苦手の克服 速さ4
「第293回 苦手の克服 速さ4」
「速さ」の問題を正解できようになるため、
前回までは「線分図解法」の使い方についてふれてきました。
今回からは、「ダイヤグラム解法」について見ていきたいと思います。
昨今の入試問題を見ていますと、
旅人算を利用する問題については
「線分図解法」よりも「ダイヤグラム解法」が有効な問題が
多くなっているように感じられます。
一例を挙げますと、前回ご紹介した麻布中の問題がこれにあたります。
「線分図解法」と「ダイヤグラム解法」ではどうちがうのかを見てみましょう。
2010年度 麻布中 入試問題 算数より
大問2 太郎君は自転車で、次郎君は徒歩で、A町を同時に出発し、B町へ向かいました。太郎君と次郎君の速さの比は5:1です。太郎君は途中のP地点で忘れ物をしたことに気づき、A町へ向かって引き返したところ、その4分後に次郎君とすれちがいました。A町にもどって、再びB町へ向かったところ、Q地点で次郎君に追いつき、B町には、太郎君は次郎君より24分早く着きました。2人はそれぞれ一定の速さで移動するものとして次の問いに答えなさい。
(1)太郎君がP地点で引き返しだのは出発してから何分後ですか。
(2) A町からQ地点までの距離が800mとすると,A町からB町までの距離は何kmですか。
この問題を前回同様、問題の前半部分と後半部分に分け、
順々にダイヤグラムを書いていきます。
先ずは前半部分です。
上図のようになり、ダイヤグラムの着目ポイント通りに解き進めると、
(1)の6分後を簡単に求めることができました。
続いて後半部分です。
早く着く「24分」が、先ほど書いた図中の「4分後」の6倍に見えるように
B町の位置を決めます。
6倍でなくても答えを出すことはできますが、
「ダイヤグラム解法」は
1.「時間条件」を使って図を書く
2.ダイヤグラムの着目ポイントを利用していく
の2点を意識するためです。
(2)も上図のように、
ダイヤグラムの着目ポイントである
・相似
・二等辺三角形
を利用すると、
800m+1600m=2400m→2.4km
のように、答えを簡単に求めることができました。
「ダイヤグラム解法」が苦手なケースは、
(1)ダイヤグラムの書き方がよく分からない
(2)ダイヤグラムは書けるがそこから先ができない
の2つの場合があります。
ダイヤグラムの書き方の大原則は
上記の問題のよう時間条件をグラフに書き込むことから始めます。
その後、書き込んだ目盛りを直線で結ぶという順です。
この大原則を身につけると、
偏差値60(四谷大塚 合不合判定)の中学校の入試問題も
次のようにして解くことができます。
東京都市大付属中 2016年度 入試問題 算数より
大問4 太郎君と花子さんが学校と公園の間を往復します。はじめに太郎君が歩いて学校を出発し、その4分後に花子さんが走って学校を出発しました。花子さんは学校から960mの地点で太郎君を追いぬき、公園に着くとすぐに歩いて学校へ引き返しました。また、太郎君は花子さんが着いた3分後に公園に着くとすぐに、行きと同じ速さで学校へ引き返したところ、学校を出発してから42分後に、太郎君と花子さんが同時に学校に着きました。あとの問いに答えなさい。
(1)学校から公園までの距離は何mですか。
(2)花子さんが公園から学校へ引き返すとき、歩いた速さは毎分何mですか。
(3)2人が2度目に出会ったのは、太郎君が学校を出発してから何分何秒後ですか。
ダイヤグラムを次のような手順で書いていきます。
このように、どのようなグラフになるかは「予測」しますが、
書き始めるのは「時間の条件がわかってから」
という順が大原則です。
(1) 左側の「砂時計型相似」を利用します。
上の三角形:下の三角形=3分:4分ですから、
960m×(3+4)/4=1680mです。
(2) 1680m÷(42分-18分)=70m/分
(3) ここまでくるとすべての速さがわかりますので、
旅人算などを利用することができますが、
せっかくのダイヤグラムですから、
もうひとつの「砂時計型相似」を利用します。
上の三角形:下の三角形=3分:42分=1:14ですから、
21分×14/(1+14)=19.6分→19分36秒後です。
ダイヤグラムを利用すると、
旅人算による求め方よりも簡単な計算で答えを出すことができました。
ダイヤグラムが書けるようになれば、
次は「着目ポイント」を知って、それを練習することになります。
相似、二等辺三角形、琵琶湖型三角形などのダイヤグラムの着目点について、
次回以降で見ていく予定です。