第461回 合格をするために正解したい問題 6
「第461回 合格をするために正解したい問題 6」
ここまで、中学入試で正解したい問題を、「数の性質」、「比と割合の文章題」、「速さ」の3つの分野について見てきました。
今回は、「平面図形」の中から「図形の移動」に関する問題を選んでみます。
「図形の移動」の問題は正確な作図をする力が必要なため、記述式解答が導入される新しい大学入試を控えて、中学入試でも出題が増えそうな問題の1つです。
【問題】
次の問いに答えなさい。(円周率は3.14)
(1) 図のように、1辺の長さが6cmの正方形ABCDがあります。辺AB、BC、CD、DAの真ん中の点をそれぞれE、F、G、Hとします。半径1cmの円Pの中心は、AB、BC、CD、DA、EG、HFの上をすべて動きます。このとき、円Pの円周が通った部分の面積を求めなさい。
(2) 図のように、半径1cmの円Oがあります。半径5cmの円Qの中心は、円Oの内部と周上をすべて動きます。このとき、円Qの円周が通った部分の面積を求めなさい。
【解答例】
(1)
次の図のように、1cmの「マス目」を書きたしておくと作図がしやすくなります。
8cm×8cm-{(2cm×2cm-1cm×1cm×3.14)+1cm×1cm×4}=59.14cm2
(2)
「回転移動」のポイントは、「回転の中心に最も近い点と最も遠い点の動き」に着目することです。
ここで、円Qが限りなく小さく、その円Qを地球、円Oの中心を太陽と考えると、「円Qの中心が円Oの円周上を動く」=「円Q(地球)は円Oの中心(太陽)を回転の中心として動く」ということがわかりやすくなると思います。
ですから、円Oの中心から最も近い点Aと最も遠い点Bの動きに着目すればOKです。
6cm×6cm×3.14-4cm×4cm×3.14=62.8cm2
なお、円Qの中心が円Oの内部に入った場合、円Qも斜線の中にあります。
(出典:海城中学校 2019年度入試 一般入試① 問題4)
本問は、「図形の移動」のうち、(1)が「転がり移動」、(2)が「回転移動」に関する問題でした。
(1)は、これまでにいろいろな学校で出されてきた問題のうち、基本レベルの問題を組み合わせたものですから、5年生でも既習であれば正解できると思います。
一方で(2)は「図形全体ではなく、ポイントとなる点に着目する」という考え方が必要ですから、回転移動を習っていても現時点では正解は難しいかも知れません。
未習の場合は、このような問題に将来取り組むことになることを知って、今後の学習をしていきましょう。
ではもう1問です。
【問題】
図1のように、半径1cmの円をAからDまで太線に沿ってすべらないように転がしました。ただし、AB=5cm、CD=5cm、BからCの曲線は半径4cmの円周の一部です。(円周率は3.14)
(1) 円の中心が動いてできる線の長さを求めなさい。ただし、答えは小数第2位を四捨五入しなさい。
(2) 円の中心がPにきたとき、図1のように矢印を書きました。円の中心がQにきたときの矢印を図2に書き込みなさい。また、矢印と点線との角度も書き込みなさい。
【解答例】
(1)
円の転がり移動の作図のポイントは、円の中心と直線との接点を結ぶ半径が直線を垂直になるということです。
また、大円の中や外を小円が転がるときは、2つの円の中心が一直線になることも重要です。
これらのことに気をつけて、この問題の作図を行います。
5cm+2cm×3.14×90°/360°+6cm×3.14×120°/360°+2cm×3.14×60°/360°+5cm=10cm+17/6cm×3.14=18.89…cm → 18.9cm
(2)
「円がなめらかに転がるときの回転数=円の中心の移動距離÷転がる円の円周」を利用すると、
(6cm×3.14×120°/360°)÷(2cm×3.14)=1回転
することがわかります。
答え
(出典:女子学院中学校 2019年度入試 問題2)
本問も「転がり移動」の問題ですが、直線と円周の一部が組み合わさっていますので、直線と円周の一部との交点での動きの作図がポイントになります。
また、転がる円に書かれた矢印の向きは、上記のような「なめらかに転がるときの回転数の計算公式」の他に、「自転と公転」に分けて考える解き方もあります。
サピックスの5年生は夏休み明けに「図形の移動」を学習しましたが、次に平面図形を学ぶのは冬期講習と1月というカリキュラムです。
しばらく取り扱われませんので、今回ご紹介した問題などを見て、基本学習や作図の練習が不足していたなと感じるようでしたら、秋の祝日などを利用しておさらいをしておくといいと思います。