中学受験情報局『かしこい塾の使い方』

【中学受験の成功法則!?】絶対に外せない11のチェックポイント

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公開: 最終更新日:2021年07月21日

中学受験は年々難しくなっており、公教育だけでの志望校合格は難しくなってきています。このため、進学塾や家庭教師などを活用する必要がありますが、多くの方はその判断基準を持っていません。あなたはいかがですか?

以下では、大手塾や個別指導塾、家庭教師の選び方と活用の仕方について、11のチェックポイントにまとめています。

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Point1 中学受験に大手進学塾は不可欠!?

いきなり結論からになりますが、中学受験をするなら、塾通いは必須です。中には塾に行かず、通信教材などを利用しただけで難関校に受かったという子もいますが、それはごくまれなケースであまり参考になりません。

また、お父さんお母さんが中学受験経験者で、「自分のときは塾に行かなくても合格できた」「6年生になってせいぜい1年通っただけだった」などおっしゃる方もいますが、今の中学受験はお父さんお母さんの時代のものとは大きく変わっています。

今の時代、中学受験をする以上、受験を専門にした進学塾の助けを借りることは避けられません。

では、なぜ中学受験には塾が必要なのでしょうか? 小学校で習う勉強を家庭でしっかり学習するだけではダメなのでしょうか?

・・・・・・残念ながら、それではダメなのです。

なぜなら、中学入試問題は、小学校で勉強する内容と大きくかけ離れているからです。

でも、小学生が習うべき学習範囲内から出題されるのでしょう?

確かに、名目上はそうなっています。しかし、その中身はかなり発展的なもので、小学校の授業がしっかり理解できている子でも、そのための勉強をしていなければ、とても太刀打ちできません。

小学校の授業というのは、「ひとつの考え方にそって実行すれば答えが出る」という非常に単純な作業のくり返しで、いわゆる基礎訓練のようなもの。こうした基礎学習はもちろん大切で、決して侮ってはいけませんが、中学入試にはそれらは出てきません。

中学受験の入試問題では、小学校で習う基礎をさらに発展させた問題や、それらの知識を得た上で、考えさせたり、自分なりの表現で書かせたりする問題が出されます。こうした発展的な問題は、学校の授業では習わないため、そのための対策を十分取らなければ、とても解くことができません。学校のテストでいつも満点を取っている子でも、中学受験では「受験のための勉強」をしなければ合格できないのです。

でも、所詮、小学生が解く問題でしょう?

そう思うお父さんお母さんは、まずは書店の中学受験コーナーに行って、どこの学校でも構いませんから“赤本”と呼ばれる過去の入試問題を見てみてください。

どうです? あなたのお子さんは解けそうですか?

中学受験をするなら、それを専門とする進学塾に通わせるのがいいと感じられると思います。

ひとくちに塾といっても、大手進学塾、地域の中小塾、個別指導塾、教科ごとの単科塾など、さまざまな塾があります。けれども、中学受験に関していえば、大手進学塾をおすすめします。なぜなら、大手進学塾には受験に必要な学習カリキュラムが整っているからです。

一般的に中学受験の準備が始まるのは、小学3年生の2月からと言われています。それは、大手進学塾の中学受験コースがスタートするのが、その時期だからです。大手進学塾には、そこから小学6年生の入試本番までの3年間、平日の基幹授業、土日の学習、春・夏・冬休みの特別講習、志望校別特訓講座、各種テストなど、「いつ何を勉強すれば合格できるか」を念入りに考え抜いた「中学受験に合格するためのカリキュラム」が用意されています。また、多くの学校の入試問題の傾向と対策のノウハウも蓄積しています。

つまり、塾が用意しているカリキュラムに沿って学習をしていけば、モレなく、ダブリなく、効率的・効果的に受験勉強を進められるようになっているのです。

また、大手進学塾は、中学受験のためのテキストやテストの作成もしています。そのための研究に力を入れているため、常に最新の入試動向を把握しています。こうしたことができるのは、やはり多くの人材を確保している大手企業ならではの強みです。

先生の指導力や人間力でいえば、塾の大きさはあまり関係ありません。むしろ、小規模な塾の先生の方が、生徒一人ひとりに対し熱心に向き合ってくれるかもしれません。しかし、ことカリキュラムにおいては、大手進学塾を超えるものはありません。

