小5志望校診断サピックスオープンの振り返り(前半)
「第252回 小5志望校診断サピックスオープンの振り返り(前半)」
いよいよ小5の実力テストが始まりました。
これまでの学習の成果が「初めて」試されます。
「初めて」と書きましたが、
実際には、
浜学園では小4の9月と1月に「小4実力テスト」が、
サピックスでは小3と小4の10月、小5の5月に「実力診断サピックスオープン」が
行われています。
にもかかわらず
「初めて」としたのには理由があるからです。
特別講座(例:最高レベル特訓 浜学園)を除くと、
中学受験の基礎となる学習内容は、
小5の通常授業で学びます。
小4までの通常授業は、
原則、
中学受験の基礎となる5年生の授業を十分に理解するための準備講座、
という位置づけなのです。
小5になっても
2~4月は
計算分野や面積の公式など「基礎の基礎」部分の学習です。
しかし、
9月以降ともなれば、
夏期講習も含めた、5年生の7ヶ月間で
学び、理解し、使えるようになったことが試されてきます。
その意味で、
9月以降の実力テストが「初めて」実力を測るテスト
と言えるのです。
そこで今回は、
9月6日に実施されました
「小5 志望校診断サピックスオープン」
について見ていきます。
以前にもご紹介したとおり、このテストは、
Aタイプ(基礎力・問題処理能力重視 大問1~5)と
Bタイプ(思考力・記述力重視 大問6~8)の
2つのタイプの問題によって構成されています。
解答数は全部で31題、試験時間は50分です。
全問を解答しようとすると、
1題あたり約1.6分ということになりますから、
まずは「処理速度」が試されることになります。
返却されたテストが
「途中で時間切れ」になっている場合は、
11月に実施される第2回志望校診断サピックスオープンに向けて、
計算の速度up、
基本問題の弱点克服に取り組み、
Aタイプ(基礎力・問題処理能力重視)にかかる時間の
短縮を目指しましょう。
また、
返却されたテストが
「たくさんの問題に解答をしたけれど×(バツ)もたくさんある」場合、
計算精度の向上(計算の工夫を含みます)、
基本問題の弱点克服に取り組む他、
このテストで明らかになった
「現在の自分の学力」に応じた問題を選択する「良い癖」
をつけるようにします。
現在の学力で正解できる見込みが低い問題に解答しようとすれば、
たとえカンで答えるにしても、
問題を読むなどに
貴重なテスト時間を使っていることになります。
この時間を、
より正解できる可能性が高い問題に使って
失点を防ぐことができれば、
自動的に成績は良くなります。
その際、
正解できる可能性が高い問題
=学力に応じた問題を選択できるようになるため、
解法知識を
「○○という問題の条件があるから、☆☆のように整理する解き方が見つかる」
というレベルに引き上げておくことが重要です。
この部分が弱いうちは「思考力」も弱いため、
高得点をあげるために正解が必要なBタイプの問題に対して、
「当日の出来次第」という状況(=点数が乱高下する状態)が
続くことになります。
以下に、
実際の問題を通して、
基本問題の弱点克服への取り組み、
「○○という問題の条件があるから、☆☆のように整理する解き方」を振り返る
ということを見ていきましょう。
2015年度 SAPIX 志望校診断サピックスオープン 5年算数 より
大問2-(3) 濃さが10%の食塩水200gに、食塩10gと水40gを加えてよくかき混ぜました。できあがった食塩水の濃さは何%ですか。ただし、食塩水の濃さとは、食塩水の重さに対する食塩の重さの割合のことです。
【解き方1 塩分数】
問題の条件を整理すると、
「食塩の重さがすべて求められるから、そのまま計算すればOK」
という解き方もわかりますので、
無駄な時間が生じません。
また、計算を
のように約分の組み合わせを工夫すると、
「正確に、楽に、速く」解くことができます。
【解き方2 面積図】
面積図の場合も、問題の条件を整理すると、
「3つの食塩水を一気に均す(ならす)のは難しい」と気づけ、
「食塩10gと水40gだけを先に均そう」
「2つの長方形の面積(=食塩の重さ)が求められるから、食塩÷食塩水で求めよう」
といった、問題を処理する方針がすぐに決まります。
【解き方3 てんびん法】
てんびん法の場合も、問題の条件を整理すると、
「3つの食塩水を1回の逆比利用で解くことはできない」
「支点の位置がはっきりしない」とわかり、
例えば
「食塩10gと水40gだけを先に混ぜておこう」
というような手順が、この場合もすぐに決まります。
解き方はどれでもOKですが、
問題を読みながら、
「比を使わなくても解ける問題だから」
という判断ができれば、
ベストです。
その判断の上で整理を省略し、
食塩水の3公式だけで解いたのであれば、
問題条件の整理がなくても問題ありません。
一方、
整理をしていても間違えている場合は、
その理由を振り返ることが必要です。
一例をあげますと、
塩分数であれば、
食塩水を書く位置や塩分数の式に間違いがあった、
面積図であれば、
面積図を書いてはみたもののそこから先に進める方法を見つけられなかった、
整理自体は正しかったが途中の計算を間違えた、
などです。
次は学んだ知識の活かし方を確認してみます。
大問3-(3) 右の図はたて16cm、横12cm、対角線の長さが20cmの長方形に、直径が12cmと16cmの半円を2つずつと、直径が20cmの円を組み合わせた図形です。斜線部分の面積の合計は何cm2ですか。円周率は3.14とします。
【解き方 まわりから引く】
8×8×3.14×1/2×2+6×6×3.14×1/2×2+16×12-10×10×3.14
=(64+36-100)×3.14+16×12
=0+192
=192(cm2)
【解き方2 ヒポクラテスの三日月の利用】
右の図のように長方形の対角線を補助線として引くと
「ヒポクラテスの三日月(ア+イ=ウ)」が2組見つかります。
16×12=192(cm2)
解き方はどちらでもOKです。
【解き方1】を選んだ場合、
計算の決まり(分配法則)を利用できているかどうかが
チェックポイントです。
円問題では、
円周率の計算回数を少なくする工夫ができないかを、
問題を解くときはいつも考えるようにすると、
処理速度と正答率の向上につながります。
できれば、問題の図形が特徴的なので、
「ヒポクラテスの三日月」を思い出して使っていると、
最高です。
逆に気をつけなければいけない解き方もあります。
以下の考え方は「まわりから引く」の失敗例で、
「半円-イ=ア」なので、まず「おうぎ形-ウ」でイを求める、
という考え方です。
返却答案をチェックして、
おうぎ形の中心角がわからないのでこの問題を放棄している、
おうぎ形の中心角を45度あるいは60度として計算している場合は、
この問題の正しい解き方を身につけていることができていないと言えます。
この2問のような基本問題で、
間違っていたり時間を失っていたりしていないかを確認し、
11月の第2回志望校診断サピックスオープンまでに、
弱点を克服しておけるといいですね。
次回はBタイプの問題についてふれたいと思います。