2017年度中学入試 7 麻布中
「第328回 2017年度中学入試 7」
前回は2017年度の首都圏入試から桜蔭中の入試問題をご紹介しました。
今回は同じ首都圏の麻布中の入試問題をご紹介します。
昨年、2016年度入試では、
大問1は速さ、
大問2は辺の比と面積比、
大問3は速さと比、
大問4は平面図形の求積、
大問5は数の性質、
大問6は図形の規則性 という問題構成でした。
今年度の入試は、
大問1が計算問題、
大問2が時計算、
大問3が辺の比と面積、
大問4が速さと比、
大問5が濃さ、
大問6が数の性質と条件の整理で、
昨年とほぼ同様の難度構成であったように感じました。
では、早速、麻布中の2017年度の問題をご紹介していきます。
今回も新6年生がチャレンジできる問題です。
「2針の作る角が□°になる時刻」を求める、時計算の基本問題です。
(解き方1)
1回目…1時0分から長針が短針よりも150°多く動いた時刻
2回目…1回目から長針が短針よりも120°多く動いた時刻
3回目…2回目から長針が短針よりも240°多く動いた時刻
4回目…3回目から長針が短針よりも120°多く動いた時刻
5回目…4回目から長針が短針よりも240°多く動いた時刻
・・・のように考えると、
8回目は、1時0分から長針が短針よりも30°+360°×3+240°多く動いたとき
とわかります。
この時期の新6年生は、
上記のように順々に考えていく解き方ができれば
OKだと思います。
ただ、春期講習会が終わればゴールデンウィークにかけて、
学校名を冠した模試や範囲のない実力テストが予定されていますので、
「解き方のレベルアップ」は機会を見つけてしておきたいところです。
本問であれば、以下のような解き方も考えることができます。
現在の「持ち偏差値」よりも高い偏差値の学校を目指すのであれば、
今「持っている解き方」が最善の解き方であるかどうかを確認し、
必要に応じてレベルアップを図りましょう。
2問目は、速さの問題です。
新6年生には少し難しい問題ですが、決して正解できないわけではありません。
(1) 距離の条件が1つ、時間の条件が3つと、時間の条件の方が多い問題ですからダイヤグラム解法に適していそうな問題ですが、試しに線分図を用いてみます。
線分図解法は「→に距離または距離の比」を書いて解く方法ですが、
整理した図を見て「?」となる場合は、
「時間の差が生じる区間」に着目します。
このときは、
「いつも(予定)」を書き込んでおくと、
「時間の差が生じる区間」が発見しやすくなります。
本問でも問題文中に「ふだんより~」とありますから、
図の月曜日と火曜日を比べてもその先がわからないのであれば、
問題文にある通り、
「ふだんと月曜日」「ふだんと火曜日」を比べてみます。
上図から、「道のりの比 ア:イ=1:8」と「イの区間を歩くと3+8=11分間」の2つのことがわかりました。
(2) (2)も(1)と同じような問題条件ですから、(1)と同じ解き方が使えそうです。
(1)の解き方ができれば、(2)はサービス問題です。
6年生になって「速さと比」を使うようになると、
線分図解法も
「→に距離または距離の比」を書いて解く問題が多くなるのですが、
中にはこの問題のように
5年生で学んだ「時間の差が生じる区間」に着目して解くこともあります。
ちなみに、ダイヤグラム解法を用いると、以下のようになります。
(1)は「ダイヤグラム 5つの着眼ポイント」のうち、
「相似」と「平行四辺形」を使っています。
(2)もダイヤグラムに整理すると、
「山&谷」と「平行四辺形」が利用できます。
この問題は、線分図でもダイヤグラムでも解くことができますから、
新6年生として「速さ」の力がどこまでついているかを
チェックすることができます。
正解できなければ、
どの箇所に問題があったかを調べて修正し、
6年生で学ぶ「速さ」の単元がスムーズに理解できる
準備をしておきましょう。
最後も新6年生には少し難しい問題ですが、
5年生で学んだことだけで正解可能な問題です。
濃さに関する問題です。
「食塩水の重さ×濃さ=食塩の重さ」や
「食塩水とくれば面積図(てんびん法)」といった
パターンツールだけでは解けません。
「濃さ」の理解度を確認することができる、良問です。
(1) 順々に調べても正解できますが、
それでは(2)以降の正解が難しくなります。
「濃さが同じ」になれば、
「水の重さの比=砂糖の重さの比」になることを利用します。
(2) (1)で「水の重さの比=砂糖の重さの比」を利用することができれば、
(2)で求める「水の重さの比」は「砂糖の重さの比」から求められるはずだ、
という方針が立ちます。
操作1と10回の操作2で、
合わせて12個の角砂糖が使われていますので、
次の表のように整理することができます。
答えの候補が4通り見つかりますが、
「砂糖水の濃さが同じになるまで=初めて濃さが同じになる」
という文中の条件から、
「角砂糖の個数は互いに素」
でなければいけませんから、
調べる手間が省けるように作問されていました。
(3) (2)が正解できれば(3)も考え方は同じですから、正解することは簡単です。
問題条件をパターンにあてはめれば
大問4はダイヤグラム解法の問題ですが、
速さの過不足算解法を身につけていれば
線分図の方が解きやすい問題でした。
また、大問5も濃さの問題を解くための
「食塩水の3公式」「面積図」といった
解法パターンを使えるだけでは正解しにくい問題でした。
麻布中は首都圏の最難関中の1つですが、
難問ばかりではなく、これらの問題のように
「5年生内容の理解度(=理解の深さ)」
を問う出題もあります。
6年生の学習は、
解法の使いこなしや、
より難しい解法の学習が中心となりがちです。
6年生の学習が本格化するまでに、
5年生の学習の理解度を深めることができると
理想的ではないかと思います。