同じ受験でも、高校受験や大学受験であれば、学校の延長線上に入試があるため、学校の授業で学ぶ勉強と入試問題の内容が大きくかけ離れてはいません。ですから、塾の規模に関わらず、学校で学んだ内容を地道にコツコツ勉強していれば、対応は可能です。または、塾に行かず、家庭学習だけで合格を手に入れることも決して不可能ではありません。

しかし、中学受験においては、試験の内容が発展的な問題であるため、それに特化した塾で、その塾のカリキュラムに沿って勉強をすることが、最もかしこい選択といえます。

Point2 大手進学塾に通うメリットとデメリット

大手進学塾をおすすめする理由の1つが、中学受験に合格するための学習カリキュラムが完成されているということです。大手進学塾には、過去の受験生たちの膨大の数のデータがあります。また、一般にはあまり知られていませんが、学校とのパイプも強く、最新の情報を手に入れやすいという強みもあります。中学入試の出題傾向は毎年少しずつ変わっていきますが、こうした変化をいち早くキャッチし、それに応じた対策を取ることができるというのも、大企業である大手進学塾だからこそできるものです。

大手進学塾に通うメリットは他にもあります。

大手進学塾では、講師を採用する際に厳しい能力テストを実施しています。そして、採用後も指導力や保護者からの評判などを査定したり、指導力向上のための研修を行ったりして、講師力を高めることに力を入れています。そのため、大手進学塾には、講師の能力がある一定のレベル以上に保たれ、均質化されているという安心感があります。

ただし、それは教科指導力に関していえることであり、生徒一人ひとりに対してしっかり向き合ってくれるかといえば、そうとも言えません。なぜなら、大手進学塾の講師は指導力のある一斉授業はできるけれど、生徒一人ひとりのフォローまではできないからです。

大手進学塾にとって最も大切なことは、「何人の生徒を難関校へ合格させたか」という実績です。塾の入口や広告のチラシを見てください。どこの塾でも「灘中学 合格○名」「開成中学 合格○名」とその数を競い合っていますよね。

大手進学塾では、「何人の生徒をそれぞれが志望する学校へ入学させたか」ではなく、「何人の生徒を難関校へ合格させたか」が最も重要であり、それが塾にとっての生命線となっています。極端な話になりますが、偏差値50レベルの中学に100人の生徒を合格させるよりも、偏差値70以上の難関校へ5人の生徒を合格させる方が、塾にとっては“お手柄”になるのです。

というのも、塾はその組織が大きくなればなるほど、安定した経営基盤を築かなければならないからです。駅前の好立地の校舎、優秀な講師の確保、毎年の入試データの分析やテキストの作成には多大な資金が必要になります。そのため、それらの資金の源となる「生徒数」を確保することが、塾にとっては最優先事項になります。そして、生徒数を確保するために最も有効な武器が、「難関校への合格実績」なのです。

おそらく、みなさんも塾を選ぶ際に、お子さんが目指すかどうかはさておき、「難関校への合格実績」をまったく気にしないということはないでしょう。まして小学3年生の段階では、まだ子どもの伸びしろは未知数ですから、その塾の難関校の合格実績を見て、「この塾に通わせれば、うちの子も合格できるかもしれない」と期待してしまうものなのです。

言い方があまりよくありませんが、大手進学塾は成績が良い子ほど輝ける場所です。大手進学塾ではテストの結果によって、クラス分けがされます。なかには、席順までが成績によって決まってくる塾もあります。ですから、負けず嫌いで、「負けたくない」という気持ちを学ぶ気力に変えられるタイプの子には向いています。しかし、そうでない子にとっては、大手進学塾というのはとてもシビアで、精神的な負担が大きい場所でもあるのです。

しかし、どんなに優秀な子であっても、わずか10歳~12歳の子どもです。ときにはスランプに陥ることもあるでしょう。そんなときに支えとなるのも、この環境にあります。

中学受験をする場合、わずか10歳を過ぎたばかりの子が、遊びたいのを我慢しながら、3年もの間、受験のための勉強をしていかなければなりません。それは、本来、小学生に対して不自然なことを強いるものです。ですから、ときにはある程度の圧力が必要になります。大手集団塾はその圧力を自然にかけてくれる場所です。遊びたいな、休みたいな、でも、みんなは頑張っている。みんなも頑張っているから、自分も頑張ろう。そういう気持ちにさせる雰囲気が大手進学塾にはあります。

