中学受験「中学受験は貴重な子ども時代を犠牲にしてしまう?」と悩む親御さんへのアドバイス
「中学受験に興味はあるけれど、子どもにはいろいろなことに好奇心や興味を持ってほしい」「貴重な時間を無駄にしてしまうのでは」と悩む親御さんもいるようです。
今回の記事は、中学受験は貴重な子ども時代を無駄にしてしまうのかどうかについて、考えてみたいと思います。
中学受験の塾通いで失ってしまうもの
近年、首都圏では特に中学受験をする子どもの割合が増えているといわれています。
2019年の文部科学省の調査によると、私立中学に通う子どもは全都道府県平均で全体の7.4%。地域によって大きな差があり、東京都では25.0%の子どもが私立中学校に通っているそうです。
また、こちらも地域によって差はありますが、中学受験のための塾に通う子どもの数は少なくありません。
中学受験を視野に入れて進学塾に通わせることになると、週2、3回は通塾することになります。
それだけでなく、塾のない日も塾の宿題や中学受験の学習に追われる日々が続きます。
子どもが自由に遊べる時間や家で過ごす時間は、確実に減ってしまいます。
「そこまでして中学受験をする意味があるのか」
「子どもに勉強ばかりさせるのはかわいそう」
「まだうちの子は精神的に幼いからきっと無理だろう」
そんな風に考える親御さんもいると思います。でも、本当にそうなのでしょうか?
小学校高学年になると放課後に時間を持て余す子も多い
幼児や小学校低学年のうちはまだ想像できないかもしれませんが、小学校高学年になると、多くのご家庭でお子さんの放課後の過ごし方に悩んでいるという話を聞きます。
小学生の子どもがいる共働きのご家庭では、子どもを学童に預けることが多いと思いますが、地域によっては4年生までしか受け入れてくれない学童もあります。
受け入れてくれたとしても、子どもが学童に行きたがらないパターンも多く、「自由に過ごしたい」「友達と好きな時間に遊びたい」と考える子も多いようです。
そこで親御さんは「時間を持て余すなら、せめて習い事でも」と考えるのですが、毎日習い事の予定を入れるのは、経済的にも予定の管理も大変です。
また、放課後に友達と公園でのびのびと遊ぶ子どもも確かにいますが、現実的には近所や誰かの家で、ひたすらゲームをしていることも多いのです。
そもそも都会には自由に遊べる公園が少なく、ボール遊びが禁止されていたり、残念ながら子どもの声がうるさいなどの騒音問題があったりと、昔のように子どもが自由に遊べる環境は確実に少なくなっています。
「子どものうちは思い切り外で走り回ってもらいたい」
そう考える親御さんもいますが、現実的にそれは難しいと言わざるを得ないのが現状です。
長期休みは生活が乱れる子も少なくない
夏休み・冬休み・春休みの長期休暇は、さらに子どもの時間の過ごし方に悩んでいるという話を、多くの親御さんから聞きます。
共働きの場合、両親が外に出ている時間が長いので、その時間を持て余してしまうのです。
夏休みだと、猛暑で外に出られずクーラーの効いた部屋で1日中ゲームをしている、友達がみんな塾の夏期講習や習い事で忙しくしていてやることがない…など、結局多くの時間を何をするでもなく1人で過ごす子どもも少なくありません。
「のびのび遊ばせたいから塾に行かなかったのに、友達がみんな塾へ行っていて遊べない」
「勉強以外のことに夢中になってほしいのに、結局はゲームばかりしている」
「これなら塾に行かせておけばよかったけど、もう遅い」
こんな声もよく聞きます。
子どもが外で駆け回ったり、夢中になれることを自分で見つけるのは難しい時代なのかもしれません。
むしろ、勉強をする中で自分の得意なことや好きなことを見つけ、それに夢中になる子もいます。
そういう意味では、塾の勉強も子どもにとっては好奇心のきっかけになるともいえる側面を持っています。
多くの子どもは、最初は「塾が楽しい」と言います。
学校の先生とはまったく違うタイプのおもしろい先生がいたり、大好きな昆虫のことをなんでも知っている友達ができるなど理由はさまざまですが、刺激も多く、楽しんで塾に通う子が多いようです。
6年生になると受験色が強くなり、最初の「塾が楽しい」という純粋な気持ちは続かないかもしれませんが、ひとつの目標に向かってコツコツと学習を積み重ねる、親子で同じ目標に取り組むなど、塾通いには別のメリットもあります。
中学受験と習い事は両立できる?
他に親御さんの声として多いのは、「塾に通い始めたら、子どもが好きな習い事をやめなければいけないのではないか」というものです。
たしかに、中学受験の塾に通い始めたら、子どもの日常は大きく変化します。
過去に「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」のメルマガ会員を対象に実施したアンケートによると、「塾以外の習い事を6年生の夏以降も続けさせる」と答えた方が36%もいました。
次に多かったのが「5年生の終わりまで」で22%、次の「6年生の夏まで」は15%でした。
私の経験から言うと、「5年生いっぱいまで習い事を続けて、6年生になったらやめる・お休みする」というご家庭が多いように思いますが、これは、地域などによって差があるかもしれません。
子どもがどのタイミングで自由な時間を持ちたいか
6年生でお休みして、受験が終わったら習い事や趣味を再開する子もいますし、中学校入学と同時に再開する子もいます。
そういったご家庭の親御さんが言うのは「高校受験がない分、中学校で習い事に打ち込める」という声です。
特に首都圏では、近年ますます高校受験を取り巻く状況が厳しくなっていて、中学1年生から塾通いを始める子も多いようです。
中には小学校高学年のうちから高校受験を視野に入れて塾に入り、先取り学習を進める子もいます。
子どもの性格や地域の環境、家庭の方針もありますが、遅かれ早かれ子どもが多くの時間を受験勉強に割くことになるなら、まだ親がサポートできることが多い小学校の時点で受験を経験しておく、というのもひとつの方法だと考えるご家庭も少なくありません。
子どもにどのような時間の過ごし方をしてほしいかは、ご家庭によってさまざまな
考え方があります。
小学校のうちにのびのび過ごさせることができる環境があるなら、それもいいと思いますし、中学高校で才能を開花させる子ももちろんいるでしょう。
どの時間を子どもが受験勉強に割くのか、どのタイミングが最適かは、それぞれの子どもの生活やご家庭の方針で決めるべきだと思います。
そういう意味では、「中学受験は時間を無駄にしてしまう」と一概に言えないのではないでしょうか。
これから中学受験を検討しようというご家庭は特に、上記のことを考慮いただき、お子さんとご家庭に合った選択肢を選んでいただければと思います。