平面図形「辺の比と面積の比」(隣辺比の使い方)
第206回 「2014年入試問題と小5の学習 平面図形」
こんにちは。中学受験情報局算数主任の前田昌宏です。
前回は前受け校のひとつ、岡山中の2014年入試問題から、定番の問題「坂道の問題」をご紹介しました。
今回は、岡山白陵中の2014年入試問題から、多くの5年生が習い終えている「平面図形」の問題を2問ピックアップしてみます。
前回同様、ちょうど良い力試しになると思いますので、チャレンジしてみて下さい。
2014年 岡山白陵中 算数 入試問題より
大問1-(7)
右の図の三角形ABCにおいて、BD:DC=1:2です。三角形DCEの面積が三角形ABCの面積の半分になるとき、AE:ECを求めなさい。
定番問題というよりは、
2辺の比から面積の比を求める基本問題の逆算パターンです。
「隣辺比」と呼ばれる解き方です。
右の図のように、
三角形ABCと三角形ADEで「ひとつの角(角A)が共通(重なっている)」とき、
面積の比はその共通角をはさむ2辺の積、
三角形ABCの面積:三角形ADEの面積=5×9:2×4=45:8
で求められるというものです。
この解き方を習っている場合は、
ア×3:イ×2=2:1
なので
ア×3:イ×2=4:2=12:6
または「内項の積=外項の積」を利用して
ア×3×1=イ×2×2
から、
ア=4、イ=3
とわかります。 → AE:EC=1:3
もし、隣辺比を習っていなかったり、上手く使えないとしても、
この問題は1本の補助線で解決できます。
補助線を引く解き方は、
定番問題よりも難しい問題を解くときの練習になりますから、
隣辺比で解けたときでも、別解として練習しておくと良いでしょう。
ポイントは、
「図形の基本単位は三角形なので、四角形は三角形に分割する」
という大原則です。
すると、補助線の候補が2つあることがわかります。
どのような補助線が正しいのかわからないお子さんは
1.頭の中で考えている内に時間が経つ(いわゆる「手が動かない」ケース)
2.補助線を1本引いてみて上手くいかないので2本目を付け加える(複雑になる)
という反応を見せます。
どちらが正しい補助線なのかは、
2つの図を書いてみるとすぐにわかります。
もし、それでですぐにわからないということであれば、
至急、初めから正しい補助線が引かれているレベルの問題
(例題など、そのとき方そのものを練習する問題)からのやり直しが必要です。
さて、この問題の正解は右の図です。
右の図では、
「高さの等しい三角形の面積比=底辺の比」
が使える図形が見えています。
ですから、
のようにして、AE:EC=1:3が求められます。
最後の図までたどり着きながら、答えが出ない場合は、
「切り分けた三角形は隣り合う別の三角形と合体させる」
(上の図では①の赤斜線の三角形と②の赤斜線の三角形)
という「呪文」を覚えておくといいですね。
この別解からは、
1.図形の基本単位は三角形
2.四角形は三角形に分割する
3.補助線は1本引いただけで考えてみる
4.候補の数だけ図を書いてみる
5.高さの等しい三角形の面積比=底辺の比
という、5つの大切なポイントが復習できます。
「平面図形と比」の問題が苦手という場合、
問題を解きながらこのような学習のポイントをひとつひとつ確認してみると、
どの段階で学習がつまずいたかもわかります。
もう1問ご紹介しましょう。
2014年 岡山白陵中 算数 入試問題より
大問2-(2)
底面が1辺8cmの正方形の形をした、ふたのない箱があります。図1はそれを真上から見た図です。Aから球を1つ、図1の太線のように打ち出します。球は箱の側面にあたるたびに図2のように同じ角度ではねかえります。Aから打ち出された球が、次に正方形の頂点にくるとき、その頂点はどこですか。また、それまでにはねかえった回数も答えなさい。ただし、球の大きさは考えないものとします。
図1にある、高さと底辺の比が8:5の直角三角形と相似な三角形を使う問題です。
順々に計算していきます。
最後まで計算しても良いのですが、
上の図の点Uが辺ABのまん中の点(中点)ですから、
ここから先は点Uまでの動きと線対称になることを利用すると「楽」ができます。
上の図から、答えは頂点B、11回とわかりました。
この「はねかえり問題(ビリヤード問題)」は、
「鏡の世界」と呼ばれる解き方を使うと、
図をより楽に書くことができます。
反射するのは球ではなく、
箱が反射=球があたった勢いで箱がひっくり返る
という作図方法です。
これですと、
のように、右方向に5cmずつ進んで行けばよいので、
簡単に作図できますね。
上の図から、
正方形の上下の辺に7回、左右の辺に4回の計11回 あたり、
頂点B にくることも簡単にわかります。
辺CDで初めてあたったときに「箱を反射」させてもよいのですが、
すると、図が上へ上へと伸びてしまい、ノートに書きづらいです。
計算などはこの図も有効なのですが
作図になると大きなスペースが必要となります。
正方形の上下の辺にあたったときは球が反射し、
左右の辺があたったときは箱が反射するようにしておくと、
限られたスペースでも作図が可能です。
ところで、これらの反射の作図を見て何か気づく事はないでしょうか?
右に伸ばした図では、横の長さが、5cm×8=40cm ですし、
上の図ではたてに8段、横に5列で、計40個の正方形が並んでいます。
実は、
問題図の直角三角形が「高さ8cm、底辺5cm」であることと
関係があるのです。
1辺の長さが8cmの正方形の頂点にピッタリあたるためには、
たてや横に8の倍数だけ進まなければいけません。
「最小公倍数40cm」の意味は、正方形の1辺8cm×5個=40cm ですから、
正方形が横に5個並び、その「仕切り」は 5-1=4つ あり、
球は4回「仕切り(正方形の左右の辺)」にあたる
ということにつながります。
また、横の動き5cm×8=40cm からは、
上下に8回あたる(8回目は頂点B)ので、
Bに来るまでに 8-1=7回 あたることもわかります。
さらに、
正方形が横に5個=奇数個並ぶということは、
1個目と同じ正方形が5個目とわかりますし、
上下に8回=偶数回あたるということは下の辺にあたる
ということです。
ということは5個目(=1個目)の下の頂点であるBに球がくることもわかります。
このように見てくると、
この問題は「相似」から「数の性質」へと、
異なる分野の問題ととらえることもできます。
数の性質の問題として解けば、短い時間で解くことも可能ですね。
ただ、1991年の灘中2日目大問5のような問題などでは、やはり作図力がものを言いますから、いきなり最小公倍数で解くのではなく、作図ができるようになって、図から最小公倍数へ解き方を「発展」させていくことをお薦めしたいと思います。