第411回 「速さ」の勉強方法 5
「第411回 『速さ』の勉強方法 5」
5年生が「速さ」についてどのようなことを学ぶのか、サピックスの平常教材「Daily Support」(過年度版)を用いてご紹介しています。
今回は前回の続編で、「通過算」の5年生の学習をサピックスの「Daily Support」C問題以降からみていきます。
前回ご紹介したA、B問題では、「幅なし通過」や「幅あり通過」などの「通過算の基本」と「比」を利用した応用問題を学ぶことがわかりましたが、C問題以降はどのようなことを学ぶのでしょうか。
さっそく、問題を見ましょう。
(C問題より)
長さ120m、秒速30mのA列車と、長さ150mのB列車がすれちがうのに5秒かかりました。B列車の秒速は何mですか。
【解答例】
問題が変わっても、通過算の大原則が「問題の条件を絵に表して整理する」ことに変わりはありません。
また通過算は「1点の動きに着目する」ことも絵をかくときのポイントでした。
ですから、この問題の場合は次のような絵になります。
(解き方1)
→を書いたことで絵が線分図となりましたから、線分図の原則「→に距離または距離比を書く」に従うと、次のような考え方になります。
上の図より、B列車が5秒間に
( 120m+150m )-30m/秒×5秒=120m
動いたことがわかりますので、
120m÷5秒=24m/秒
がB列車の速さだとわかります。
ところで、この問題の絵をよく見ると、「最後尾の出会い」と見ることもできます。
(解き方2)
( 120m+150m )÷5秒=54m/秒
が2つの列車の速さの和ですから、
54m/秒-30m/秒=24m/秒
のようにして求めることもできます。
また、時計算で「動きが遅い針(短針など)を止めた絵」をかいて解くように、通過算でも動きが遅い方の列車を止めた絵をかいて解くこともできます。
(解き方3)
この問題ではどちらの列車が遅いのかわかりませんから、仮にB列車を止めた絵をかいてみます。
上の図から、(解き方2)と同じ式を作って解くことができます。
( 120m+150m )÷5秒-30m/秒=24m/秒
上記のように「2つの列車を動かす絵」、「遅い方の列車を止めた絵」の2タイプの絵のかき方がマスターできると、問題ごとに最も適した絵をかいて解くことができるようになり、次のような入試問題も正解できるようになります。
【中学入試問題より】
東西にのびる線路があります。あるときA君が線路の近くに立っていると、西から特急、東から急行が近づいてきてA君のちょうど目の前ですれちがいはじめました。すれちがい始めてから10秒後に線路の向こう側が見えました。特急と急行の列車の長さがそれぞれ200m、160mで、速さが3:2であることがわかっているものとして、次の問いに答えなさい。
(1) 特急と急行の速さはそれぞれ秒速何mですか。
(2) A君の真東にいたB君も同じ特急と急行を見ていました。B君の目の前を急行が通過し始めてから、特急が通過し終わるまでの16 2/3秒間はずっと線路の向こう側が見えないままでした。A君とB君の距離を求めなさい。
(2007年 甲陽学院中 第1日 大問5)
【解答例】
(1)
特急と急行がA君の前を通過するのにかかる時間の比は、
200m÷3:160m÷2=5:6
なので、線路の向こう側が見えた10秒後は、急行が通過し終えたときのことです。
160m÷10秒=16m/秒 … 急行の速さ
16m/秒×3/2=24m/秒 … 特急の速さ
(2)
上の図より、(400m-200m )×2/5=80m
2019年度用の日能研R4偏差値が65である甲陽学院中の入試問題ですから決して易しくないのですが、通過算を解くときの基本通り、「絵をたてに並べてかく」「1点の動きに着目する」ができると、上のようにして解くことができます。
さて、前回、今回と「通過算」の勉強方法について見てきました。
通過算を勉強では、
「絵をたてに並べてかく」
「1点の動きに着目すると線分図と同じ見方ができる」
という基本に加えて、
「2つの列車を動かす絵」
「遅い方の列車を止めた絵」
の2タイプの絵のかき方をマスターできれば、入試問題でも対応できることがわかりました。
次回は「時計算」について考えてみようと思います。