第137回 夏は受験の天王山 2014年度に向けて⑥
~2013年度の桜蔭中入試問題を題材に夏の学習準備をする~
『小問集合は基礎力定着の確認にピッタリ!』
応用自在「算数」旧版(学研)
とある地方の学習塾で受験算数に携わりはじめたとき、
先輩講師から渡された市販教材が、この「応用自在 算数」でした。
(新版の応用自在は現在も販売されています。)
以後、他の教材と組み合わせながら長きにわたって活用させてもらった
思い出の教材でもあります。
今改めてこの問題集を見てみると、
当時は「難問」として分類されていた問題が、
現在は標準的な問題の分類になっていることもあることに気づかされます。
今の受験生が習得しなければならない知識量が
かつてよりも多くなっているんですね。
知識として覚えておかなければいけない問題というのは、
「基本問題」と「特殊な問題」の2つで、
どちらも「知っていなければ解きようのない」問題のことですが、
入試で合格点を獲得するために解かなければならない「応用問題」に必要なのは、
「基本問題」の知識の方です。
実は「基本問題」は知識が無かったり、あやふやだったりしても
解けないわけではありませんが、
それでは得点が安定しませんし、問題を解く速度も不足してしまいます。
ですから、この「基本問題」を解くための知識が確実に身についており、
自由自在に扱えることがこの夏以降の学習にとって重要だといえるのです。
そしてこの知識のチェックにぴったりな問題が、
入試問題の「小問集合」問題です。
というのは、「小問集合」問題はどの中学校でも入学してくる新入生に
もっておいて欲しいと考えている知識が、多く出題されているからです。
そこで今回は2013年度 桜蔭中の入試問題を題材に知識の確認をしてみましょう。
平成25年度 桜蔭中学校入学試験問題 〔算数〕
Ⅰ(1)次の□にあてはまる数を答えなさい。
①
②
(2)ある製品を、Aさんは1日に25個、Bさんは1日に30個作ります。また、Aさんは5日間続けて働いて1日休み、Bさんは4日間続けて働いて1日休みます。この2人が4月1日(火曜日)に働き始めたとすると、この製品が合計で10,000個できるのは〔ア〕月〔イ〕日〔ウ〕曜日です。
2013年度の桜蔭中Ⅰは、計算問題と周期算の小問集合です。
この小問3問は桜蔭中の特徴をよく表している問題で、
「正確に、素早く計算をしなさい」がテーマの問題です。
中学入試において、正確で速い計算力は必須条件ですから、
この3問を何分で解けるかで、現時点の「基本問題」を解く力を計ることが可能です。
では、さっそく計算してみましょう。
(1)は分数、小数の入り交じった計算問題ですが、
それぞれの( )内では入り交じっていません。
ですから、それぞれの( )内の計算をひとつの計算問題として、
順に計算していきましょう。
分数の加減では、「整数→仮分数」という方法もありますが、
「仮分数→帯分数」という方法を選ぶと、
たし算やひき算が「桁数の少ない整数」でできるので
お得だと思います。
0.99×101 は、
0.99×(100+1)=99+0.99=99.99
がベストな計算ですが、筆算でもOKでしょう。
0.4×0.025も筆算でかまわないと思いますが、
分数または上記のような工夫があればベターだと思います。
桜蔭中は50分の制限時間内に大問5題が平均的な出題量です。
手間のかかる問題が多いという特徴を考えると、
夏休み前の時点で桜蔭中の受験レベルを求めるならば、
この計算問題ひとつあたりの時間は3分以内が目安となります。
偏差値が桜蔭中よりも低い学校のレベルを求める場合は、4分程度となりそうです。
(2)は逆算問題ですし、( )内で分数と小数が入り交じっていますから、
どちらにそろえて計算するかも考える必要があります。
( )の外側にある分数を見ると、分母が3、7で小数にできない分数ですから、
ここは分数で計算をしていきましょう。
この問題の答えは
「少し気持ち悪いなぁ…。もしかしたら計算を間違えたかなぁ?」
と思わせるような値です。
これはよく勉強しているお子さんほど、感じるかも知れません。
それでも
「いや、これで大丈夫!」
と自分の計算力を信じられるくらいになっておきたいですね。
そのためには、塾でのテストや宿題から、計算間違いを減らしておくことが必要です。
(2)は典型的な「繰り返しタイプ」の問題です。
解き方が「一本道」なので、これも知識問題だといえます。
Aさん 5日働く+1日休む → 6日が1セット
Bさん 4日働く+1日休む → 5日が1セット
ですから、最小公倍数の30日を1周期と考えて、
Aさん 30日間に25日働く → 30日間で 25個×25日=625個 作る
Bさん 30日間に24日働く → 30日間で 30個×24日=720個 作る
となり、30日間で2人合わせて1345個の製品を作ることがわかります。
10000個÷1345個=7周期あまり585個
7周期ですから、30日×7=210日 働くと 残りが585個になるわけです。
この585個を作るのに何日必要かを正確に素早く調べることが
この問題のポイントです。
そこで、いったんおよその日数を調べることにします。
Aさんは6日ごとに25個×5日=125個、
Bさんは5日ごとに30個×4日=120個 を作りますから、
のように、14日目には585個を超えていることがわかります。
11日目が終わったときにBさんが作る製品の個数は、
240個+30個×1日=270個ですから、
2人合わせて 250個+270個=520個です。
あとは順々に調べます。
12日目はBさんだけが働いていますから、520個+0個+30個=550個
13日目は2人ともが働いていますから、550個+25個+30個=605個 となり、
これで585個を超えました。
210日+13日=223日目 が求める日ですから、
4/223=5/193=6/162=7/132=8/101=9/70=10/40=11/9
223日目÷7日=31週間あまり6日目 → 1日目=火曜日 なので 6日目=日曜日
となり、11月9日 日曜日が求める答えです。(ア 11、イ 9、ウ 日)
灘中や筑駒中、御三家をはじめとした難関中ならびに上位校レベルを目指す場合、
このような「一本道」で解ける問題を夏休み前にマスターできていると、
夏休みの学習でひとひねりはいった応用問題の演習が
実力アップにつながっていくと思います。
全部の単元を塾教材や市販問題集でチェックするのが大変な場合でも、
このような入試問題の中の「小問集合」問題を活用して、
夏前までに身につけておきたい知識力の習得状況が確認できます。