けれども、なかには頑張っても成績が伸びず、自分に自信を持てなくなってしまう子もいます。大手進学塾で成績が一向に上がらなかったり、塾に行くのを嫌がり始めたりしたら、地元の中小塾や個別指導塾へ転塾を考えてみてもよいでしょう。また、大手進学塾で苦戦しながらも、なんとか頑張れるという子は、塾に通いながら個別指導塾を併用し、集団塾についていけるように学習体制を修正する方法もあります。

大手進学塾に通うことを勧めるもう一つの理由は「志望校別特訓」という学習カリキュラムが用意されていることです。そしてこの「志望校別特訓」を受講できることが、大手進学塾に通う最大のメリットといってもいいでしょう。というのも、この「志望校別特訓」こそが、各塾が教務力において最もしのぎを削っている講座だからです。

「志望校別特訓」は、各塾によってスタートの時期が若干異なりますが、6年生になってから受講します。しかし、この講座は希望すれば必ず志望校の特訓コースを受講できるというものではありません。

最難関中学を受験する場合はもちろん、難関中学と呼ばれる有名中学などを受験するのであれば、その学校の特訓コースの受講は欠かすことができません。これを受講したからといって、必ず志望校に合格できるというわけではありませんが、受講できない場合は、合格の可能性はかなり低くなります。

なぜなら、難関校の志望校別特訓コースには、資格審査や受講に関するガイドラインなどがあり、受講できないということは、塾側がその学校の対策授業に対応できる学力がついていないと判断したということだからです。

ですから、大手進学塾に入ったら、行きたい学校の「志望校別特訓」を受講できるレベルまで塾内の成績を上げることを目標に勉強していかなければなりません。各塾の「志望校別特訓」については、後の章でも詳しく説明をしていきますが、中学受験のゴールを第一志望校合格とするのであれば、大手進学塾に通う最大のメリットは、合格の近道である「志望校別特訓の受講にある」と知っておきましょう。

Point3 入塾テストで上位に入ると後々まで有利になる

大手進学塾の中学受験のカリキュラムは、小学3年生の2月から本格的にスタートします。なぜ2月からなのかといえば、殆どの中学校の入試が1月から2月上旬にかけて行われ、実質的な「学年がわり」が2月になるからです。

学校と違って塾は、月謝を払って勉強を教えてもらうところです。月謝によって利益を得るという考えからすれば、塾にとって生徒はお客様で誰でも受け入れるべきです。ところが、大手進学塾には入塾前にテストがあり、その結果によっては入塾できない場合もあります。

入塾テストの目的は、「入塾そのものの可否の判断」と「クラス分け」です。一般に大手進学塾の集団クラスは、1クラス15~30人で運営されます。クラスの数は教室の規模によってさまざまですが、中学受験が盛んな地域のターミナル駅にある塾では、1学年で10クラス以上ある校舎もあります。そのクラス分けを最初の入塾テストで行うのです。

各塾の新学年に向けた入塾テストは、1月中に行われます。テストは国語と算数の2教科です。入塾テストの対策については、後の章でも詳しく説明しますが、ここでぜひ知っておいて欲しいことがあります。

それは、大手進学塾では、上位のクラスで入塾しておいた方が、後々まで有利ということです。

大手進学塾の授業は、中学受験のために作られた学習カリキュラムに沿って進められます。テキストは、SAPIXなら『デイリーサピックス』や『デイリーサポート』、日能研なら『本科教室』や『栄冠への道』など、四谷大塚なら『予習シリーズ』といったように各塾のオリジナルテキストを使用します。

各テキストの内容は、予習をすることが前提となっているものだったり、予習は一切せず、授業で習ってからの復習を第一に進めていくものだったりとそれぞれに特徴がありますが(各塾のテキストについては後の章で詳しく紹介していきます)、ひとつだけ共通していることがあります。それは、塾のテキストというのは、成績のよい子どもを対象に作られているという点です。

先にも述べた通り、多くの塾にとって大切なことは、「何人の生徒を難関校へ合格させたか」という合格実績です。そのため、塾にとって一番ありがたいのは、難関校に合格できる頭脳や学力を持った子どもがその塾へ通ってくれることなのです。ですから、テキストをはじめ、大手進学塾のすべてのカリキュラムは、そうした成績優秀な子どもを満足させるための内容になっています。

つまり、塾のテキストは誰もが理解できるような作りにはなっていないのです。授業はテキストに沿って進められていきますから、その内容が理解できなければ、不完全なまま授業を受け続けることになります。そうなると、家庭での丁寧な復習が必須になります。しかし、塾によっては宿題が大量に出されるところもあり、多くのお子さんはそれをこなすだけで精一杯になってしまい、授業の復習もテスト対策もできず、成績が伸び悩んでしまうのです。

これが大手進学塾の現実です。そうならないためには、まずは入塾テストで好スタートを切ることが大切なのです。

Point4 大手進学塾は学年が上がるごとに学習内容がハードになる

では、実際にお子さんが大手進学塾に通うようになったら、どのような生活になるのでしょうか?

