中学受験 子どもの「子育ち」と「子育て」と学習について考える
11月25日(土)、日経DUAL主催のセミナーに登壇させていただきました。
「自分から勉強する、本当にできる子の育て方」が私のパートだったのですが、セミナー後半を担当くださった、積水ハウス総合住宅研究所の河崎由美子さんのお話が興味深く、色んな面で納得させられました。
セミナーの打合せ段階から河崎さんとは意見の共通点が多かったのですが、私とはまた違った切り口で子どもの成長を見ていて、驚きと共感の連続でした。
たとえば河崎さんによると、家を「部屋」という発想ではなく「コーナー」という発想で設計し、リビングに「みんなの作業場」をつくって、思い思いに「作業」したい人が集う、といった感覚で「いろんなところに自分の『居場所』があるものにするというのです。
「子どもの場所はこども部屋だけじゃない」というのがとても印象的でした。
確かに自分の娘達のことを思い出しても、こども部屋にいる時間よりはリビングやダイニングでうろちょろしている時間の方が圧倒的に長かったし、勉強も「そのへん」でやっていたときのほうが、子ども部屋でやっていたときよりも成績が良かったように思います。
私が中学受験において「勉強はこども部屋ではなくリビング、ダイニングで」と提唱するようになったのも、そんな記憶と深く関係しています。
家族でわいわい言いながら集う場所が、どこの家にもあると思います。
娘達が小さかった、家も相当狭かった頃の我が家にもありました。
そんな場所が子どもを育てるのだろうと、改めて感じた一日でした。
環境を工夫して「子育ち」を促そう
河崎さんの話の中で特に印象的だった言葉が「子育ち」です。
子どもに「自分で出したものは自分で片付ける」という習慣をつけさせたいとします。
私は、片付けというのは記憶力を養うのに大きな効果があると考えていて、お子さんが楽しみながら片付けできる環境を整えてあげることは、とても大切なことだと考えています。
その「片付け」に関してですが、
「片付けなさい」「こうやって、ああやるのよ」
こう教えるのは、親としてはかんたんなことです。
でも、それで子どもが自分で片付けるようになるでしょうか。
たとえば、片付けたくなるような環境を、適切なタイミングで用意してあげれば、自分で片付けるようになるきっかけになるかもしれません。
では、そのタイミングはいつかというと、子どもが「自分のものを他の子が使うのを嫌がり始める時期、つまりものの所有と秩序にこだわり始める時期です。
「自分のものは自分のもので、きょうだいなど他の子に使わせたくない」
そんな欲求が見え始めたときが、片付けを習慣化させるタイミング。
こうやって、適切なタイミングで適切な環境を用意してあげると、ああしなさい、こうしなさいと言わなければならない子育てから、一歩前進できそうです。
そんな「子育ち環境」を用意するのが「子育て」かもしれません。
身近ですぐできることから「子育て」は始まる
「うちは家が狭いから、そんなスペースはとれない」
「家をリフォームしたり、そんな大げさなことは…」
「環境を整える」というと、こうやって構えてしまう方もいるかもしれません。
でも、たとえば「リビングに子ども専用スペースをつくって、そこは親が干渉しない」といったことならすぐに始められそうです。
私と読者のみなさんは、年齢も幼少期の環境も違います。
私が子どもの頃は、毎日そのへんを駆け回ってどろんこになっていました。
「秘密基地」といったものを近所の子どもとつくり(空き地や、場合によってはよその家の庭先に潜り込んだこともありました)、そこは「子どもの秩序」によって支配されていました。
それがいいとか、今の子どもが置かれた環境が間違っているとか、そういうことが言いたいのではありません。
子どもが自分で考えて管理する場所、家の中での「いどころ」をたくさん用意してあげることは、大きな成長につながることではないかと、改めて感じた1日だったのでした。