『2014年度 中学入試問題分析』10 正三角形と正六角形の応用
第173回 2014年度入試分析「正三角形と正六角形の応用」 ~10~
麻布中(SAPIX 2014年度入試 合格可能性80%偏差値60)
今回は男子御三家から麻布中2014年度の入試問題をご紹介します。
入試は4教科で行われ、応募者875名、合格者398名でした。
また、合格最低点(200点満点)は105点で昨年の98点よりも高くなりました。
算数の試験時間は60分で満点は60点、
問題数は昨年と同じ大問6題(小問数13問)でした。
出題分野は麻布中でよく出される、
速さの問題、数の性質の問題、場合分けの問題、正六角形・正三角形 が
すべて出題されました。
大問1 数の性質と場合の数
大問2 平面図形(図形の転がり移動)
大問3 速さと比(電車と人のすれ違い)
大問4 比と割合の文章題(食塩水の濃さ)
大問5 数の性質
大問6 平面図形(正三角形と正六角形)
これらの問題難度をA(平易)~B~C(難問)で分類した場合、
大問1 B
大問2 A
大問3 B
大問4 B
大問5 (1)A (2)B (3)B (4)C
大問6 (1)A (2)A (3)B、C (4)C
となり、難問が多かった前年の問題と比べると、
平均的な問題、やや難しい問題、かなり難しい問題が
バランスよく出題されたように思われます。
これらの問題の中から今回は、誘導形式が美しい大問6をご紹介します。
大作ですが、問題の前半は作図問題です。
少し難しいとは思いますが、新5年生でもチャレンジ可能です。
麻布中 2014年度
大問6
下図の点線は平面を同じ大きさの正三角形でしきつめたものです。また、下図で表されるような位置に、点O、点X、点Y、直線XYがあります。
点Yを中心にして、直線XYを反時計回りに60°回転させたとき、点Xが移る先の点をZとします。以下の問いに答えなさい。
(1)点Zを答のらんに黒丸で書き入れなさい。また、書き入れた黒丸の近くにZと書きなさい。
(2)角XOZの大きさを答えなさい。ただし、下図において角JKLとはアの角を表すものとします。
(3)EPとPFの長さの比、およびAQとQBの長さの比を、できるだけ簡単な整数の比で表しなさい。
(4)四角形AQPFの面積は、正六角形ABCDEFの面積の何倍になりますか、分数で答えなさい。
さっそく作図問題から取りかかりましょう。
(1)この問題が直線XYではなく、
もし直線イYの60°回転でしたら、作図は簡単ですね。
マス目状の正三角形を上手に使うには、
問題図の直線XYを、
回転させやすい直線を辺とする平行四辺形の対角線として
回転させるといいですね。
すると、下の図のように「Z」の位置がわかります。
(2)求めなければいけない角XOZをつくるために、点Oと点Zを結んでみます。
直線ZYは(1)で直線XYを回転移動させて作図したのですから、
直線ZYと直線XYの長さは同じです。
点Oは直線XYのまん中の点ですから、
三角形OZYは60°をはさむ2つの辺の長さの比が1:2となるので、
いわゆる
「30°問題(正三角形を2つの合同な直角三角形に分割することを利用する問題)」
の直角三角形とわかります。
ですから、答えは90°です。
また、この問題は、
のように考えておくと、次の(3)が考えやすくなります。
(3)はこれまでの小問とまったく関係ないようにみえるのですが、
問題条件の「折る」から何がわかるかを考えたとき、
(1)、(2)の意味がわかるように作問された、
いかにも麻布中らしい、華麗な誘導形式の問題です。
中学の入試問題で「折る」とあれば、
「折る
→ 線対称移動
→ 合同、対称の軸が補助線、対称の軸は線対称な2点を結ぶ直線を垂直に二等分する」
を思い出さなければいけません。
このことを(3)の図に書き込んでみると、
のようになり、見事に(2)の図(赤線部分の一部)が浮かび上がります。、
そこで問題文中の図(小問1の上の図)に、(1)~(3)を全部書き込んでみると、
のように、ピッタリはまります。
これによって、EP:PF=1:1がわかります。
また、
から、BQ:QR=1:3、BR=RA もわかります。
ですから、AQ:QB=(3+1+3):1=7:1です。
(4)は(3)を正解できれば簡単ですし、(3)が解けなければ正解は困難です。
求める部分は次の図のようになります。
正六角形を区切る直線の両端点P、点Qが
正六角形の辺上にありますから、
「延長して正三角形をつくる」
という隣辺比解法がよさそうです。
もちろん、三角形に区切って求めてもOKです。
(3)でわかった比を図に書き込み、
「隣辺比」の考え方と「正三角形の面積の6倍=正六角形の面積」
を利用すると、
となり、116÷384=29/96が求められます。
麻布中の正三角形と正六角形を組み合わせた問題には、
この問題のように「正三角形をマス目として利用する」ものがあります。
これから受験に向かう場合、
普段の演習を「形状が近いからマル」という曖昧な答え合わせから、
「マス目や目盛りを活用したフリーハンドによる正確な作図」に進化させ、