首都圏の四大受験塾、SAPIX、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミーの4年生から6年生の時間割を比較しながら、解説していきましょう。

受験勉強がスタートする4年生の時間割は、平日の通塾は週2日と比較的余裕があり、「これならうちの子も続けられそう」と、中学受験をするかどうか曖昧な状態のまま、とりあえず入塾させるというご家庭もあります。しかし、中学受験塾は学年が上がるにつれて、授業日数が増えていきます。5年生になると週3日、6年生になると週4日~6日、秋以降に志望校別特訓が始まると入試直前までほぼ毎日塾に通うことになるのです。

4・5年生でも塾がない日は宿題がありますし、各種テスト対策もしていかなくてはなりません。つまり、学年に関わらず、ほぼ毎日受験のための勉強をしなければならないという状況になります。

つまり、「うちは中学受験をさせる」ということを、ご家庭の方針としてしっかり立てた上で塾に通わせないと、結局時間を無駄に過ごしてしまうことになる可能性が高いのです。

では、各学年の塾の学習プログラムはどのようになっているのでしょうか? 一般的な大手進学塾の3年間の学習内容を見ていきましょう。

4年生では、4教科すべてにおいて、いわゆる基礎作りを重視する内容の授業が進められます。国語なら物語文を中心とした読解力の基礎、算数なら計算力や特殊算といったトレーニングを積むという学習が中心です。理科や社会は実験や観察といった身体感覚を伴った学びや、身の回りの科学や暮らしなど、子どもが比較的理解しやすいものを学習するので、多くの子どもは4年生の間は大きく落ちこぼれることはありません。

ところが、5年生になると、4年生からの基礎学習の積み重ねに加え、応用学習に入り、応用力や思考力が求められるようになります。すると、それまで暗記だけで乗り切って来た子は対応できず、塾の勉強が難しく感じるようになります。

また、大手進学塾では5年生の間に、社会の公民を除いて受験に必要なすべての分野の学習を終わらせるため、学習量が大幅に増えます。通塾が週3日に増えるだけでなく、宿題の量やテストの回数も増えていくため、4年生の約1.5倍もの学習量をこなさなければいけないことになります。

これは、子どもにとっては大きな負担です。そして、多くの子どもがここでつまずいてしまうのです。そうならないためには、常に先を見据えて計画を立てて学習する必要があります。

塾のカリキュラムでは、2月を境に新学期が始まります。つまり、学習量が一気に増えるタイミングは、4年生の2月です。それをあらかじめ知っておけば、その少し前から家庭での学習量を少しずつ増やすなど準備ができます。こうした準備をしているかいないかで、5年生からの成績が大きく変わってきます。これが中学受験の最初の壁で、ここですぐに切り返しができないと後々まで苦労することになります。

6年生になると、5年生までに習った内容やその発展問題をひたすら演習します。9月からは志望校別特訓も始まり、学習量はさらに増えていきます。各学年の学習対策は後の章で詳しく述べていきますが、大手進学塾の中学受験のカリキュラムは、学年が上がるにつれて学習量が増え、難易度が上がりハードになるということを、中学受験を始める前からきちんと知っておく必要があります。

Point5 習いごとはいつがやめどき?

中学受験をスタートする段階で悩むのが、低学年の頃から続けてきた習いごとをどうするかです。

大手進学塾の中学受験の学習カリキュラムは、学年が上がるにつれて時間的にも内容的にも大変になります。それをあらかじめ知っているご家庭では、中学受験の勉強がスタートする4年生を境に習いごとを整理し始めます。例えば、大手進学塾の入塾に合わせて、小学校の低学年から通っていた公文式や英会話教室をやめたり、週2回通っていた水泳を週1回に変えたりしているようです。

