第445回 人気中学校の入試問題 4 ~香蘭女学校中等科~
「第445回 人気中学校の入試問題 4 ~香蘭女学校中等科~」
首都圏で人気のある学校の問題をご紹介しています。
4回目は香蘭女学校中等科です。
高等科生は四年生、五年生、六年生と呼ばれ、高等科の募集を行わない完全な中高一貫校で、立教大学への推薦枠が80名(1学年160名)あることなどでも人気の女子中です。
2019年度の入試からは2月2日午後に2回目の入試が新たに設定されたため、2月1日の募集定員が100名に変更された香蘭女学校中等科の2019年度の入試状況は次の通りです。
それでは、実際の問題を見ていきましょう。
2018年度 香蘭女学校中等科 入試問題より 算数
大問2 バスと自動車がA地点と18km離れたB地点を止まることなく往復します。バスがA地点を最初に出発してから30分後に自動車がA地点を出発したところ、AとBのちょうど中間の地点でバスと自動車がすれちがいました。下の図は、バスと自動車が出発してからの時間とA地点からの距離の関係を表したグラフです。つぎの問いに答えなさい。
① バスは毎分何mの速さで往復していますか。
② バスと自動車が初めてすれちがうのは、自動車がA地点を出発してから何分何秒後ですか。
③ バスと自動車が2回目にすれちがうのは、バスがA地点を最初に出発してから何分何秒後ですか。
④ バスと自動車が3回目にB地点に同時に着くのは、バスがA地点を最初に出発してから何時間何分後ですか。
【解答例】
①
グラフより、18000mを25分で進んでいることがわかりますから、
18000m÷25分=毎分720m
がバスの速さです。
②
問題文に「AとBのちょうど中間の地点でバスと自動車がすれちがいました」とあります。
バスの動きを表した上の線分図より、
□分=25分÷2=12分30秒
とわかりますから、バスと自動車が初めてすれちがうのは、バスがA地点を出発してから
25分+12分30秒=37分30秒後
です。
ですから、バスの30分後にA地点を出発した自動車は
37分30秒後-30分=7分30秒後
にバスとすれちがいます。
③
前問までに
ということがわかりましたので、自動車の速さも
9000m÷7.5分=毎分1200m
と求められます。
初めてバスと自動車がすれちがってから2回目にすれちがうまでに2台が進む距離の和は
のように、
18km×2=36km
ですから、バスと自動車が1回目に出会ってから2回目に出会うまでの時間は、
36000m÷(720m/分+1200m/分)=18.75分=18分45秒
とわかります。
バスが初めてA地点を出発してからの時間を求めるので、
37分30秒+18分45秒=56分15秒後
が答えです。
④
「〇回目に同時に出発点(または目的地)に着く時間を求める」問題は倍数の問題です。
バスはA地点からB地点までを25分で進み、自動車はA地点からB地点までを
7.5分×2=15分
で進みますから、B地点に着く時刻は次のようになります。
バス…1回目 25分後 その後50分ごとにB地点に着く
自動車…1回目 バスがA地点を出発してから30分+15分=45分後 その後30分ごとにB地点に着く
このことをもとにしてB地点に着く時間を調べると
となり、バスと自動車が同時にB地点に着く1回目は75分後とわかります。
1回目以降は50分と30分の最小公倍数である150分ごとにB地点に着きますから、3回目は
75分+150分×(3-1)=375分後=6時間15分後
です。
大問2は速さの問題に倍数の問題が加わっていますが、1問1問は「定番のレベル」といえます。
ただし、問題が「芋づる式」になっていますから前問を間違えると以下が全滅になる可能性もあります。
線分図やダイヤグラムの書き方・読み取り方を練習して身につけ、また、「答えがでた」と思っても設問を読み返して何を答えるかを確認して、高得点を目指しましょう。
では、もう1問です。
大問3 (図1)の三角形ABCは面積が98cm2の正三角形で、BD:DC=CE:EA=AF:FB=3:4です。つぎの問いに答えなさい。
① 三角形CDEの面積は何cm2ですか。
② さらに(図2)のように、AG=BG=CGとなる点Gをとります。三角形GDHは正三角形です。角アの大きさは何度ですか。
③ ②で三角形DEFと三角形GDHの面積の比を最も簡単な整数の比で表しなさい。
④ ②で三角形GDHの面積は何cm2ですか。
【解答例】
①
「隣辺比」の問題です。
CD:CB=4:7、CE:CA=3:7ですから、三角形CDEの面積:三角形ABCの面積=4×3:7×7=12:49です。
従って、三角形CDEの面積は、
三角形ABCの面積 98cm2×12/49=24cm2
です。
②
「正三角形の均等分割」を利用します。
AG=BG=CGですから、次の図のように三角形AGEと三角形BGFと三角形CGDは合同です。
上の図よりGE=GF=GDなので、三角形GDEと三角形GEFと三角形GFDは合同な二等辺三角形とわかります。
ですから、角アの大きさは
60°÷2=30°
です。
③
三角形DEFと三角形GDHを均等に分割します。
上の図より、三角形DEFと三角形GDHの面積比は
6:2=3:1
とわかります。
④
三角形ABCの面積=98cm2、また、①より三角形CDEの面積=26cm2と求められていますから、三角形DEFの面積は
98cm2-24cm2×3=26cm2です。
③で三角形DEFと三角形GDHの面積比が3:1とわかっていますので、三角形GDHの面積は
26cm2×1/3=8 2/3cm2
です。
大問3は「隣辺比」と「正三角形の均等分割」を利用して解く問題です。
①の「隣辺比」は、
のように補助線をかき加えて「等高三角形の面積比」を利用して解くこともできますし、②も「反則」ですが、「見た目で30°」と解答することもできますから、全問を正解することも可能な問題でした。
香蘭女学校中等科の入試問題は、これまで大問3題の構成で3問目が図形問題ということが多かったのですが、2019年度の第1回の算数は大問4題の構成となり、そのうちの2題が図形問題というものでした。
香蘭女学校中等科の図形問題は、平面図形は辺の比と面積比の関係、図形の移動、影の問題など、立体図形は切断や重なりなど、幅広い範囲から出題されていますし、受験生にとっては難しく感じる問題も少なくありません。
しかし、塾教材や市販教材の類題も少なくありませんから、過去問演習を始めるまでに、まずは塾教材や市販教材の問題の中にある苦手を克服することが大切だと思います。