第393回 2018年度中学入試の場合の数 3
「第393回 2018年度中学入試の場合の数 3」
2018年度の中学入試で出された「場合の数」の問題について見てきています。
前回は「道順問題」の中から、よく出される「最短経路」をテーマにした問題をご紹介しました。
そこで今回は「遠回り問題」について考えてみようと思います。
「最短経路」の問題は「1・1解法」や「→と↑の組み合わせ」計算を利用しますが、「遠回り問題」はどうでしょうか。
出題校は神奈川県男子御三家の栄光学園中学校です。
ちなみに2018年度の東京大学合格者数は神奈川県の場合、合格者数のトップ3が、栄光学園中学校75名、聖光学院中学校72名、浅野中学校42名の順で、県内の合格実績では男子御三家が上位を独占していました。(週刊朝日3/13発売号より)
それでは問題を見ていきましょう。
2018年度 栄光学園中学校 入試問題 算数より
問題1 下の図のような、6つの正方形からなるマス目があります。この正方形の辺を通って、点Aから点Bへ行きます。 点Aから点Bへ最短距離で行くときは5つの辺を通ることになりますが、以下の問では最短距離では行かず、7つや9つの辺を通る行き方を考えます。ただし、同じ辺や頂点は2回以上通ってはいけないこととします。
(1) 点Aを右向きに出発します。下の例のように行くと、点Aから点Bまで7つの辺を通ることになります。この行き方以外に、点Aを右向きに出発して7つの辺を通って点Bへ行く行き方は何通りか答えなさい。
(2) 点Aを下向きに出発して、7つの辺を通って点Bへ行く行き方をすべてかきなさい。ただし、解答欄にあるマス目はすべて使うとは限りません。
(3) 点Aから点Bまで9つの辺を通る行き方は何通りか答えなさい。
(※問題の右ページに下書き用のマス目が用意されています)
【解答例】
(1)
マス目が少ないので「手あたり次第」に調べても答えを出せそうですが、(3)までを見据えて「順序よく」解く方法を考えていきましょう。
最短距離の場合は5つの辺「→3、↓2つ」でAからBに行くことができますから、7つ辺を通る場合は2辺ぶんの「寄り道」をすることになります。
寄り道をするとその分だけ戻る必要がありますので、余分な2辺は「→1つと←1つ」または「↓1つと↑1つ」であることがわかります。
これをもとに場合分けをします。
①「→4つと←1つ、↓2つ」の場合
②「→3、↓3つと↑1つ」の場合
以上より、3+1=4通り
(2)
(1)と同じように場合分けをします。
①「→4つと←1つ、↓2つ」の場合
②「→3、↓3つと↑1つ」の場合
(3)
最短距離で進む場合よりも4辺多くなりますから、「寄り道」は「→2つと←2つ」、「→1つと←1つ、↓1つと↑1つ」、「↓2つと↑2つ」の3つの場合があります。
これをもとに場合分けをします。
①「→5つと←2つ、↓2つ」の場合
②「→4つと←1つ、↓3つと↑1つ」の場合
③「→3つ、↓4つと↑2つ」の場合
以上より、2通り+2通り+7通り=11通り
「道順問題」の中でも「遠回り問題」は答えを計算で求めるのはなかなか難しいと思います。
本問は「何通りですか」という問いが(1)と(3)、(2)では「書き出し」を求めていますが、(1)と(3)の答えを出すためにも「書き出し」は必要です。
そこで大切になってくる力が「順序よく場合分けができる力」です。
上記の解答例では、寄り道の順序を考えて、「横方向だけに寄り道をする」、「横方向と縦方向の両方に寄り道をする」、「縦方向だけに寄り道をする」の3つに場合分けをしています。
2020年度の大学入試改革に向け、昨年12月に大学入試センターが同年11月に実施した「大学入学共通テスト導入に向けた試行調査(プレテスト)」の結果速報を公表しましたが、これまで同様に、「何を知っているか」から「何ができるか」への変化が示唆されていました。
それを受けてか、中学入試においても「記述式」の問題がこれまでよりも目立ちます。
「場合の数」の勉強は「記述式」の練習にもなりますので、樹形図や計算方法のほか、場合分けと書き出しについても取り組む時間が持てるといいですね。