第444回 人気中学校の入試問題 3 ~東京都市大付属中学校~
「第444回 人気中学校の入試問題 3 ~東京都市大付属中学校~」
首都圏で人気のある学校の問題をご紹介しています。
3回目は東京都市大付属中学校です。
武蔵工業大学を前身とする東京都市大学の付属中学で、近年、難関大学への進学実績を伸ばしている男子校として注目されている東京都市大付属中学校の2019年度の入試状況は次の通りです。
東京都市大付属中学校の第1回の受験では2科目受験と4科目受験の選択ができますが、合否の判定は国語と算数の2科目の合計点でなされます。
ただし、2科目の判定で合計点に達しなかった4科目型受験生については4科目で合否の判定が行われることや、「スライド合格システム(Ⅱ類希望で不合格のときのⅠ類まわし合格)」や「逆スライド合格システム(Ⅰ類希望でⅡ類合格の場合の選択が可)」、「再チャレンジ受験システム(Ⅰ類合格の権利を維持したままⅡ類再受験が可)」など、受験生にとっては幅広い選択肢が用意されています。
その中から、2科目受験も可能な第1回の入試問題を見てみましょう。
2018年度 東京都市大付属中学校 第1回入試問題 算数より
大問2 兄と弟は午前8時にちょうどA地点からB地点に向かって同じ速さで歩き始めました。弟は900m歩いたところで、速さを変えずにA地点にもどり始めました。弟がA地点にもどってきたのは午前8時30分で、その5分後に兄はB地点に着きました。あとの問いに答えなさい。ただし、兄と弟は、それぞれ一定の速さで歩くものとします。
(1) A地点からB地点までの道のりは何mですか。
(2) 弟がもどり始めた後、兄のいる地点から弟のいる地点までの道のりと、弟のいる地点からA地点までの道のりが同じになるのは午前何時何分の時ですか。
【解答例】
(1)
時間の条件が「午前8時」、「午前8時30分」、「5分後」と3つあり、距離の条件は「900m」の1つだけですから、ダイヤグラムに整理してみます。
グラフを見るとダイヤグラムの5原則の「原則② 山&谷」が見つかります。
弟は900mを15分で歩いていますから、
900m÷15分=60m/分
がその速さです。
兄も同じ速さであるいており、A地点を出発して35分でB地点に着いていますから、AB間の道のりは
60m/分×35分=2100m
です。
(2)
(1)でAB間が2100mとわかり、また「道のりが同じになる」という距離の条件も増えましたから、今度は線分図を利用してみます。
兄と弟は同じ速さで歩いていますから、
より、
③=900m → ①=300m
とわかります。
午前8時15分+300m÷60m/分=午前8時20分
大問2は、速さの条件を整理するときの原則である「距離条件が多いときは線分図、時間条件が多いときはダイヤグラム」に従うと、(1)、(2)とも正解ができる基本レベルの問題でした。
では、もう1問です。
大問3 下の図のような三角すいO-ABCにおいて、辺OAのちょうど真ん中の点をD、辺OBを2:3に分ける点をE、辺BCを3:1に分ける点をFとします。さらに直線EFをFの方にのばした直線とOCをCの方にのばした直線が交わった点をGとし、直線DGと辺ACが交わった点をHとします。あとの問いに答えなさい。
(1) OC:CGを、最も簡単な整数の比で表しなさい。
(2) AH:HCを、最も簡単な整数の比で表しなさい。
(3) (立体ODEGの体積):(立体OHCFの体積)を、最も簡単な整数の比で表しなさい。
【解答例】
(1)
問題文にかかれている頂点と線に着目します。
上の図の水色の部分を見やすくかくと次のようになります。
OC:CGを求めるので、OC、CGを含む相似な三角形を作ります。
上の図にある砂時計型相似の三角形IEOと三角形FEBでIO=②ですから、ピラミッド型相似の三角形IGOと三角形FGCのOG:CGは2:1です。
従って、OC:CG=1:1です。
(2)
(1)と同じように問題文にかかれている頂点と線に着目します。
AH:HCを求めるために相似な三角形を作ると、
となるので、AH:HC=1:0.5=2:1です。
(3)
立体ODEG、立体OHCFの体積を直接比べることが難しいので、三角すいO-ABCと求める立体ODEG、立体OHCFの体積を比べます。
上の図より、立体ODEGと三角すいO-ABCは、
底面の比 1×2:2×5=1:5
高さの比 2:1
なので、体積の比は
1×2:5×1=2:5
です。
また、立体OHCFと三角すいO-ABCは、
底面の比 1×1:3×4=1:12
高さの比 1:1
なので、体積の比は
1×1:12×1=1:12
です。
ですから、三角すいO-ABC、立体ODEG、立体OHCFの体積の比は、
1:2/5:1/12=60:24
:5
とわかります。
大問3は、「辺を延長しても同じ面上にある」ことがポイントとなる問題で、家庭学習における「作図学習の質」が問われています。
そのあとの「相似完成」や立体図形の体積比の計算も塾教材の応用問題レベルで、差がつく問題だったと思われます。
東京都市大付属中学校の2018年度の第1回の入試は、この後の大問4が「馬術競技の得点」を題材とした文章題でしたが、2019年度の第1回の入試でも「角すいの体積比」、「ラグビーの得点の種類」のようによく似た出題がありますので、過去問演習が大切です。
ですから、東京都市大付属中学校のⅡ類を志望している場合、過去問の出題傾向を確認し、苦手としている単元があれば夏休みまでに塾教材の中級問題と応用問題のおさらいを家庭学習ですませて、志望校別対策授業の基礎ともなる夏期講習を有意義にすることがでできればいいなと思います。