計算力の強化
第280回 「計算力を強化しましょう」
春休みが始まりましたが、学習計画の進み具合はいかがでしょう。
もし、特別な計画を立てずに春休みを迎えたようでしたら、
今からでも実行しやすい「計算力の強化」に取り組んでみるのもよいと思います。
2月から何度かセミナーの弁士として算数についてお話しする機会がありましたが、
そこで6年生に求められている4つの力についてお話をいたしました。
計算速度・解法知識・条件整理力・問題選択力の4つです。
この4力は右の図のような関係なっていると考えています。
今回は4力のうちの「計算速度」について書いてみたいと思います。
昨今の中学入試では
「問題1 次の計算をしなさい」といったような出題は減少傾向にありますが、
それ故に出されると厄介な計算になることもしばしばです。
模擬テスト同様に、
中学入試では計算問題も一行問題も長文問題も、1問あたりの配点は
ほぼ均等と思われますから、
正解を得やすい計算問題で失点することは絶対に避けたいところです。
かといって、あまり時間をかけすぎることもできません。
時間をかけずに正解するためには「計算力」を強化するしかありません。
「計算力の強化」には、
「計算問題専用の知識」
「数の性質の知識の流用」
純粋な計算力(「腕力」と呼ぶことにします)
を強くしていくことの3つだと考えています。
具体例をあげてみていきましょう。
2016年度 洛南高校付属中学 入試問題 算数より
大問1 次の計算をしなさい。
(1)
この問題は「数の性質の知識の流用」ができる問題です。
「分母が28の約数」なっていることを利用すると、
「約数の和の公式」を利用することができます。
(2)
この問題は「計算問題専用の知識」を利用します。
わり算をしなければいけませんので、それぞれの( )の中を先に計算します。
割られる数の方は、残念ながら通常の計算をするしかないようです。
割る数の方は次のようにすると、少し簡単に計算ができます。
ですから、答は2016です。
コツは3つ以上の分数をたしたり引いたりするとき、
まとめて通分するのか、分けて通分するのかという点です。
(2)では3つの分数を2つずつにわけることで、分子の計算が楽になっています。
(3)
この問題も「計算問題専用の知識」を利用します。
「部分分数分解」と呼ばれる、比較的有名な解法の知識です。
この問題では分母が「4×5」のように連続する整数(差が1)ですが、
4×6のように差が2になっても使いこなせるようになるのが理想的です。
(4)
四則混合ですから、かけ算・わり算が先です。
帯分数がありますので、仮分数・真分数に直します。
分数にそろえた結果、「分配法則」という「計算問題専用の知識」が利用できました。
この4問から、「分数の使いこなし」がポイントになっていることがわかります。
2016年度 四天王寺中学 入試問題 算数より
大問1 次の□にあてはまる数を答えなさい。
(1)
洛南中の(4)の理由以外に、
分母が4の分数、小数部分が☆.5の小数、0.375があることから、
分数に直すことが最適だと判断できます。
逆算が苦手な場合は手順を書き込み、上図のように書いて計算すると間違えにくいでしょう。
(2) 6669×24.5+1111×49-2222×98
「6669」「1111」「2222」を見たときに「なんか怪しい…」と疑ってみることを教えてあげましょう。
3×24.5+6666×24.5+1111×49-2222×98
=3×24.5+1111×147+1111×49-1111×196
=3×24.5+1111×(147+49-196)
=3×24.5
=73.5
ここでも「分配法則」が計算を楽にしてくれています。
2016年度 桜蔭中学 入試問題 算数より
大問1 次の□にあてはまる数を答えなさい。
①
分数に直して計算する問題です。
ひたすら計算をする、「腕力」勝負の問題です。
②
これも分数に直して計算する問題です。
四天王寺中の(2)と同じ逆算ですが、やはり腕力が勝負の問題となっています。
「計算力
」の速度アップには、
「計算問題専用の知識」「数の性質の知識の流用」「腕力」を
強化することが必要です。
短い春休みですから、すべてに取り組むことができない場合もあると思います。
そのような場合には、学校の出題傾向に応じて、
強化するポイントの優先順位を付けることができればよいと思います。