第431回 2019年度 中学入試 6
「第431回 2019年度 中学入試 6」
前々回と前回で、2019年度に行われた首都圏の中学入試の中から、渋谷教育学園幕張中学校、開成中学校の入試問題をご紹介してきました。
今回は、女子御三家の桜蔭中学校の問題です。
桜蔭中学校の2019年度の入試状況は、出願者数が529名、受験者数が510名、合格者数が281名、補欠者数が32名で、2018年度の出願者数533名、受験者数521名、合格者数280名、補欠者数30名とほぼ同数でした。
また、算数の入試問題も昨年と同じ大問4題の構成で、計算力、知識、丁寧な処理を求める問題など、桜蔭中学校らしい出題という印象を受けました。
しかし、昨年と比べると1枚目に「文字がぎっしり」詰まっていて余白がなく、見た目に難しいと感じたかも知れません。
それでは、2019年度の桜蔭中学校の入試問題をいくつかご紹介していきます。
はじめは「日暦算」です。
習っていれば、新6年生でも日暦算の解法の習熟度を確認ができます。
2019年度 桜蔭中学校 入試問題 算数より
大問Ⅰ-(2)
平成31年2月1日は金曜日です。元号が平成になってから、うるう年は( ア )回あり、3回目のうるう年の2月29日は( イ )曜日でした。ただし、次にうるう年になるのは2020年で、平成になってからうるう年は4年ごとにありました。
【解答例】
平年は52週と1日ですから1年後の曜日が1つ後ろにずれ、うるう年は52週と2日ですから1年後の曜日が2つ後ろにずれることが利用できます。
「ぐるぐるカレンダー」をかくと解きやすいでしょう。
平成30年は西暦2018年で平年でしたから、平成31年2月1日は金曜日であれば、平成30年2月1日は木曜日です。
この作業を、平成元年=西暦1989年まで続けます。
上の図から、うるう年の回数は7回、3回目のうるう年は2000年で、2000年2月1日が火曜日ですから、28日後の2月29日も火曜日とわかります。
答え ア 7、イ 火
※アは、
(2020年-1988年)÷4年=8回…2020年を含めて平成にうるう年は8回ある
8回-1回=7回
のように計算で求めることもできます。
今年は平成最後の中学入試ということもあって、「日暦算」が出題されたのでしょう。
2020年には東京オリンピックも開催されますから、これをテーマにした問題が来年度の中学入試にだされることも考えられますので、日暦算の復習はしておくとよいかもしれません。
ではもう1問、「時計算」の問題をご紹介します。
大問Ⅳ
右の図のようなかわった時計があります。この時計には、7から17までの数字と目盛りが書いてあります。7と8、8と9、9と10、…、16と17の目盛りの間隔は、すべて等しいとします。午前7時を7時0分、午後1時を13時0分のように表すことにします。8時0分のとき、右の図のように時計の長針は7、短針は8を指します。長針と短針は右回りになめらかに動きます。長針は次の①②の規則に従って動きます。
①長針は7時0分から17時0分までは60分で1周します。このとき、長針と短針は一定の速さで動きます。
②長針は17時0分から翌日の7時0分までは168分で1周します。このとき、長針と短針は一定の速さで動きます。
長針が1周する間に短針が回転する角度は、①のときも②のときも同じで、短針は24時間で1周します。ただし、普通の時計と同じように1時間は60分です。
(1) 次の( )にあてはまる数を答えなさい。
長針が1周する間に短針が回転する角度は( ア )°です。
時刻が12時45分のとき長針と短針がつくる角の大きさは( イ )°です。ただし、長針と短針がつくる角の大きさは0°以上180°以下とします。
(2) 10時0分から11時0分までの1時間で、長針と短針がつくる角の大きさが60°になる時刻は何時何分ですか。すべて求めなさい。
(3) 17時0分から翌日の7時0分の間で、長針と短針が重なる時刻は何時何分ですか。すべて求めなさい。
【解答例】
(1)
長針は7時0分から17時0分までは60分で1周しますから、7時0分から17時0分までの10時間=600分で、
600分÷60分=10周
します。
また、17時0分から翌日の7時0分までは168分で1周しますから、17時0分から翌日の7時0分までの14時間=840分で、
840分÷168分=5周
します。
従って、長針は1日に
10周+5周=15周
します。
短針は1日に360°回転しますから、長針が1周する間に
360°÷15周=24°/周 … アの答え
回転します。
「12時45分」は7時0分から17時0分までの間にある時刻ですから、長針は60分で1周しています。
12時45分-7時0分=5時間45分=5 3/4時間 → 長針は7時0分から5 3/4周している
短針は長針が1周する間に24°回転しますから、長針が5 3/4周している間に
24°/周×5 3/4周=138°回転
しますので、「12時45分」に2針は次のような位置にあります。
270°-138°=132°…イの答え
答え ア 24、イ 132
(2)
「10時0分から11時0分」は7時0分から17時0分までの間にある時刻ですから、
長針は
360°÷60分=6°/分、
短針は
24°÷60分=0.4°/分
の速さで回転しています。
短針は7時0分から10時0分までに、
0.4°/分×(60分×3時間)=72°回転
しますから、10時0分に2針は次のような位置にあります。
ですから、2針がつくる角の大きさが60°になる1回目は
(72°-60°)÷(6°/分-0.4°/分)=15/7分=2 1/7分、
2回目は
(72°+60°)÷(6°/分-0.4°/分)=165/7分=23 4/7分
です。
答え 10時2 1/7分、10時23 4/7分
(3)
360°÷168分=15°/7…長針が1分間に回転する角の大きさ
24°÷168分=15°/7…短針が1分間に回転する角の大きさ
0.4°×(60分×10時間)=240°…短針が7時0分から17時0分までに回転した角の大きさ
240°÷(15°/7-1°/7)/分=120分…17時0分から2針が初めて重なるまでの時間
360°÷(15°/7-1°/7)/分=180分…2針が1回目に重なったあとは180分ごとに重なる
答え 19時0分、22時0分、1時0分、4時0分、7時0分
「変則時計」の問題は開成中学校など難関中がこれまでにも出題していますから、塾の教材なども含めて演習する機会は何度かあると思います。
1分間に回転する角の大きさ(角速度)を利用することや□時00分(正時)の絵を書いて解くという時計算の基本に加え、問題ごとに決められた「変則」ルールを正しく把握することが、「変則時計」の問題を解くときには大切になってきます。
このように難しい問題やオリジナリティの高い問題が解けるようになるため、基本の「解法のパターン」を身につけることができたら、そのような解き方ができる理由について自分なりの理解を深める勉強ができるといいですね。