中学受験家庭の親がおちいる子どもに対する「過小評価」と「過大評価」とは
中学受験を目指す家庭の場合、どうしても親と子の距離感が近くなりすぎる傾向があります。
お子さんの勉強や成績について、詳細に把握して考える機会が多くなるためです。
そして親子の距離感が近すぎると、子どもを「過小評価」するか「過大評価」するかの両極端になってしまう場合が多いようです。
ここでは、その原因や問題点などについて説明したいと思います。
中学受験家庭の子どもの評価が両極端になってしまう理由
親子の距離感が「べったり近づきすぎ」、あるいは「放置とまではいかないまでも離れすぎ」のどちらかに偏ってしまうと、様々な問題が起こってきます。
今回は「近づきすぎ」の問題について考えてみましょう。
この場合、子どもの個性や学力を冷静に判断できず、過小評価か過大評価につながりやすいようです。
子どもの状態を判断するために、学校や塾のテストを基準にしてしまうのが原因のひとつにあげられます。
テストの点数が悪いと「うちの子はぜんぜんだめだ」となってしまいがちな親御さんは少なくないようです。
でも実際に家庭にうかがって教えてみると、親御さんの印象とはまったく別のお子さんの顔が見えることがあります。
テストの点数だけでは子どもの学力は測れないので、過小評価や過大評価につなげないように気をつけたいところです。
過小評価しがちな場合
たとえば、「うちの子は算数が苦手で、ぜんぜんだめ。特に図形の問題ができない」と親御さんが言う場合でも、実際に解かせてみると、図形を視覚的に捉えるセンスに優れている子もいます。
こういう子は算数や図形問題が苦手なのではなく、ただ単に解き方を知らないだけです。
ていねいに補助線を引かせて、面積の求め方にどの図形の法則が応用できるかをじっくり考えさせると、すぐに得意になることもあります。
この「ぜんぜんだめ」と言う親御さんの、子どもに対する過小評価の原因としては、先を急ぎすぎていて、子どもが考える時間を待つ余裕がなくなってしまっていることにあります。
また、家庭でも塾でも似たようなことがあるのですが、子どもの「言葉に対する理解力」が追いついてない場合もあります。
塾で大勢の子どもに教えていると気づくのですが、小学校4年生くらいまでは、講師の言葉のスピードについてこられない子どもが半数以上います。
もちろん、講師がゆっくりわかりやすく話すように意識していてもです。
ひとりずつ、じっくり説明すればすぐに理解できるのですが、塾では一度に大勢の子どもたちに教えるので、どうしても限界があります。
理解力がついてこない子どもにこそ、たっぷり時間をかけたいという思いが強くなったことが、私が家庭教師として独立するきっかけのひとつでもあります。
過大評価しがちな場合
また、「学校のテストはいつも95点以上をとっているから、うちの子なら難関校に合格するのではないか」という過大評価から中学受験を考える親御さんもいます。
もちろん、その予想や希望どおりに進むこともありますが、冷静に考えることもないまま親御さんの思い込みだけで子どもの塾通いを始めてしまうと、途中で挫折してしまうこともあります。
特に難関校を受験する子どもは小学校でのテストは常に満点に近いのが当たり前で、それに加えて知識だけではなく「自分で考える力」が問われるような問題が出るので、完璧にできる子どもたちの中で競っていくことになります。
小学校低学年までの学校のテストは、暗記や記憶だけでなんとかなる問題がほとんどです。
また、宿題も進学塾ではかなりの量の予習・復習課題をこなしていくことになります。親御さんの過大評価で中学受験に踏み切ってしまうと、あとで大変な思いをすることになるので、適度な距離感を持って冷静に判断をすることが大切です。
本気で中学受験を考えるなら、子どもが「どうしてこう解くのか」「なぜ解き方をまちがえたのか」といったことを自分で考えられるような、自立思考を促してあげることが大切です。
近くで勉強を見るときは、子どもが「どうして?」「なぜ?」という視点を持てるような学習ができるように仕向けてあげられるといいですね。