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本校以外で受験ができる中学

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中学入試の算数問題 2015年08月15日18時00分

「第247回 本校以外で受験ができる中学」

お盆も終わり、週が明ければ夏休みも残り2週間です。

ここまでの約4週間、お盆休みの活用も含め、
夏期中の学習は目標達成に向けて順調でしょうか。

順調であれば、体調に気をつけながら、
残り2週間もこれまでのペースで取り組めばOKですね。

しかし、予定通り進んでいないのであれば、
計画の見直しをしましょう。

サピックスの場合、
夏期講習は18日の火曜日までですから、
およそ10日間の家庭学習時間をとることができます。

志望校錬成特訓もありますが、
順調でないのであれば、
それも含めた見直しとなるでしょう。

早稲田アカデミーの場合、
夏期講習は24日まであり、
すぐに通常授業も再開されますが、
2学期の始業式が9月1日の小学校であれば、
1週間はお昼の時間を家庭学習にあてることが可能です。

時間が有り余っている訳ではありませんので、
優先順位をつけ、
またどの程度の「深度」まで取り組むかを決めましょう。

そして、いよいよ9月になれば
入試要項が公表されたり、
学校見学会、学校説明会もこれまで以上に頻繁に行われたりと、
保護者の方々も忙しくなると思います。

そこで、今回は、
12月や1月初旬といった早い時期に入試があり、
しかも本校以外で受験できる学校(県外入試)について見ていきます。

前回の海陽中も愛知県以外に、
仙台・東京・静岡・金沢・大阪・広島・福岡で受験が可能ですし、
函館ラ・サール中、北嶺中、札幌聖心女子中、函館白百合学園中、
西大和学園中、岡山中、愛光中なども
県外入試が行われます。

一般に、県外入試を受ける目的には、
入試本番の緊張感になれる、
仕上がり具合のチェック、
合格を勝ち取って本命校入試への弾みとする
などがありますから、
目的に応じた学校の選択が大切です。

最大の選択基準は入試難度(偏差値)でしょうが、
その他にも試験会場がどこかということも重要です。

系列校の大学で受験できる学校もあれば、
いわゆる貸し会場での試験もあり、
必ずしも「本番並みの雰囲気」を経験できるとは限りませんので、
募集要項や学校説明会で情報収集をしましょう。

また、
過去問演習もある程度はしておきたいと思いますが、
学校によっては試験会場が異なると試験問題も異なるところがあります。

入手しにくい過去問もありますので、
学校説明会で問題の入手方法について確認をするとよいでしょう。

さらに、
試験問題が同じであっても、
合格最低点の設定が本校での入試よりも高めに設定されている学校もありますので、
注意が必要です。

次にご紹介するのは、
試験問題は共通でも合格最低点が異なる
愛光中の入試データと過去問です。

20150813150228.jpg


学校公表データによれば、
本校と県外とでは合格最低点に約40点の差(400点満点)があります。

ですから、
県外入試の最低合格点に達するには、
算数(配点120点)の場合、84点の得点が必要な計算です。

入試の問題構成は、
答えを記入する枠のある標準問題が中心の1枚目(配点:約70点)と、
式と計算を書く欄が設けられた難しめの問題が多い2枚目(配点::約50点)
からなりますので、
例えば、
1枚目を全問正解し、
2枚目の大問をひとつ完全に正解させることが
必要となります。
(配点の目安:学校公表資料より)

20150813150348.jpg


では、愛光中の実際の問題をご紹介します。


2015年度 愛光中 入試問題 算数より

20150813150407.jpg大問1-(7) 右の図のように3つの円ア、イ、ウがあり、その円周上に9個の白丸があります。この白丸に1から9の異なる整数を一つずつ入れたところ、4、6、7、8は図の位置に入り、アの円周上にある整数の和は23、イの円周上にある整数の和は24、ウの円周上にある整数の和は25になりました。このとき、Aに入った整数は( ① )です。次にこの9個の整数のうち2個を選んで入れ替えると、アの円周上にある整数の和は23、イの円周上にある整数の和は21、ウの円周上にある整数の和は28になりました。このとき、入れ替えた整数は( ② )と( ③ )です。ただし、( ② )は( ③ )より小さい整数です。








