就学前の幼児教育について。小学校入学までにやっておくべきことは
教育熱心なご家庭では、子どもの就学前の教育についても関心が高く、学習系の習い事を考える親御さんも多いようです。
でも実は、長年たくさんの中学受験生を教えてきた中で、過剰な幼児英才教育を受けた子どもの指導に苦労することがあります。
では、幼児教育はどの程度必要なのでしょうか。小学校入学までにやっておくべきことについてお伝えします。
「直感的判断力」は受験勉強になじまない
幼児教育では、フラッシュカード教育などで瞬間的な記憶力・判断力をトレーニングするものが多いのですが、これは、じっくり考えて答えを出す中学受験の勉強になじみません。
図形問題などをやらせてみるとわかるのですが、幼児教育で直感的判断力をトレーニングした子どもは、問題文をしっかり読み込まずに、書かれている図をパッと見るだけで答えを書いてしまうようなことがあります。
なんとなく直角に見える、二等辺三角形に見えるなど直感に頼ってしまい、根拠となる理由を見つけ出して考えるという中学受験の算数の学習になじみにくいのです。
こんな解き方をしていては、成績も伸びにくくなってしまいます。
個人的な見解としては、現在行われている幼児教育の中には、思考力を養うという意味では、弊害になってしまうものもあります。
幼児期の英才教育については、その内容や目的などを慎重に考えて取り組むようにしてください。現状では、学力向上の効果という意味では、疑問があると言わざるを得ません。
小学校入学までにやっておくべきこと
では、小学校入学までにどの程度の学力があったらいいのでしょうか。
小学校の入学前説明会などでは、「自分の持ち物がわかるように、自分の名前だけ読めたらいい」と言われるようですが、正直、それでは少し足りないかなと思います。
ひらがなは、できれば入学時に全部読めるようになっていたほうが、楽なスタートがきれるでしょう。
でも、そのためにわざわざ学習系の習い事をさせなくてもかまいません。
家で子どもに絵本を読み聞かせをする、一緒に本を音読するなど、無理のない方法でひらがなに親しんでおきましょう。
最近は、就学前にひらがなが全部読み書きできる子も多いですが、焦らず、それぞれの子どもに合った進め方をしてくださいね。
算数では、簡単な足し算や引き算ができるようになっているのが理想です。
1年生のうちは、おはじきなどを使った数の構成を学ぶことから始まるので、繰り上がりがない単純な計算ができるだけでかまいません。
これも幼児教室などに通わせなくでも、家庭でのおやつの時間に、みかんやクッキーの数を遊び感覚で足したり引いたりすることからも身につけることができるでしょう。
日常生活の中で学べることがたくさんある
ほかにも、子どもの就学前にご家庭でできることはたくさんあります。
特に算数の学力の根幹となる計算力は、まずは数に親しむことから始まります。
日常生活の中で数字に触れる機会をたくさんつくってあげましょう。
お風呂でお湯につかって100まで数えるのもいいでしょう。
100まで数えられるようになったら、100から99、98、97…と逆に数えてみたり、1、3、5、7…と奇数だけを数えてみるなど、いろんなパターンに挑戦させてみましょう。
また、家にひとつはアナログ時計を置くようにして、幼児期から時計に慣れさせてあげてください。
「6時になるまで、あと何分あるかな?」「あと15分で何時になる?」など、クイズ形式で楽しく時計に親しんでおくことで、のちの「速さ」の学習に役立ちます。ですので、リビングの時計は文字盤にちゃんと数字があるものを選ぶようにしましょう。
「補数」の概念も遊び感覚で身につける
あといくつで10になる、という補数の概念も、低学年のうちに身につけておきたいですね。
10円玉を10枚用意して、「10円玉があと何枚で100円になるか」を考えることは、補数感覚のトレーニングになります。買い物をしてレジでお金を支払うときに、「できるだけお釣りの小銭を少なくするにはどうすればいいのか」を考えるのも、数に親しむいいチャンスです。買う品物が少ないときは、子どもに自分で支払いをさせてみてもいいかもしれませんね。
時々、習い事についての相談で「そろばんは計算力をつけるのに役立ちますか?」という質問を受けることがありますが、確かにそろばんは十進法の感覚を身につけるには最適です。
繰り上がり、繰り下がりの感覚がしっかり身につくという意味では、計算力がつく習い事といえるかもしれません。
受験勉強が本格的になる高学年までにどれくらいのレベルを目指すのかを考えてから、習い始めるといいでしょう。
小学校入学までにご家庭で数字に慣れておけば、計算力は順調に伸びていきます。
学習系の習い事をたくさんさせるより、まずは家でできることから始めてみてはいかがでしょうか。