第421回 冬期講習の学習 4
「第421回 冬期講習の学習 4」
5年生が冬期講習でどのようなことを復習し、どんな新しいことを学ぶのかを、首都圏の大手進学塾であるサピックスの冬期講習教材を利用しながら見てきています。
前回の「数の性質」は、それまでの「割合に関する問題」、「平面図形」が復習とその発展学習であったのと異なり、新しく学ぶ内容が半分近くを占めていました。
今回ご紹介する冬期講習 第4回のテーマは「移動と回転」です。
このテーマについては、春期講習と夏期講習で「三角形や円・おうぎ形の転がり移動」について学習していますが、冬期講習ではどのようなことを学習するのでしょうか。
さっそく、サピックスの「ウィンターサポート」(過年度版)から問題を見ていこうと思います。
(A問題より)
右図は、三角形ABCを点Cを中心に120度回転したものです。このとき、辺ABが動いてできる部分の面積を求めなさい。円周率は3.14とします。
【解答例】
三角形の回転移動に関する問題です。
求める部分が問題図に与えられています。
斜線部分は「面積公式のない図形」ですので、「まわりから引く」という解き方が原則です。
上の図(「図形式」と呼びます)のように、「まわり」は三角形とおうぎ形、「問題図の白い部分(引く部分)」も三角形とおうぎ形といった、「面積公式のある図形」だけで表すことがこの解き方のポイントです。
この図形式で、三角形ABCと三角形A’B’Cは合同なので「帳消し」となりますから、求める部分の面積は、2つのおうぎ形の面積の差だとわかります。
21cm×21cm×3.14×120°/360°-15cm×15cm×3.14×120°/360°=(21cm×21cm-15cm×15cm)×3.14×120°/360°=226.08cm2
(別解)
下の図のように、弧AA’を延長すると「等積移動」を利用して答えを求めることができます。
この図を用いても、求める部分が2つのおうぎ形の面積の差だとわかります。
冬期講習第4回のA問題は、「回転移動」という、5年生にとっては新しく学ぶ内容でした。
では、B問題はどうでしょうか。
(B問題より)
AB=24cm、BC=10cm、AC=26cmの長方形ABCDを直線XY上をすべらないようにして、頂点Aが(A)にくるまで転がします。
(1) 頂点Aが通ったあとを図にかきなさい。
(2) 頂点Aの動いた長さを求めなさい。円周率は3.14とします。
【解答例】
四角形の転がり移動問題です。
三角形の転がり移動は春期講習で学びましたが、この冬期講習では四角形について学びます。
回転の中心が移り変わっていくことに注意しながら作図をすると、下の図のようになります。
4つ目の図の赤色の太線が(1)の答えです。
(2)
上の図より、
48cm×3.14×90°/360°+52cm×3.14×90°/360°+20cm×3.14×90°/360°=(48cm+52cm+20cm) ×3.14×90°/360°=94.2cm
B問題では、この長方形の転がり移動以外に、三角形の転がり移動の問題も復習として取り扱われます。
また、C、D問題では、夏期講習で学んだ円の転がり移動の復習とその発展学習をします。
そして、最後のE問題では、新しい学習内容である「平面図形の平行移動」を学びます。
(E問題より)
直角三角形の紙Aと長方形の紙Bとが、右図のように一直線上に並べてあります。いま、直角三角形の紙Aだけを矢印の向きに毎秒2cmの速さで、直線にそって動かします。
(1) はじめから8秒後のとき、重なっている図形は何角形ですか。
(2) 重なった部分がちょうど長方形の50%になるのは、はじめから何秒後と何秒後ですか。
(3) 紙Aだけの部分の面積(紙Bに重なっていない部分の面積)が最も小さくなるのは、はじめから何秒後ですか。また、そのときの面積は何cm2ですか。
【解答例】
(1)
紙Aは8秒後までに、はじめの位置から 2cm/秒×8秒=16cm 右に動きます。
この作図がうまくできない場合は、三角形全体を動かすのではなく、三角形の頂点だけを右に16cm動かし、そのあとで頂点を結ぶという順で作図すると、正確な図が描きやすくなります。
上の図から、答えの 五角形 が求められます。
(2)
「長方形の面積は対角線の交点を通る直線で2等分される」ことを利用します。
この問題では、三角形Aと長方形を対角線で切ってできる三角形がどちらも底辺:高さ=2:1の相似形ですから、次のような図になります。
上の図より、1回目に重なった部分がちょうど長方形の50%になるのは、
(8cm+6cm)÷2cm/秒=7秒後、
2回目は
(20cm+3cm)÷2cm/秒=11.5秒後
とわかります。
(3)
「紙Aだけの部分の面積が最も小さくなる」ということは、紙Bとの重なりが最大になっているということです。
上の図から、
20cm÷2cm/秒=10秒後
と、
12cm×24cm÷2-12cm×6cm=72cm2
が求められます。
今回のように、E問題で学ぶ「平面図形の平行移動」の作図では相似を利用する問題もありますし、冬期講習の第2回でも「相似」は取り扱われますので、12月に学ぶ「相似」の学習をできるだけ完璧にしておけるといいですね。