第399回 夏期講習で身につけておきたいこと 1
「第399回 夏期講習で身につけておきたいこと 1」
いよいよ7月に入り、夏期講習も目前となりました。
さて、夏期講習といえば1学期に学んだ内容の復習というイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
首都圏の大手進学塾のHPには、夏期講習について次のような案内が書かれています。(以下は各塾HPよりの抜粋)
サピックス
5年生
復習と同時に応用力を身につけます。
6年生
今までの総復習を行うとともに、苦手な単元を克服することを目的にします。
2学期以降の志望校に向けた実戦的な学習に備えた内容です。
早稲田アカデミー
5年生
学習の定着度のムラをなくし、苦手単元を克服できる。
難関中学合格に向けて、思考力・応用力を養成できる。
6年生
秋以降の本格的な志望校対策に向けて、基礎力を完成させ弱点を克服できる。
難関中学合格に向けて、思考力・応用力にさらに磨きが掛けられる。
四谷大塚
5年生
1学期の復習に加えて、入試で最重要事項の「比」の先取を行います。
6年生
基本事項の最終確認と完全復習に加えて、最新の入試問題を織り交ぜながら領域別に総復習を行います。
日能研
5年生
自分の考え方や視点、問題に対する向き合い方、知識のつなげ方等を見つめ直し、自分自身の学び方を改めて意識します。
6年生
自分自身の中にある知識のネットワークに見直しをかけ、再構築することをより加速させていきます。
これらの案内からは、5年生はおおむねどの進学塾も1学期の復習と応用力の育成、6年生は9月以降から本格化する志望校別の学習にむけ、既習の知識や解法の完全定着が目的であることが読み取れます。
そこで今回は、5年生の夏期講習について考えてみたいと思います。
5年生の夏期講習は1学期の復習と応用力の育成ということになっています。
大手進学塾のカリキュラムは「スパイラル(らせん状)方式」と呼ばれるものですから、1学期に習ったことと全く同じ内容やレベルの問題に加えて、応用力をつけるための問題が取り扱われるということです。
例えば、サピックスの5年生の夏期講習と通常授業のカリキュラムを比べてみると、復習と応用力の関係が次のようになっていることがわかります。
夏期講習 第1回 約数 … 通常授業 第3回(学習時期2-3月)
夏期講習 第2回 倍数 … 通常授業 第4回(学習時期2-3月)
夏期講習 第3回 正比例・反比例 … 初出
夏期講習 第4回 比と割合(1) … 初出
夏期講習 第5回 比と割合(2) … 通常授業 第16・17回(学習時期4-7月)
夏期講習 第6回 点の移動 … 通常授業 第11・12回(学習時期4-7月)
夏期講習 第7回 場合の数 … 初出
夏期講習 第8回 円と多角形 … 通常授業 第2回(学習時期2-3月)+春期講習 第1回
夏期講習 第9回 線対称・点対称 … 初出
夏期講習 第10回 平均算 … 初出
夏期講習 第11回 比と割合(3) … 通常授業 第18・19回(学習時期4-7月)
夏期講習 第12回 立体図形 … 通常授業 第13回(学習時期4-7月)+春期講習 第3回
夏期講習 第13回 水量とグラフ … 通常授業 第13・14回(学習時期4-7月)
夏期講習 第14回 規則性 … 春期講習 第2回
サピックスの夏期講習は1学期の復習に加え、上記のように5年生になってから初めて習う単元も、「正比例・反比例」、「比と割合(1) ※比とその計算を学びます」、「場合の数」、「線対称・点対称」、「平均算」の5つがありますし、「約数」や「倍数」、「円と多角形」のように春期講習やそれ以前に習った単元も含まれています。
これらの初めて学ぶ内容に加えて、スパイラル方式によってレベルのより高い問題や新しい内容が夏期講習では登場します。
(レベルが高くなる例)
通常授業の問題
右図で、アは1から100までの整数の集合、円イは3の倍数の集合、円ウは7の倍数の集合を表しています。
(1)円イの中に入る数は、何個ありますか。
(2)エの部分に入る数は、何個ありますか。
夏期講習の問題
1からある整数xまでに、4の倍数であるが6の倍数でない整数が17個、4と6の公倍数が8個あります。
(1)ある整数xとして考えられるものをすべてあげると、( )です。
(2)さらに4でも6でも割り切れない整数が69個あるとき、ある整数は( )です。
※いずれも過年度のテキストより
このように、大手進学塾の5年生の夏期講習は、単なる1学期の復習だけではなく、学んだことをベースとしたより高いレベルの問題や、これまでに取り扱わなかった単元が含まれています。
その上、次の週までに宿題を仕上げればよい通常授業と異なり、夏期講習は5~6日間も連続する場合がありますから、宿題や学んだ内容の復習をその日のうちにしなければいけないこともおこってきます。
ですから、既習範囲の弱点は夏期講習が始まるまでに克服しておき、スパイラル方式によってでてきた高いレベルの問題や新しい内容を身につけるための時間を少しでも長く確保することが望ましいといえます。
夏期講習が始まるまで、まだ2週間ほどあります。
これまで受けてきた組分けテストやマンスリー確認テストなどを利用して自分の弱点を明確にし、夏期講習のカリキュラムと照らし合わせて、夏期講習が始まるまでに何の克服に取り組むかを決めた家庭学習ができるといいですね。