小5の学習ポイント1 速さ
「第260回 小5の学習ポイント 速さ」
今回は、小5で学ぶ「速さ」の学習ポイントを、
日能研を例に見ていきたいと思います。
日能研では第31回から5回にわたって速さの学習をしますが、
今回はそのうちの
「第31回 速さⅠ 速さの三公式」、
「第32回 速さⅡ 進行グラフ/平均の速さ」
について、
その基本公式や基礎知識と
「カリテで失点すると不利になる問題」
について考えます。
「第31回 速さⅠ」の基本公式と基礎知識
大切なポイントは、
「速さ・時間・距離の関係を面積図の形で頭に入れておく」
ことです。
面積図で理解しておくと、
「距離×時間=速さ?!」
のような間違い方をしなくなります。
また、
「縦に速さ、横に時間」を書くくせをつけておくと、
「速さのつるかめ算」のような中級問題にも
対応が可能です。
速さの単位換算では、
「時速○km÷3.6=秒速☆m」というテクニックが、
第33回の旅人算や第34回の通過算で役に立ちます。
また、
40分=2/3時間や45分=3/4時間のような、
代表的な時間の換算は、
40÷60という計算をしなくても求められるよう、
円を等分したイメージで
時間を考えられるようになっておくとベストです。
「第31回 速さⅠ」…カリテで失点すると不利になる問題
日能研 5年 カリキュラムテスト 第18回(過去問)より
共通問題6 次の問いに答えなさい。
(1) A駅からB駅まで12.6kmあります。A駅を9時20分に出発した時速54kmの列車は、B駅に何時何分に着きますか。
(2) 分速90mで行くと2時間30分かかる道のりを1時間30分で行くには、時速何kmで行けばよいですか。
【振り返りが必要な(1)の解き方の例】
12.6km÷時速54km=0.233…
(割り切れないので、「分数にしなくっちゃ…」と考え直して、)
12.6km÷時速54km=7/30時間
7/30時間×60=14分間
9時20分+14分間=9時34分
答え 9時34分
【振り返りポイント】
問題が受験レベルに近づくにつれ、
「割り切れるわり算」の問題は減っていきます。
上記のように「筆算」を書いているようでしたら、
「時間を求めるときは割りきれないこともあるから、
次からは答えを分数で求めるようにしよう」
と促してあげましょう。
6年生になって算数のテストの点数が取れないお子さんの傾向のひとつとして、
「割り切れない問題でもわり算の筆算を書いている」
ことがあげられます。
5年生の後半から、
「分数を主体とした計算」に変えていくようにしましょう。
【オススメの考え方】
いきなり式を書くことができるこのような問題でも、
練習段階である家庭学習では
面積図(線分図でもOKです)に整理することが
オススメです。
面積図に整理すれば、
「立式」で間違える可能性が減りますし、
「工夫ができないか?」と考えることもできます。
このレベルの問題から「工夫」する努力を積み重ねていると、
少々算数が苦手でも、6年生の授業で落ちこぼれにくくなります。
面積図を見ると、
「12.6÷54=かかった時間」
という計算式が思い浮かびますが、
このとき、
「答えが1時間よりも小さい」
ことにも気づけると、
「分単位に直すためにあとで60倍するのであれば、先に60倍しても同じこと」
ですから、
以下のような計算となり、
「筆算」を必要としなくなります。
9時20分+14分間=9時34分
答え 9時34分
【振り返りをオススメする(2)の解き方の例】
分速90m×150分=13500m
13500m÷90分=分速150m
分速150m×60/1000=時速9km
答え 時速9km
【振り返りポイント】
上記の解き方は「正解」です。
しかし、「ベスト解法」ではありません。
算数の答えの求め方は1通りではなく、
学年ともにレベルアップしていきます。
ですから、
「答えが正しければそれでOK」を続け、
6年生になっても「スキルアップ」を怠っていると、
「中学入試問題をもとに、合格に求められるチカラと、
身につけておきたいチカラを確認(日能研HPより)」 する実力判定テストで
得点が伸び悩むことになります。
【オススメの考え方】
この問題も面積図に整理することがオススメです。
この面積図を見ると、
分速90m×150分=?×90分 → ?=分速150m
と計算することなく ?=分速150m がわかります。
分速150m×60/1000=時速9km
答え 時速9km
※「速さと比」の単元で、
「速さの比は時間の比の逆比(距離共通)」を学びますが、
上の図はその理解にも役立ちます。
「第32回 速さⅡ」の基本公式と基礎知識
大切なポイントは、
グラフの読み取り方と平均の速さの求め方です。
一部の例外を除いて速さのグラフは
