2016年度中学入試 浦和明の星女子中・洛南高校附属中
第277回 「平成28年度 私立中学入試 浦和明の星女子中・洛南高校附属中」
前回は2016年度の中学入試から、
首都圏の武蔵中と関西圏の神戸女学院中の問題をご紹介しました。
今回は、首都圏の浦和明の星女子中、関西圏の洛南高校附属中で
出題された問題をご紹介いたします。
浦和明の星女子中の入学試験は1月14日に実施される、いわゆる「1月校」で、
例年2000人弱の受験生が志望します。
試験時間は50分、100点満点です。
今年度の受験者平均は67.7点、合格者平均は80.8点で、
昨年度の受験者平均52.0点、合格者平均62.6点と比べ、易化しました。
この5年間は隔年で難度が変化していますが、今年度は定番問題が比較的多く、
その結果、大幅な点数アップとなっています。
その浦和明の星女子中の入試問題からご紹介するのは、大問3です。
ニュートン算の中では上級問題に属するものです。
ニュートン算が得意なお子さんはチャレンジしてみましょう。
平成28年度 浦和明の星女子中学 入学試験問題 算数 より
大問3 ある都市の水源となっているダムがあります。このダムの1日当たりの水の流入量と放水量が、例年の夏と同じであれば、満水の状態から水がなくなるまでに80日間かかるとわかっています。ところが、今年の夏の1日当たりの水の流入量は例年の夏の80%しかなく、ある時点で、ダムの貯水量は満水時のちょうど半分になっていました。放水量は例年の夏と同じで、このまま80%の流入量が続くとして計算すると、ダムの水はあと20日間でなくなることがわかりました。
(1)例年の夏の1日当たりの水の流人量と放水量の比を、最も簡単な整数の比で表しなさい。
(2)例年の夏の80%の流入量が続くとして、ダムの貯水量が満水時の半分になった時点から、毎日の放水量を例年の夏の75%に制限すると、ダムの水がなくなるまでにあと何日間かかりますか。
問題の条件を整理します。
ニュートン算の場合、線分図、面積図、水そう図などがありますが、
貯水量が変化しますから、水そう図が書きやすそうです。
例年の夏が80日間でダムの水がなくなりますので、
はじめの貯水量を80○とすると、
今年の夏は半分になっていますので40○です。
すると1日あたり例年は①、今年は②の水がダムから減りますが、
水そう図を見ると例年と今年の違いは流入量だけですから、
「ダムの水が減る量の差=流入量の差」となります。
(1)の答え 5:6
(2)㊵÷(⑥×0.75-⑤×0.8)=80日間
ニュートン算を「水そう図」に整理して解くときは、
「満水時の貯水量=日数の最小公倍数 → 1日分の減少量を求める」
の順に進めていくと、問題を解くことができます。
「線分図」に整理する場合は、
「貯水量(または総放水量)をそろえる」
ようにして解くことがポイントです。
次にご紹介するのは、洛南高校附属中です。
試験時間70分、150点と非常にボリュームのある試験で、
問題自体もタフな問題が多い点が特徴です。
今回ご紹介する大問8は非常に難度の高い立体図形の問題です。
「2回切断」を学んでいれば、(2)までは挑戦してみましょう。
平成28年度 洛南高校附属中学 入学試験問題 算数 より
大問8 図の(あ)~(え)の立体の頂点は、1辺の長さが1cmの立方体の頂点または辺の真ん中の点です。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)(あ)の体積は何cm3ですか。
(2)図のA、B、Cをそれぞれ重ねたとき、(あ)と(い)の重なる部分の体積は何cm3ですか。
(3)図のA、B、Cをそれぞれ重ねたとき、(う)と(え)の重なる部分を立体(お)とします。
(ア) (お)の面はいくつありますか。
(イ) (お)の体積は何cm3ですか。
(う)(え)の立体は2015年度の洛南高校附属中の入試問題で、
そのものの体積を求める難問として出題されましたが、
今年度はさらに難度の高い「重ねる」問題に使用されています。
(1)は右の図のようにして求めることができます。
図の三角すいは、底面が立方体の1/2、高さも1/2ですから、
体積は立方体の1/2×1/2×1/3=1/12です。
それを4つ、立方体から取り除いた立体が(あ)なので、
1cm×1cm×1cm×(1-1/12×4)=2/3cm3
が(1)の答えと計算できます。
(2)は、問題文の通りに立体図形を重ねて解けるお子さんは、かなり立体図形に強いお子さんです。
「どんなふうに重なるか、わからない」というお子さんは、
この問題の紹介部分にも書きましたように
「2回切断の問題」として取り組んでみるとよいかも知れません。
難しい問題のですが、(あ)と(い)は向きが違う同じ立体図形ですから、
重なる部分も「規則的」になることを利用します。
具体的には、一部分だけに着目します。(いくつかの解き方があります。以下は一例です。)
この断頭三角柱は、
底面が立方体の1/8、高さは(0+1/4+1/2)÷3=1/4ですから、
体積は立方体の1/8×1/4=1/32です。
それを16個取り除くので、
1cm×1cm×1cm×(1-1/32×16)=1/2cm3
が(2)の答えと計算できます。
(3)も(2)と同様に、一部分(一部の面)だけに着目します。
上図より、
(ア)12面、(イ)1/3×5/18×2=5/27cm3
という答えが求められます。
入試当日は、この問題の(2)(3)は時間が余れば取り組む問題だと思いますが、
練習のときは「2回切断」の超難問としてチャレンジしてみてもよいと思います。
洛南高校附属中の大問8は非常に難しい問題ですが、
「切断は見取り図と投影図を利用する」
という大原則でなんとか解くことができました。
この問題より易しい一般的なレベルの問題であれば、
「切断は見取り図と投影図を利用する」という大原則で、
より簡単に解くことができますので、
早く理解して、使えるようになるといいですね。