中学受験:コロナ禍の中学受験を乗り切るための3つのポイントとは
2021年も続く、新型コロナウィルスの感染拡大による中学受験への影響。
昨年は中学受験そのものが影響を受け、2021年2月の受験では、感染などによって受験できなかった子どもたちに対して追試の機会を設けた学校などもありました。
ワクチンの接種が徐々に進んでいるとはいえ、多くの人が安心して外出できる日常を取り戻すにはまだまだ時間がかかるとみられ、子どもたちの勉強をはじめ日常生活への影響はしばらく続きそうです。
この記事の公開時現在、令和3年5月も東京ほかいくつかの府県は緊急事態宣言下にあります。
ここでは、そんなコロナ禍、緊急事態の下での受験勉強について考えてみたいと思います。
2020年の感染拡大下、塾の休講で子どもたちが受けた影響は
2020年の4月に初めて緊急事態宣言が発出されたときは、多くの方はこの新しいウィルスについて知識と経験値がなく、我が子や自分の生命が脅かされるかもしれないという恐怖感とともに自粛生活を過ごしたことと思います。
急遽学校は休校措置となり、塾も映像授業やオンライン授業に切り替わりました。
仕事は自宅勤務、日々の買い物もままならないというご家庭も多かったと思います。
春に長期間の休校があったことから学校の夏休みは短縮され、本来なら夏休みという時期にも子どもたちは朝から学校に通い、夕方には塾の夏期講習会に参加するという毎日を過ごしました。
6年生の夏は「受験の天王山」と言われる通り総復習と志望校対策スタートの時期ですが、受験生のお子さんたちは本当に大変だったと思います。
この時期は、中学受験情報局にも
「塾がオンライン授業(または映像授業)になり、子どものやる気が出ず困っている」
「親もテレワークで子どもと過ごす時間が長くなり、勉強どころか親子喧嘩ばかりになってしまった」
「学校見学にいけないので、子どもの志望校を決められずにいる」
といったご相談が殺到しました。
それまでほとんどの塾では授業は対面のみ、映像やオンライン授業は2次的なものとされてきましたが、ふだんの授業もすべてオンライン配信となることで、お子さんによって合う、合わないなどが顕著に出たのです。
子どもたちにとっては、友達や塾の仲間とのコミュニケーションがなくなったことも、大きかったのではないかと思います。
逆に、オンライン授業になったことでそれまでよりも勉強がしやすくなった、というお子さんもいました。
ふだんの授業では「わからない」と思ってもどんどん進んでしまって困っていたけれど、授業が配信による動画授業になってことで「わからなかったらストップできる、繰り返し再生できる」ということでよく理解できるようになったというのです。
このように、緊急事態宣言による学校や塾の休講、授業の変化は、お子さんたちとご家庭に大きな変化を与え、対応を迫られたのが2020年でした。
親子が接する時間が長すぎる弊害
ウィルスの感染拡大や緊急事態宣言によって受験家庭が受けた影響は、授業がオンライン化されたことだけではありません。
むしろそれよりも大きいのが、緊急事態宣言や自粛によって親子が接する時間が非常に長くなったことによる影響です。
「親子が一緒にいることがいけないのですか?」
と思われる方がいるかも知れませんが、たとえ親子の時間でもそれが長すぎるといろいろな問題が起こってくるのです。
今回のパンデミックにより、あらためてそのことを実感したという親御さんも多いのではないかと思います。
「社会人」という言葉があるように、親には仕事や付き合いなど「社会との関わり」があります。
子どもにとっては学校や塾が「社会」にあたります。
外の世界で家族以外の人と接することで、家族の間では許されることでも相手が他人では許されないことがある、といった「社会性」を学ぶのです。
もちろんそれだけではなく、同年代の友達とコミュニケーションをとることでストレスを発散し、協調性や感受性を養います。
また、算数、国語、理科、社会以外にも音楽や図工、体育などさまざまな教科を習うことで、能力や可能性の幅を広げていきますね。
そのような機会が何ヶ月も失われたこと、家庭で親御さんと接する時間が異常に長くなったことで、親子間のトラブルも非常に多くなりました。
このようなことから、勉強に向かわせる前の段階で親子喧嘩などになってしまい、なかなか受験勉強がうまく進まないというお悩みが多く寄せられたのです。
コロナ禍での中学受験を成功させるための3つのポイント
そんなコロナ禍の中学受験を乗り切るために、ご家庭はどのようなことに気をつければいいか、ここでは3つお伝えしようと思います。
1. できるだけ子どもの長所を見る
