第442回 人気中学校の入試問題 1 ~広尾学園中学校~
「第442回 人気中学校の入試問題 1 ~広尾学園中学校~」
2019年度の中学入試は、首都圏、関西エリアの両方で受験者数が増加し、私立中学に対する期待が感じられるものとなりました。
特に、首都圏で2月1日午前に実施される受験者数は2015年度から4年連続で増え続けています。
そこで今回からは、首都圏で人気のある学校の入試問題をご紹介していこうと思います。
その1回目は広尾学園中学校です。
広尾学園中学校の2019年度の入試状況は次の通りです。
上記のように、受験者平均と合格者平均の点数の差を科目別に見てみると、算数で差がつきやすい入試になっていることがわかります。
では、実際の入試問題を見てみましょう。
2018年度 広尾学園中学校 第2回入試問題 算数より
大問1 次の□にあてはまる数を答えなさい。
(1)
(2)
(3)
(4) 1+3+9+27+81+243+729+2187+6561=□
【解答例】
(1)
分配法則を使うと計算がしやすくなる問題です。
小数と分数の入り混じった計算問題を解くときは、かけ算やわり算は仮分数を利用し、たし算やひき算は帯分数を利用すると計算の手間を省くことができます。
(2)
部分分数分解の問題です。
(3)
このまま計算してもOKですし、面積図を利用して計算することもできます。
(4)
左から順に「3倍」された数が並ぶ「等比数列」の計算です。
1+3+9+27+81+243+729+2187+6561=①
とすると、
③=3+9+27+81+243+729+2187+6561+19683
となりますから、
③-①=19683-1=19682 → □=①=19682÷2=9841
大問1は、工夫をして解くと時間を短縮することや計算の精度を上げることができる計算問題でした。
一般に、大手進学塾のカリキュラムでは計算問題の工夫にあまり時間を割くことができませんので、家庭学習などで計算の工夫の仕方を勉強しておくとこのような問題を解くときに有効でしょう。
それでは、続いて大問6です。
大問6 規則的に数を並べたものを数列といいます。「となりどうしの数の差が一定」を規則とした数列を等差数列といい、その差のことを公差といいます。例えば、奇数の数列は1、3、5、7、…であり、これは公差が2の数列です。さて、等差数列の1番目からn番目の数まので和について、次のように求められることが知られています。
[等差数列の1番目からn番目までの数の和=(1番目の数+n番目の数)×n÷2]
これについて、次の問いに答えなさい。
(1) 1から200までのすべての整数の和
1+2+3+4+…+199+200
を求めなさい。
(2) 等差数列の1番目からn番目までの数の和がどうして上のような計算で求められるのかを説明しなさい。
【解答例】
(1)
(1+200)×200÷2=20100
(2)
1番目の数を○、公差を□とすると、1番目からn番目までの数は次のような線分図に表すことができます。
これと同じものを反対側につけたすと、
のようになり、1番目の数とn番目の数の和に等しい長さの線分がn本できます。
これらの線分の和(1番目の数+n番目の数)×nは、等差数列の1番目からn番目までの数の和の2倍にあたりますから、等差数列の1番目からn番目までの数の和は(1番目の数+n番目の数)×n÷2という式で求めることができます。
大問6の(2)は、記述解答の問題でした。
6年生にとって公式を上手く説明することはとても難しいと思いますが、公式を学んだときに「なぜそうなるのか」も合わせて学びますから、それを思い出しながら、言葉や式、図や表などを使って答えを作ればよいと思います。
今回は、大問1の計算問題、大問6の数の性質の問題をご紹介しましたが、2018年度の広尾学園中学校の第2回の入試問題では、この他に、大問2が1行問題、大問3が旅人算、大問4が場合の数、大問5が立体図形の切断に関する問題が出されました。
広尾学園中学校で出される問題は定番問題やそれをもとにした応用問題で、出題範囲も幅広いものとなっています。
そのため、算数が得意な受験生にとっては得点を伸ばしやすく、その結果として合格者平均も高くなりやすい試験です。
ですから広尾学園中学校を志望校の1校としている場合は、デイリーサピックスやデイリーサポートなど大手進学塾で使用されている基幹講座の教材で取り扱われる問題が正解できるようになっておくことが望ましいと言えるでしょう。