第379回 2018年度中学入試の平面図形 3
「第379回 2018年度中学入試の平面図形 3」
2018年度の中学入試が終り、
難関中や有名中の試験問題が公開されたことを受けて、
前回は今年の入試問題の中から首都圏で出題された平面図形のうち、
問題文中のヒントから適切な「知識」を引き出して解く問題を
何題かご紹介しました。
そこで、今回は、
5年生から6年生の前半にかけて学ぶ「知識」に加えて、
「作図力」が必要となる問題をみていこうと思います。
2020年度の大学入試改革では、
これまでの知識重視の形から
「思考力」、「判断力」、「表現力」などを評価する方針に
変わることになっています。
平面図形の作図問題は
「知識 → 思考 → 判断 → 表現(作図)」
という流れで解いていきますから、
大学入試改革がより意識されるであろう2019年度の中学入試に向けて、
「理由記述」の問題とともに、
対策が必要な問題の一つといえそうです。
新6年生には難しいかもしれませんが、
将来的に到達したいレベルがどのようなものかを知るという意味で、
今回の問題を見てもらえればと思います。
ご紹介する問題は、
神奈川女子御三家の1校、フェリス女学院中の問題です。
図形の回転移動に関する問題で、
「図形の知識 → 知識をもとにした作図 → 作図からわかることの利用」
という流れで解くことができますので、
ここまでの理解度の確認にも適した問題だと思います。
2018年度 フェリス女学院中 入試問題 算数より
問題3 四角形ABCDを、図1のように矢印の向きに回転させ、四角形EFGDと重なるように動かすことを、「四角形ABCDを点Dのまわりに、時計まわりに90°回転させる」といいます。次の(ア)、(イ)、(ウ)にあてはまる数をそれぞれ求めなさい。
(1) 図2は、ある四角形を点Oのまわりに、時計まわりに90°回転させるとき、その四角形が通るところを表したものです。曲線PRは点Oを中心とする円の一部です。3つの点Q、O、Rは一直線上にならんでいます。また、直線PQの長さと直線QOの長さは等しいです。この四角形の角のうち、最も小さい角の大きさは(ア)°です。
(2) 図2は、(1)とは別の四角形を点Oのまわりに時計まわりに□゜回転させたとき、その四角形が通ったところを表したものと考えることもできます。□にあてはまる数のうち、最も小さいものは(イ)で、そのときの四角形の角のうち、最も小さい角の大きさは(ウ)゜です。
(一部改題)
図形の回転移動はこれまでもよく入試に出題されてきましたが、
本問は「どのような図形を回転させたか」が問われており、
「知識の暗記」だけではなく、
「回転移動の作図方法」が十分に理解できているかが試される
良問だと思います。
【解答例】
(1)
「図形の頂点を回転させる」が回転移動の原則ですから、
2点P、Qを90°回転させてみると、
下の図のようにどちらもRの位置にないことがわかります。
このことから、回転する前のRの位置が図のようにわかります。
回転させる四角形がわかりましたので、
図形の大原則である「四角形は三角形に分割する」を利用すると、
下の図の印をつけた角の大きさが30°であることもわかります。
三角形PORが正三角形とわかりましたから、
回転させる四角形の角のうち最も小さい角R=60° (=ア)が求められます。
(2)
(1)を解くときに描いた図がヒントになっています。
(1)で、四角形PQORを90°回転させると、
点Pの動き(赤線)と点Rの動き(紫線)の一部が重なっています。
このことから、
この重なりがないときが「最も回転する角が小さい」ときだとわかります。
(180°-30°)÷2=75° … 回転角(=イ)
(180°-75°)÷2=52.5° … 最も小さい角Rの大きさ(=ウ)
(1)が誘導となっていますので、
(1)の作図を正確に行えば、(2)も正解可能な問題です。
2018年度入試の図形問題を見ますと、
定番問題だけでなく、
本問のように「知識 → 作図 → 図の利用」といった
理解度の深さが試される問題も出されています。
難関中を目指す新6年生は、
このような入試問題を通して、
これからの学習理解度の目標を決めることができるといいですね。