御三家クラスの難問に正解できる力を育てていきましょう。
麻布中(SAPIX 2014年度入試 合格可能性80%偏差値60)
今回は男子御三家から麻布中2014年度の入試問題をご紹介します。
入試は4教科で行われ、応募者875名、合格者398名でした。
また、合格最低点(200点満点)は105点で昨年の98点よりも高くなりました。
算数の試験時間は60分で満点は60点、
問題数は昨年と同じ大問6題(小問数13問)でした。
出題分野は麻布中でよく出される、
速さの問題、数の性質の問題、場合分けの問題、正六角形・正三角形 が
すべて出題されました。
大問1 数の性質と場合の数
大問2 平面図形(図形の転がり移動)
大問3 速さと比(電車と人のすれ違い)
大問4 比と割合の文章題(食塩水の濃さ)
大問5 数の性質
大問6 平面図形(正三角形と正六角形)
これらの問題難度をA(平易)~B~C(難問)で分類した場合、
大問1 B
大問2 A
大問3 B
大問4 B
大問5 (1)A (2)B (3)B (4)C
大問6 (1)A (2)A (3)B、C (4)C
となり、難問が多かった前年の問題と比べると、
平均的な問題、やや難しい問題、かなり難しい問題が
バランスよく出題されたように思われます。
これらの問題の中から今回は、誘導形式が美しい大問6をご紹介します。
大作ですが、問題の前半は作図問題です。
少し難しいとは思いますが、新5年生でもチャレンジ可能です。
麻布中 2014年度
大問6
下図の点線は平面を同じ大きさの正三角形でしきつめたものです。また、下図で表されるような位置に、点O、点X、点Y、直線XYがあります。
点Yを中心にして、直線XYを反時計回りに60°回転させたとき、点Xが移る先の点をZとします。以下の問いに答えなさい。
(1)点Zを答のらんに黒丸で書き入れなさい。また、書き入れた黒丸の近くにZと書きなさい。
(2)角XOZの大きさを答えなさい。ただし、下図において角JKLとはアの角を表すものとします。
(3)EPとPFの長さの比、およびAQとQBの長さの比を、できるだけ簡単な整数の比で表しなさい。
(4)四角形AQPFの面積は、正六角形ABCDEFの面積の何倍になりますか、分数で答えなさい。
さっそく作図問題から取りかかりましょう。
(1)この問題が直線XYではなく、
もし直線イYの60°回転でしたら、作図は簡単ですね。
マス目状の正三角形を上手に使うには、
問題図の直線XYを、
回転させやすい直線を辺とする平行四辺形の対角線として
回転させるといいですね。
すると、下の図のように「Z」の位置がわかります。
(2)求めなければいけない角XOZをつくるために、点Oと点Zを結んでみます。
直線ZYは(1)で直線XYを回転移動させて作図したのですから、
直線ZYと直線XYの長さは同じです。
点Oは直線XYのまん中の点ですから、
三角形OZYは60°をはさむ2つの辺の長さの比が1:2となるので、
いわゆる
「30°問題(正三角形を2つの合同な直角三角形に分割することを利用する問題)」
の直角三角形とわかります。
ですから、答えは90°です。
また、この問題は、
のように考えておくと、次の(3)が考えやすくなります。
(3)はこれまでの小問とまったく関係ないようにみえるのですが、
問題条件の「折る」から何がわかるかを考えたとき、
(1)、(2)の意味がわかるように作問された、
いかにも麻布中らしい、華麗な誘導形式の問題です。
中学の入試問題で「折る」とあれば、
「折る
→ 線対称移動
→ 合同、対称の軸が補助線、対称の軸は線対称な2点を結ぶ直線を垂直に二等分する」
を思い出さなければいけません。
このことを(3)の図に書き込んでみると、
のようになり、見事に(2)の図(赤線部分の一部)が浮かび上がります。、
そこで問題文中の図(小問1の上の図)に、(1)~(3)を全部書き込んでみると、
のように、ピッタリはまります。
これによって、EP:PF=1:1がわかります。
また、
から、BQ:QR=1:3、BR=RA もわかります。
ですから、AQ:QB=(3+1+3):1=7:1です。
(4)は(3)を正解できれば簡単ですし、(3)が解けなければ正解は困難です。
求める部分は次の図のようになります。
正六角形を区切る直線の両端点P、点Qが
正六角形の辺上にありますから、
「延長して正三角形をつくる」
という隣辺比解法がよさそうです。
もちろん、三角形に区切って求めてもOKです。
(3)でわかった比を図に書き込み、
「隣辺比」の考え方と「正三角形の面積の6倍=正六角形の面積」
を利用すると、
となり、116÷384=29/96が求められます。
麻布中の正三角形と正六角形を組み合わせた問題には、
この問題のように「正三角形をマス目として利用する」ものがあります。
これから受験に向かう場合、
普段の演習を「形状が近いからマル」という曖昧な答え合わせから、
「マス目や目盛りを活用したフリーハンドによる正確な作図」に進化させ、
御三家クラスの難問に正解できる力を育てていきましょう。