親子の時間が長いと、どうしても子どもの短所や「できていないこと」ばかりが目につくようになります。
特に中学受験を目指すご家庭のお母さんは、塾の宿題など「やるべきこと」を把握しているので、どうしても「あれも、これも」という気持ちになってしまいがちだからです。
お子さんとの話題も「●●はできたの?」「■■はやった?」と勉強をしたかどうかの確認ばかりになってしまう、というお悩みも多くお聞きしています。
このようなことを避けるためにも、まずはお子さんの「できないこと」だけでなく「できていること」に意識的に目を向けることをおすすめします。
勉強の結果だけに目を向けるのではなく、その過程に注目することで、お子さんの努力や行動を認め、褒めるという方法です。
また、親としてはどうしても子どもの短所が気になってしまうものですが、それを長所として見られないか考えてみることもいい方法です。
たとえば「そそっかしい」と感じるなら、それを「機転が利く」「行動力がある」など言い替えてみるのです。
そういったことを意識していると、とお子さんへの声かけも「あなたは行動力があってすぐに取り組めるところがいいところだから、ちょっと気をつけて確認するようにすれば、もっとできる問題が増えそうね」といった前向きなものになります。
できていないことの指摘ばかりでは、お子さんのモチベーションもなかなか上がらないものです。
ぜひ親御さんの感じ方、受け止め方を変えることで、お子さんのやる気を引き出してあげてください。
2. 受験勉強に活用できる「リソース」を考えてみる
コロナ禍、緊急事態宣言や自粛生活の中での受験勉強は、とても不自由なことばかりです。
先に書いたように、塾の授業が映像やオンラインになり、お子さんによっては「一人で動画を見ていてもモチベーションが上がらない」「ふだん習っている先生じゃないからわからない」と困っているケースもあります。
親子喧嘩が多くなり、お子さんが前向きに勉強に取り組めないというお悩みもたくさんお聞きしました。
そんな不自由だらけの受験勉強ですが、その中でも「上手に活用できるものはないか」を考えてみるのは大切なことです。
塾のオンライン授業、動画授業がわからないなら、それを補うためのものがないかを考えてみるのもいいですね。
たとえばオンラインの質問受けのサービスや家庭教師、個別指導などのサービスもあります。
You Tubeの中学受験向け解説動画を見たり、お子さんに合う参考書、問題集を書店で一緒に探してみるのもいいと思います。
中学校の学校説明会や見学会など、体験イベントなどがなくモチベーションが上がらない、志望校が決めづらいといったお悩みも多くあります。
オンラインの学校説明会を探してみるのもいいですし、気になっている学校があるならとにかく正門の前まで行ってみる、ということを試してお子さんのモチベーションが上がった、というご事例もありましたので、ぜひ試してみていただけたらと思います。
このように、お子さんのモチベーションを上げて受験勉強にうまく活かせるものがないか、という視点で使えそうなもの(=リソース)を探すということもとても効果的です。
3. 親子で心身ともに健康な生活を
親御さん自身も、接するニュースなどを選ぶことで目の前の事象に翻弄されることを避けたり、感染に気をつけながらも親子で体を動かす機会をつくるなど、気持ちの面でも親子が明るく健康に過ごせるように工夫することが大切です。
親子とも、運動不足になるのも避けたいですね。
「外出を控えて」とのアナウンスは常にあるものの、現状は学校も通常通り、お仕事で外出する親御さんも多いと思います。
感染の状況によっては、再度学校が休校になったり、塾がオンライン授業になることもあるかもしれませんが、そのときにできるだけペースを崩さず学習を進められるように、ふだんから準備をしておきたいですね。
前回の一斉休校のときはどうだったかを思い出して検証し、失敗点や反省点をリストアップしてみましょう。
動画授業やオンライン授業で困ったという経験があるなら、次はそうならないよう準備を整えておくことが大切です。
お出かけができないぶん、外での学びの機会はどうしても少なくなります。
インターネットで動物園や博物館のホームページや動画チャンネルで擬似的なお出かけができないか調べたり、Google Earthでバーチャルな旅行体験や帰省ができないか、といったことを試してみてもいいと思います。
感染の拡大状況などによっては、お子さんにも親御さんにも、再度とても大きな負担がかかる状況が予想されます。
それを見越してふだんから準備しておくことで、少しでもスムーズに対応できるようにしておきたいですね。