第407回 「速さ」の勉強方法
「第407回 『速さ』の勉強方法」
今日から9月です。
これから志望校別の学習が本格化する6年生はもちろんのこと、その1年前となる5年生にとっても、これからの勉強は志望校の合格に向けて非常に重要になってきます。
9月から12月についてサピックスの5年生のカリキュラムを見てみると、「旅人算」「流水算」「時計算」「通過算」と速さの学習が続き、「仕事算」「倍数算」「相当算」など比と割合を利用する文章題などを経て、平面図形の学習が予定されています。
これらの単元は、入試難度に関係なく、どの中学の入試問題にも出されるとても大切は単元です。
そこで今回は、サピックスの教材を参考にして、5年生が速さについてどのような学習をするのかを見ていこうと思います。
過年度の「Daily Support」の「旅人算」の回を見ると、A問題では「『速さの3公式』と旅人算」という旅人算の基本について学んでいます。
(旅人算の基本の問題例)
太郎と次郎の家は、道にそって2.7kmはなれています。いま、次郎が8時に家を出て太郞の家へ向かいました。太郞は8時3分に家を出て次郎の家へ向かいました。2人は何時何分に出会いますか。ただし、太郞の分速は80m、次郎の分速は60mです。
【解答例】
問題の条件を線分図に表しますが、ここで大切な学習のポイントが2つあります。
☆学習のポイント☆
① 線分図は一気に書き上げない
② →に距離を書き込む
これらのポイントにしたがって線分図をかいてみましょう。
次に「旅人算の基本」である「2人が1分間に何mずつ近づくか」を「同じ時刻から」考えます。
すると上の図から、
① 8時3分に2人は2520m離れている
② 2人は1分間に140mずつ近づく
ことに着目できますから、
③ 8時3分から 2520m÷140m/分=18分 で2人が出会う
とわかります。
8時3分+18分=8時21分
速さの1回目の、しかもA問題からこのように重要な学習ポイントを学ぶのですから、5年生もなかなか大変です。
ところが、大変なのはこれだけではないのです。
同じA問題には次のような問題もあります。
(旅人算と仮定(または比)を利用した問題の例)
ある池を1周するのに、Aは15分、Bは10分かかります。この池のまわりを、2人が同時に同じ所から出発して、反対方向に進むと何分後に出会いますか。
【解答例】
速さの公式は「速さ×時間=距離(道のり)」ですが、この問題では1周にかかる時間しかわかっていませんので、この公式を使うことが出来ません。
このようなときの学習のポイントは次のとおりです。
☆学習のポイント☆
速さの公式が使えないときは、仮定または比を利用する
「Aの速さ×15分=Bの速さ×10分=池1周」ですから、池1周の長さを15と10の最小公倍数=30mと仮定してみましょう。
すると、速さの公式から、Aの速さは2m/分、Bの速さは3m/分 と計算できます。
この2人が「同時に同じ所から出発して、反対方向に進む」と次の図のようになります。
前問と同様に「旅人算の基本」とである「2人が1分間に何mずつ近づくか」を「同じ時刻から」考えると、
① 同時に出発するまでに2人は30m離れている
② 2人は1分間に5mずつ近づく
ことがわかりますから、
出発してから 30m÷5m/分=6分後 に2人が出会うことが求められます。
【比を利用した別解】
1周にかかる時間の比が、A:B=15分:10分=3:2 なので、Aの速さ:Bの速さ=2:3 です。
2人が同時に同じ所から出発して、反対方向に進んで出会うまでの時間はAもBも同じですから、進む距離の比も2:3です。
上の図から、Aは1周の2/5進むとBと出会いますので、15分×2/5=6分後 が答えです。
いかがでしょうか。A問題だというのに、これだけ密度の濃い学習が必要となるのが、5年生の秋に学ぶ「速さ」です。
もちろんこれらの2問は「計算式だけで解く」こともできます。
しかし、「計算式だけで解ける」問題であるからこそ余力も生まれますので、その余力を使って今回ご紹介したような学習のポイントまで学ぶことも可能です。
計算公式だけを学ぶだけで終わらせずに、線分図の書き方や比を使うための条件など次のレベルの問題を解くことにつながることまで学習できると、速さも得意な単元にできるのではないかと思います。