③ 3個のサイコロの目が同じ場合
解答例1…②を直接求める解き方
解答例2…余事象を利用する解き方
3個のサイコロの目の出方 6通り×6通り×6通り=216通り
3個のサイコロの目が全て異なる目の出方 6通り×5通り×4通り=120通り
3個のサイコロの目が全て同じになる目の出方 6通り×1通り×1通り=6通り
216通り-(120通り+6通り)=90通り
場合の数をまだ詳しく学んでいない、あるいは場合の数があまり得意ではない5年生は、順列や組み合わせの計算方法、積の法則や和の法則といった場合の数の基本がマスターできているかを確認し、できているようであれば、例題の解答例1のように、「組を作る(同じ目が出るサイコロを決める)→並べる(目の出方を決める)」といった2段階に分けて場合の数を求めていく考え方の練習をしていくといいでしょう。
場合の数がある程度学習できているというときは、例題の解答例2のような「余事象」も使えるようになると、場合の数で得点できる問題がより増えていくと思います。