第389回 2018年度中学入試の立体図形 3
「第389回 2018年度中学入試の立体図形 3」
前回まで2回にわたり、「立体の切断」、「立体図形の見方」をテーマにした「立体図形」の問題を2018年度入試の中からご紹介していました。
そこで今回は「立体図形の移動」の問題を見ていこうと思います。
「立体図形の移動」には、展開図を利用したものから、実際の動きをかいて考えるものまでいろいろな問題がありますが、今回は展開図に関する問題をご紹介します。
出題校は、女子御三家の1校である雙葉中学校です。
2018年度 雙葉中学校 入試問題 算数より
問題5 [図1]の立体の4つの面は、すべて合同な正三角形です。この立体のそれぞれの面に1、2、3、4の数字を書きました。ある方向から見ると[図2]、別の方向から見ると[図3]のようになりました。
(1) この立体の展開図を完成させましょう。また、向きを考えて2、3、4の数字も書きましょう。
(2) この立体を、4と書いた面を下にして置きます。ここから、辺を軸にして立体を倒して、下にきた数字を足していきます。
① 3回倒して、和が6になるときの下にきた数字の出方をすべて書きましょう。必要ならば線をのばして書きましょう。
② 5回倒して、和が13になるときの下にきた数字の出方は全部で何通りですか。
【解答例】
(1)
立体図形を見取り図から展開図に表すときは、「頂点打ち(見取り図の頂点に記号をつける)」をすると間違いにくくなります。
例えば、下の図のように[図2]の頂点に記号をつけると、[図3]の頂点の記号も自動的に決まります。
この記号を問題図に記入します。
すると残りの頂点の位置もわかりますから、展開図を完成させることができます。
※展開図の一例です
(2)
この立体を辺を軸にして倒すとき、3つの方向に倒すことができます。
このとき下になる面の頂点の記号は次のようになります。
さらにもう1回倒したときの図は次のようになります。
ここで左側の立体(下の面が赤斜線)を右に倒してみると、右側の立体(下の面が青斜線)を左に倒したときと面が同じになります。
このように「正四面体はどちら回りで倒していっても、重なる面は同じ」という特徴があります。
このことを利用すると、この問題の立体を倒していったときに下になった面の数字は次のようになります。
この図を見ると、例えば下の面が1のときに1回倒すと、2、3、4のどこにでもいくことができるとわかります。
①
いま4が下になっていますから、1回倒すと1、2、3のいずれにもいくことができますので、「1→2→3」、「1→3→2」、「2→1→3」、「2→3→1」、「3→1→2」、「3→2→1」、「1→4→1」の7通りの倒し方があります。
②
①から「5つの数を足して13にする」という問題と同じだとわかりました。
①に「1→4→1」があったことから同じ数を連続できないこと、はじめに下に4があるので4からはじめることができないことの2点に気をつけながら、場合分けをして解きましょう。
下になった数字が
(4、4、3、1、1)のとき7通り、
(4、4、2、2、1)のとき7通り、
(4、3、3、2、1)のとき30通り、
(4、3、2、2、2)のとき2通り、
(3、3、3、3、1)のとき0通り、
(3、3、3、2、2)のとき1通り
の倒し方がそれぞれあります。
7通り+7通り+30通り+2通り+0通り+1通り=47通り
正四面体の展開図は次の2種類(回転させたり裏返したりすると重なるものを除く)だけです。
この展開図を上の図(1~4の数字が書かれた図)の線にそって重ねると、どのように重ねても展開図の中に1~4の数字が1つずつ入ることからわかるように、1~4の数字は規則的に並んでいます。
このことは別の表現をすると「正四面体はどのように倒しても記入する頂点の記号は同じになる」ということで、この知識があれば本問は素早く正解することも可能でした。
しかし、倒していく立体が立方体の場合は倒し方によって下になる面は異なりますから、「描く力」も必要になってきます。
次回は立体図形の最後として、「知識+作図力」に関する問題をみていこうと思います。