「縦軸に距離、横軸に時間」を書きます。
第33回以降で学ぶ、
旅人算・通過算・流水算では
この進行グラフを利用して解く問題が多くありますので、
グラフの変曲点(折れ曲がる点)に着目し、
「何がどう変化したか」、
「どんなことが起きたのか」、
を説明できるように、家庭学習で練習しておきましょう。
一方、
平均の速さを利用する問題は、
出題数が少ないため、
公式を忘れがちです。
下のような面積図でイメージしておくといいと思います。
「第32回 速さⅡ」…カリテで失点すると不利になる問題
日能研 5年 カリキュラムテスト 第18回(過去問)より
共通問題7 A君は自分の家から8kmはなれたB君の家へ自転車に乗って時速12kmの速さで行く
予定でした。ところが、予定の速さで24分進んだところでCさんに出会い、その場でしばらく話をしてから前と同じ速さで進んだため、家を出発してから48分後にB君の家に着きました。右のグラフはそのようすを示すものです。このとき,次の問いに答えなさい。
(1) A君の家から何kmのところでCさんに出会いましたか。
(2) 予定の時刻にB君の家に着くためには、Cさんと別れてから時速何kmの速さで進めばよかったのですか。
【(1)のチェックポイント】
(1)では解き方にチェックポイントが3つあります。
まず、問題文に書かれている情報を進行グラフに書き込みましょう。
試験中はここまで詳しく書かなくてかまいませんが、
家庭学習では「グラフを正しく読めているかの確認」として、
書き込めるかどうかをチェックします。
ポイントにあるように
「静止している部分=横軸と平行な部分」
が理解できていれば、
きちんと書きこめると思います。
その後は、
「答えと関係のある直角三角形」に着目できている
かをチェックしましょう。
最後に、
単位をそろえて計算しているかをチェックします。
時速12km÷60=分速0.2km
分速0.2km×24分=4.8km
という計算でも正解なのですが、
「時速12km×24分=(1)の答え」で、
(1)は「何kmですか」と問われていますので、
単位が同じkmになっている「時速12km」はそのままにして、
「24分」を「時間」に直す計算の方が、
これからの学習に適しています。
時速12km×24/60時間=24/5km=4 4/5km(割り切れるので小数にしてもOKです。)
答え 4.8km(分数でも可)
【(2)で学習しておきたいポイント】
(2)は「速さ」をまだ2週分しか習っていない現時点では、
難しい問題といえるでしょう。
しかし、
この問題はこれからの学習にもつながりますので、
正解できても、間違ってしまっても、
学習ポイントは押さえておきましょう。
1つめのポイントは、
問題文に書かれている情報を進行グラフに書き込むことができるかです。
書きこまなくてもこの問題を解くことはできますが、
6年生の学習で落ちこぼれないようにするために、
グラフに書き表すことができるかをチェックしておきましょう。
「予定」は「休まずに同じ速さで進み続けること」であり、
「速さが同じということはグラフの傾きも同じ」になりますから、
グラフを延長できればOKです。
進行グラフを使って問題を解くときに、
いつも頭においておくことは「時間・時刻」です。
この問題でも
「予定の到着時刻」
「再び進み始めた時刻(またはC君と話していた時間)」
がわかれば、
あとは計算をするだけです。
【オススメの解き方】
8km÷時速12km=2/3時間=40分…予定の到着時刻
48分-40分=8分間…予定より遅れた時間=C君と話をしていた時間
40分-(24分+8分)=8分間…予定の時刻にB君の家に着くために進む時間
(8km-4.8km)÷8/60時間=時速24km
答え 時速24km
今回は
中学入試必出単元の「速さ(前半)」の基本公式や基礎知識、
「カリテで失点すると不利になる問題」
について見てきました。
共通問題6、7-(1)でみたチェックポイントは、
「栄冠への道」などの家庭学習を進める上での参考にしてみてください。
また、
共通問題7-(2)からは、
正解に必要な力が
「速さの三公式」「進行グラフの読み取り方」という算数の要素だけでなく、
「予定の時刻にB君の家に着く」という部分の題意を把握する力も必要だ
とわかります。
中学入試問題では
「ミカンとリンゴを合わせて20個買うつもりでちょうどのお金を持ってお店に行きましたが、個数を取り違えてしまったので320円残りました」
のように、
「予定と実際」が出てくる問題が他の単元にもあります。
「予定」の出てくる問題に出会ったときは、
「予定は~」「実際は~」を整理してから解く練習をくり返して、
「題意把握力」を強めていけるといいですね。