1枚目は「標準問題」と書きましたが、
本問は問題文が長く、
整理しないで解くのは少し危険です。

問題文に
「1から9の異なる整数を一つずつ入れ」
「アの円周上にある整数の和は23」
とありますから、
20150813150505.jpgアの円周上にある4つの◯の数の和は、23-6=17、
まだ書きこまれていない数の和は1+2+3+5+9=20 より、
20-17=3がAとわかります。→( ① )の答え 3



問題の後半部分です。「2個を選んで入れ替え」たのですから、変化に着目します。

20150813150549.jpg

上の表から、
イとウで「差が3の数の入れかえた」ことがわかります。

もし4と7を入れかえたとすると、
イの和は3減りますが、
4と7はどちらもウの円周上にあった数なので、
ウの和は変化しません。

このことから、
「イの円周上にあってウの円周上にない数」と
「ウの円周上にあってイの円周上にない数」を
入れかえなければいけないことがわかります。

「差が3の2数」
「イの円周上にあってウの円周上にない数と
ウの円周上にあってイの円周上にない数の入れかえ」
から、
20150813150649.jpg右図の赤丸の数と青丸の数を入れかえればよいことがわかります。

さらに、アの和は変化していませんから、
入れかえる2数は
「アの上にない2数」
または
「アの上にある2数」
です。

20150813150850.jpg「アの上にない2数」で条件を満たす2数はありませんので、
「アの上にある2数(=1、2、5、9)」のうち、2と5をいれかえたことがわかります。
→( ② )の答え 2 ( ③ )の答え 5




わからないときは、
1、2、5、9を適当に入れてみて
試行錯誤してもOKです。

しかし、
近年の入試問題では
「推理と論理」の問題もある程度出題されていますから、
もし、取り組む時間に余裕があれば、
上記のように「条件を整理」し、
「上手くいく条件」を見つけていく練習もしてみましょう。




もう1問、「標準問題」をご紹介します。


大問1-(8) A店とB店で同じ商品を1個800円で同じ個数仕入れ、それぞれ定価をつけて売りました。 A店では28個売れ残り、B店では25個売れ残りましたが、A店、B店ともに利益は仕入れにかかった代金の15%でした。A店でつけた定価が1150円のとき、一つの店で仕入れた商品の個数は( ① )個で、B店でつけた定価は( ② )円です。








売買損益算の「多数売り」パターンです。「多数売りは表に整理する」が原則です。

20150813151005.jpg

表に整理してみましたが、
これといった手がかりがありません。

そこで
「比と割合の文章題」を解くときの大原則である、
「割合から処理をする」に従い、
仕入の合計金額を800と3/20(=0.15)の最小公倍数800としてみます。

20150813151730.jpg

また、
「売れ残り問題」のポイントは、
「もし、全部が定価で売れていたら~」
と仮定することでした。

すると、売れ残りを定価で販売した分だけ売上と利益が増えますから、A店は下のようになります。
※この段階で、情報の多いA店に着目し、B店については「少し脇によけておく」という判断も大きなポイントです。

20150813151116.jpg

仕入れ+利益=売上なので、
800□+120□+1150円×28個=1150□
 → 230□=32200円 1□=140円 が求められます。

ですから、140円×800÷800円=140個 が、仕入れた個数です。 
→ ( ① )の答え 140


各店の仕入れる個数が140個とわかったので、
B店は次のようになります。

20150813151324.jpg

表より、128800円÷115個=1120円 が、B店の定価です。
 → ( ② )の答え 1120

※仕入れ額と利益総額がA店とB店で同じですから、売り上げも同額です。
このとき、売れた個数の比が112個:115個なので、
定価の比は115:112となり、
1150円×112/115=1120円 
とすると、
より簡単にB店の定価を求めることができます。



「売買損益算」は中学入試でもよく出題されていますが、
本問は定番の問題に少し工夫が加えられています。

「損益売買算」の解法パターンは大切ですが、
「比と割合の文章題」の大原則も忘れないようにしましょう。



愛光中のように合格最低点が本校受験と県外入試で異なる学校の場合、
標準問題とはいえ、
今回ご紹介したような少し難しめの標準問題を
失点しないことが必要になることもあります。

受験日程が早めの学校を受験予定に入れる場合、
過去問のレベルや偏差値以外に、
試験問題は同一か、合格最低点に差はないかなどの情報も
併せてみておけるといいですね。

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中学入試の算数問題 2015年08月15日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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