第697回 男子中の入試問題 数の性質 2
「第697回 男子中の入試問題 数の性質 2」
前回から、近年の男子中の入試問題を取り扱っています。
今回は、前回の続きとして「約数と倍数」の大問形式の問題を見ていきます。
1問目は「倍数」の問題です。
【問題】3の倍数と7の倍数を次のように並べました。
3、6、7、9、12、14、15、18、21、24、…
次の太郎さんと花子さんの会話を読んで、( )にあてはまる数を求めなさい。
太郎:初めから数えて20番目の数は( ア )だね。
花子:そうね。そして、75は初めから数えて( イ )番目の数ね。どちらも、このまま数を書き続けていけばわかるわね。
太郎:そうだね。でも、3と7の公倍数の現れ方に注目すると、もっと大きな数字のことも簡単にわかりそうだよ。例えば、1001は初めから数えて( ウ )番目の数だとわかるね。
花子:今度は、3の倍数、5の倍数、7の倍数を次のように並べてみたよ。
3、5、6、7、9、10、12、14、15、18、…
この数の並びについても、同じように考えるといいのかな。
太郎:そうだね。この数の並びだと、3と5と7の最小公倍数は( エ )だから、2000は初めから数えて( オ )番目の数字だとわかるね。
(成城中学校 2024年 問題3 問題文一部変更)
【考え方】
太郎さんの「3と7の公倍数の現れ方」という部分に着目します。
1から連続する整数を3と7の最初公倍数の21個ごとに区切ると、3の倍数と7の倍数の現れ方(○)が同じになっています。
このように、1から21までの21個を1セットとすると、その中に3の倍数が7個、7の倍数が3個、最小公倍数である21の倍数が1個含まれ、全部で
3個+7個-1個=9個
の数があります。
20番目÷9個=2セットあまり2番目
ですから、20番目の数は3セット目の2番目の数です。
1セット目の2番目の数が6なので、アは
21×2+6=48
です。
75÷21=3セットあまり12
なので、75は上の表の「12」の3セット下にある数です。
「12」は1セット目の5番目の数なので、イは
5番目+9個×3セット=32番目
です。
ウも同様に考えることができます。
1001÷21=47セットあまり14
14は1セット目の6番目の数ですから、ウは
6番目+9個×47セット=429番目
です。
3と5と7はどれも素数なので、最小公倍数は
3×5×7=105 … エ
です。
1から105までの1セットについて調べると
105÷3=35(個) … 3の倍数の個数
105÷5=21(個) … 5の倍数の個数
105÷7=15(個) … 7の倍数の個数
105÷15=7(個) … 3と5の公倍数の個数
105÷21=5(個) … 3と7の公倍数の個数
105÷35=3(個) … 5と7の公倍数の個数
105÷105=1(個) … 3と5と7の公倍数の個数
ですから、1セットの中に
(35個+21個+15個)-(7個+5個+3個)+1個=57個
の数があります。
2000÷105=19セットあまり5
なので、2000は上の表での「5」の19セット下にある数です。
「5」は1セット目の2番目の数なので、オは
2番目+57個×19セット=1085番目
です。
答え ア 48、 イ 32、 ウ 429、 エ 105、 オ 1085
本問は、最小公倍数までを1セットとした、繰り返しの利用の基本が確認できる問題です。
「書き出し」と「ベン図」を使い分けられるように、練習をしましょう。
2問目は、「最大公約数と最小公倍数」の問題です。
【問題】次の各問いに答えなさい。ただし、解答は答えのみを解答用紙に書きなさい。
(1)異なる2つの整数( A )、( B )の最大公約数が6、最小公倍数が420となるとき、( A )、( B )にあてはまる整数の組をすべて求め、解答らんの表に書き入れなさい。解答らんは全部使うとは限りません。ただし、( A )にあてはまる整数よりも( B )にあてはまる整数の方が大きいとします。
【記入例】( A )=2、( B )=11のときは、次のように書きます。
(2)異なる3つの整数12、60、( C )の最大公約数が6、最小公倍数が420となるとき、( C )にあてはまる整数をすべて求め、解答らんの表に書き入れなさい。解答らんは全部使うとは限りません。
(3)異なる3つの整数( D )、60、( E )の最大公約数が6、最小公倍数が420となるとき、( D )、( E )にあてはまる整数の組をすべて求め、解答らんの表に書き入れなさい。解答らんは全部使うとは限りません。ただし、( D )にあてはまる整数は60より小さく12とは異なる整数とします。また、( E )にあてはまる整数は、60より大きい整数とします。
(巣鴨中学校 2024年 問題3 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
「逆割り(すだれ算)」を利用します。
A’×B’=420÷6=70
なので、
(A’、B’)=(1、70)、(2、35)、(5、14)、(7、10)
の4つの組が考えられます。
A’とB’は1以外の公約数を持ちません(互いに素)が、この4つの組はどれもこの条件を満たしています。
A=A’×6、B=B’×6
ですから、
(A、B)=(6、420)、(12、210)、(30、84)、(42、60)
です。
(2)
12、60、Cの3つの数は少なくとも最大公約数の6で割ることができます。
さらに、2と10は2で割り切れますが、もし、C’が2で割り切れると最大公約数が
6×2=12
となりますから、C’は2で割り切れないことが分かります。
このとき、
C’=420÷(6×2×1×5)=7
ですから、
C=7×6=42
です。
また、C’が5で割り切れると、次のようになります。
このとき、
C”=420÷(6×2×5×1×1)=7
ですから、
C=7×6×5=210
です。
(3)
3つの数の最大公約数が6なので、DとEは6の倍数です。
Dは「60より小さく12とは異なる」という条件がありますから、
6×(10より小さい2以外の整数)
です。
さらに、3つの数の最小公倍数は
420=6×2×5×7
なので、Dは
6、6×5=30、6×7=42
の3通りとなります。
また、Eは「60より大きい」という条件がありますから、
6×(10より大きい整数)
です。
さらに、3つの数の最小公倍数は
420=6×2×5×7
なので、Eは
6×2×7=84、6×5×7=210、6×2×5×7=420
の3通りとなります。
これらについて、調べます。
以上から、
(D、E)=(6、84)、(6、210)、(6、840)、(30、84)、(42、84)、(42、210)、(42、420)
です。
本問は、最大公約数と最小公倍数からあてはまる数を求める考え方が確認できる問題です。
(1)は定番問題ですから、もし正解できなかったときは、すぐに復習をしましょう。
(2)は順に調べていくことができるので、(1)が解けるときはこの問題まで正解したいところです。
(3)は、(1)、(2)を正解できたらチャレンジしてみましょう。
今回は、2024年度に男子中の入試で出された「約数と倍数」の大問形式の問題をご紹介しました。
1問目は、次回に予定してる「規則性」とも関係がありますので、間違えるようでしたら、「繰り返し」問題のおさらいをしておきましょう。