第409回 「速さ」の勉強方法 3
「第409回 『速さ』の勉強方法 3」
前回までは、5年生が学ぶ「旅人算」について、サピックスの平常教材「Daily Support」(過年度版)を例にして見ました。
一般に、大手進学塾のカリキュラムでは、「旅人算」の次は「流水算」や「通過算」となっていますので、今回は「流水算」について、どのような学習になるのかを見ていこうと思います。
参考にする教材は、前回と同様にサピックスの平常教材「Daily Support」(過年度版)です。
(A問題より)
ある船が45km上るのに9時間かかり、同じところを下るのに5時間かかりました。この川の流れの速さ、船をこぐ速さはそれぞれ毎時何kmですか。
【解答例】
流水算も旅人算と同じように、線分図やダイヤグラムに問題の条件を整理することができます。
上の図から、上りの速さが 45km÷9時間=5km/時、下りの速さが 45km÷5時間=9km/時 とわかります。
上りと下りの速さがわかると、「く(下り)・せ(静水時)・の(上り)・り(流速)」や「上・下・静・流」という整理方法や次のような線分図を利用して、流速や静水時の船の速さを求めることができます。
図より、流速は ( 9km/時-5km/時 )÷2=2km/時、静水時の船の速さは 5km/時+2km/時=7km/時 とわかります。
このように、サピックスの「Daily Support」の場合、A問題では「流水算の基本公式」を学びます。
では、B問題以降ではどのようなことを学ぶのでしょうか。
(C問題より)
A、B2人の水夫がいます。静水をこぐ速さはAが毎時8km、Bが毎時4kmです。いま、同時にAは川下からこぎ上り、Bはこれより48km上流からこぎ下ります。途中で出会ったあと、3.5時間たってAはBの出発点に到着することができました。この川の流速は毎時何kmですか。
【解答例】
A問題のときと同じように、問題の条件を整理してみます。
どちらをみても、Aが上る速さやBが下る速さがわかっていないために、先に進むことができません。
実は、ここに大切な学習のポイントが1つあるのです。
☆学習のポイント☆
「流速自爆」…上りの速さ+下りの速さ=静水時の速さの和
このC問題の場合、AとBは同時に向かいあって出発して出会ったのですから、AとBが出会うまでの時間は、48km÷(Aが上る速さ+Bが下る速さ) で求められます。
ところで、A問題の流水算の基本で見たように、
Aが上る速さ=Aの静水時の速さ-流速、
Bが下る速さ=Bの静水時の速さ+流速
ですから、
Aが上る速さ+Bが下る速さ
=Aの静水時の速さ-流速+Bの静水時の速さ+流速
=Aの静水時の速さ+Bの静水時の速さ
です。
したがって、AとBが出会うまでの時間=48km÷( 8km/時+4km/時 )=4時間とわかります。
つまり、
となりますので、Aが上る速さが 48km÷( 4時間+3.5時間 )=6.4km/時 と求められます。
ですから、
より、
流速=8km/時-6.4km/時=1.6km/時 が答えです。
このC問題で学ぶ「流速自爆」は、流水算独特の学習ポイントです。
最後に見るのは、D、E問題です。
(D問題より)
ある船が川を36km下ったところ、6時間かかりました。その後、出水のため流速が下るときの2倍になったため、同じところを上るのに、下ったときの2倍の時間がかかりました。この船の静水時の速さは毎時何kmですか。
【解答例】
問題の条件を整理します。
線分図でも構いませんが、距離の条件が「36km」の1つに対し、時間の条件が「6時間」、「2倍の時間」のように多いことから、ダイヤグラムを使ってみます。
上のグラフより、下りの速さは 36km÷6時間=6km/時、上りの速さは 36km÷12時間=3km/時 とわかります。
このことを「流水算の速さの線分図」に整理します。
上の図より、下るときの流速が ( 6km/時-3km/時 )÷( 2+1 )=1km/時 とわかりますので、静水時の速さは 6km/時-1km/時=5km/時 と求められます。
今回は「流水算」の学習について見ましたが、参考教材にしたサピックスの「Daily Support」からわかる、「流水算の勉強」は、
①問題の条件を線分図やダイヤグラムに整理する
②速さについては「流水算の速さの線分図」などに整理する
③「流速自爆」
の3つを身につけることだとわかりました。
次回は「通過算」について、その勉強方法を考えていこうと思います。