読書感想文のポイント 「本の紹介」ではなく「自己紹介」を意識して
今回は、読書感想文の書き方のポイントについてご説明します。
まずは、発想をガラリと変えて「読書感想文は自己紹介なのだ」ということを子どもに説明してあげてください。
ここでは、読書感想部の書き方のポイントについて、詳しく考えてみたいと思います。
読書感想文は、国語の記述式の練習に最適
国語の指導をしていてよく相談を受けることのひとつが、読書感想文の書き方です。
夏休みの宿題などで読書感想文が求められ、親がどう手伝えるのか、そもそも本の選び方がわからないという悩みをよく聞きます。
入試問題としては「あなたの感想を書きなさい」という設問は、現状ではほとんどないと言ってもいいでしょう。
こうした問題は評価や採点が難しいというのもその理由のひとつです。
しかし、今後「自分の考え」や「自分なりの感想」をきちんと表現していくことが求められていく可能性はあります。
公立の中高一貫校の場合、必ず作文問題が出され「あなたなら相手にどう説明しますか」「資料の文章で筆者が述べている考え方を要約したうえで、あなたの考えを説明しなさい」といった指示に対して、300〜600字で記述するよう求められます。
公立中高一貫校の取り組みは文科省の方針の方向性を示すものですから、このような流れは私立中学を受験するにしても気にかけておく必要があります。
そういう意味では、近い将来、中学受験の国語全般に作文力が求められるようになるとも言え、読書感想文はそのいい練習素材になるでしょう。
読書感想文は、「自己紹介」
さて、読書感想文のよくある失敗のひとつとして、書くことが思いつかず、本のあらすじを延々と書いてしまう、ということがあります。
「この物語には、こういう登場人物がいて、それからこうなって、結論はこうなります」と本の内容の紹介に8割ほどを費やしてしまい、最後の数行で「こういうところに感動しました。
僕も登場人物のようにがんばりたいです」と感想を述べる、という読書感想文は典型的な失敗例とも言えるでしょう。
でも、読書感想文は本の紹介ではなく、実は「自己紹介」なのです。
というのも、本との出会いをきっかけとして、自分の体験や考えを表現することが、読書感想文の重要なポイントです。
「読書感想文は、本を紹介するものだ」と勘違いしていると、どうしてもあらすじを追うことがメインになってしまいがちです。その結果、肝心の感想が「おもしろかった」「感動した」となってしまうのです。
ぜひ、発想をガラリと変えて「読書感想文は自己紹介なのだ」ということを、まず子どもに理解させてあげてください。
その本を読むことによって、これまで自分が体験してきたことがベースとなった考え方がこう変わった、など、自分の考えをプレゼンするのが読書感想文なのです。
読書感想文を書くための流れ
実際に、家庭で簡単にできる読書感想文作成のポイントをご紹介します。
まずはお母さんやお父さんが、声かけをすることによって読書感想文の「材料」を集めることから始めてください。
そのときに注意したいのは、「こう思ったんでしょ」「こうだったんじゃないの」など、誘導尋問をしないようにすることです。たどたどしい言葉でもかまいませんので、子どもの言葉や気持ちを拾ってあげることが大切です。
おおまかな流れとしては以下の3つの流れです。声かけの参考にしてください。
材料を集める
「なぜこの本と出会ったのか」
どこでこの本を知ったのか
題名を見てどういう印象を受けたか
読む前はどんな本だと思っていたか
「本の内容について」
何についての本なのか
最後はどうなったのか
何について作者が考えた本なのか
「本の内容と自分の体験について」
この本と似たような体験をしたことがあるか
本を読んで思い出したことはどんなことか
自分は主人公と同じようにすると思うか
筆者の考えと同じか、もしくは違うのか
「本を読んだあとの変化」
読み終わって意外に思ったことは何か
新しく「そうだったのか!」と発見したことはあるか
これから自分がこうしてみよう、と思ったことは何か
材料をふくらませる
上記の1に対する子どもの答えの中で、「ここはふくらませられそうだ」という部分に絞って質問します。
おもに、自分の体験との共通点や相違点、自分の変化や新しい発見についてふくらませるといいのです。
ここで、全体のあらすじをこまごまと子どもに質問しないようにしてください。
あくまで子ども自身の経験について「それはいつ?」「誰と?」など具体的なことや、「その前後にあった出来事」「そのときの気持ち」など、本の内容から離れたことを聞くようにするといいでしょう。
材料を選んで並べる
このときのポイントは、まず読書感想文の冒頭で「つかみ」をうまくつくることです。本の中で印象に残ったシーンや会話、その場面に出会ったときの自分の驚きや強い疑問などについて書くのです。
そのあとに本との出会いと内容の紹介をして、さらに印象に残った場面について詳しく書きます。そして自分の過去の体験や未来に向けての考えを書き、最後に本との出会いの感謝などで締めます。
これだけでも質の高い感想文になるはずです。
ぜひ子どもに上記の声かけをして、いい箇所をふくらませ、その順番を入れ替えてみてください。
完成度の高い読書感想文になるだけでなく、記述問題対策にもなります。