子どもの自立思考力を高めるために、親がするべき心構えとは
子どもが、自発的に考えようとする「自立思考力」は中学受験だけでなく、これからの時代を生きていくためにも大切な力です。
大人や他者の働きかけによって受け身的に考えるのではなく、自分から考えようとする「思考の意欲」を育むために親が心構えするべきことについて、ここでは考えてみます。
「幅の広いレール」をイメージ
よく「親の敷いたレール」という表現を耳にしますが、「子どもに考え方を押しつける親」や「親の言う通りの生き方をしようとする子ども」などネガティブな意味でこの言葉を使われることが多いようです。
でも、私は少なくとも小学校低学年くらいまでは、子どものためにある程度のレールを敷き、その上をしっかり走っているかを確認するのは親の大切な役割だと考えています。
そして、そのレールはできるだけ幅が広い方がいいと思います。
電車のレールをイメージしてみてください。
レールの幅が狭いと、直線でもスピードが上がれば不安定になるし、緩やかなカーブでも車体は傾いてしまいます。
レールの幅が広いと直線でどんどんスピードを上げていくことができ、カーブでも安定した走行をすることができます。
レールを敷くのは親でも、そのレールの上をどう走るか、どこを目的にするのかを決めるのは子ども自身。
そのときに「自立思考力」が深く関わってきます。
「のりしろ」を残してあげる
子育てやしつけ、教育に熱心な親御さんほど、「幅の狭いレール」を敷いてしまう傾向が強いようです。
中学受験を考えているご家庭なら、難関校の中高一貫校に入学して、いい大学に進めば、そのままいい仕事に就くことができる、と考えてしまいがちです。
でも、これだけを期待されている子どもは、幅の狭いレールの上を走る電車のように、思うようにスピードが出せなかったり曲がり角で不安定になったりして、窮屈な思いをしているかもしれません。
私にも子育ての経験があるのですが、小学生くらいの子どもなら、大人から見れば「どうしてそんなことをするの?」というような失敗をしたりふざけたりすることがあるのは仕方ありません。
そういうときに親はついつい「いい子にしてなさい」「何度同じことを言わせるの」など、つい強い口調で注意してしまいがちです。
「いい子でいること」や「難関校に合格するような、できる子になること」だけを求め、世間の目や親の価値観だけで子どもを縛るのではなく、子ども自身が自分の走り方や将来のルートを考えるような「のりしろ」を残してあげることがとても大切です。
それが子どもの自立思考力につながっていくのではないでしょうか。
成長曲線が上向きになっているかどうか
親が選択肢や価値観を広く持っていることが、結果的に「幅の広いレール」になります。
重要なのは、今日や明日のことではなく、長い目で見て「子どもの成長曲線」がちゃんと上向きになっているかどうかです。
子どもが失敗したりまちがったことをしないか、ちゃんと勉強しているかを「監視」するのではなく、「幅の広いレールの上を子どもが気持ちよく走っているかどうか」をちょっと離れたところから見守ってあげることが、親の理想的な立ち位置です。
今をときめく先端的な研究をしている方や、それぞれの世界でいわゆる「一流」になっている方のインタビューやエッセイを読んでみると、それぞれ個性的な子ども時代を過ごされていることがわかります。
昆虫や恐竜に熱中している時期があったとしたら、それを親御さんがいい距離感で見守り、ときにはフォローをしているといった関わりをしているのです。
受験勉強の観点だけからは無駄に思えることも、実は思考の大切な栄養になります。
子どもの自立思考力を高めるためにも、幅の広いレールを敷いてあげて、その上をのびのびと走らせてあげることができたらいいですね。