受験勉強がスタートする4年生の段階では、塾通いは週2日と比較的ゆるやかなため、勉強系の習いごとは、中学受験にも役立つかもしれないとそのまま続けるご家庭もあります。しかし、近年、英語入試を導入する私立中学一貫校が増えてはいるものの、現時点で多くの学校では受験に英語は必要ありませんし、公文やそろばん教室もある一定レベル以上の計算力がなければ、あまり効果的とはいえません。それならば、塾のない日は家庭学習に力を入れるか、塾通いの疲れをとるためのリフレッシュ日にあてる方が賢明です。

例えば、そろばんなら、5年生の終わりまでに1級が取れそうでなければ、やめてしまってもいいでしょう。なぜなら、1級のスキルがないと中学受験で効果的に使えるものではないからです。1級のスキルは円周率3.14のかけ算が瞬時にできるレベルですから、そこまでの計算力があれば、中学受験でも強い武器になるでしょう。でも、それ以下のレベルでは、残念ながら中学受験ではあまり役に立ちません。

一方、ピアノやバレエ、水泳や武道などの習いごとは、中学受験の勉強とは関係ないけれど、その子にとって気分転換になるのであれば続けさせた方がいいでしょう。

例えば、ピアノなら15分~30分くらい無心に弾かせてあげて、メリハリをつけて勉強に取り組ませた方が効果的な場合もあります。ただし、レッスンに通う日が多かったり、発表会などで時間を取られてしまったりするのであれば、一時期はお休みにした方がいいかもしれません。こうした個人的な習いごとは、一時期お休みをしても、また再開ができます。ですから、今は受験勉強を第一に考え、その習いごとがその子にとってプラスになるのか、マイナスになるのかをよく考えた上で、続けるかどうかを検討してみましょう。

こうした個人的な習いごとは、家庭の方針で調整ができますが、野球やサッカーなどの団体スポーツに所属している場合は、事態は変わってきます。もちろん、なかには大手進学塾に通いながらも、野球やサッカーなどの団体スポーツを続ける子もいるでしょう。しかし、そういう話というのは、その子がある種の秀才だった場合や、中堅、またはそれ以下の比較的難易度の低い学校の受験だった場合などで、一般的にはあまり参考にはなりません。

こうしたスポーツの練習日や試合は土日に行われることが多く、4年生のうちは土日に授業がないため続けることは可能です。しかし、5~6年生になると、塾の授業数と同様に、団体スポーツの試合数も増え、塾の土日特訓や模試などで練習を休まざる得ない受験生は、レギュラーの座を狙うことが難しくなります。また、チームの人数が少ない場合は、その子が参加できないことによって、チームが試合に出られなくなってしまうこともあります。

チームにもよりますが、スポーツチームの監督やコーチには、「そのスポーツ一筋」という人も多く、なかには中学受験に理解を示さない人もいます。中学受験をするということは、こうしたハンデを伴うことも頭に入れ、「わが家はどういう方針で中学受験に挑むのか」、入塾をする前に親子でしっかり話し合っておきましょう。「とりあえず、なんとかなるのでは」といった楽観的な考えでは、中学受験はできないのです。

Point6 塾の授業についていけなくなったら?

中学受験に挑む子は、学校では大抵「できる子」です。特に大手進学塾に通っている子は、ほぼ全員が学校では「できる子」であり、塾でも4年生のうちはあまり内容が難しくないため、「学校でもできて、塾でもできる子」として順調に勉強が進みます。

ところが、5年生になると、先にも述べた通り、学習量が4年生の1.5倍になり、しかも学習の内容が高度になってくるため、学校では相変わらず「できる子」だけれど、塾の授業がついていけなくなってしまう子が出てきます。そして、6年生になるとさらにその数が増えてしまうのです。

子どもの成績の低迷は、塾側にあると考えて、転塾を考える親御さんもいます。転塾については後で詳しく述べますが、転塾を考える前に成績が伸び悩んでいる原因をしっかり分析しておく必要があります。子どもの授業の受け方や家庭学習のやり方などが原因であれば、いくら塾を替えたところで解決策にはなりません。

まず、しなければならないのが、お子さんの基礎学力が十分かどうかを見極めることです。基礎学力とは、読み(語彙力)・書き(漢字力)・そろばん(計算力)のことで、これらの基礎学力が不十分だとどこの塾へ転塾しても結果は変わりません。環境を変える以前に、家庭で漢字ドリルや計算ドリルなどを使って基礎学力を上げることを優先するのが賢明です。

また、5年生になってから伸び悩んでいるという場合は、それまでの学習法が勘に頼りすぎていたことも考えられます。前にも述べましたが、各塾の中学受験カリキュラムは、4年生から5年生になると、勉強の質が大きく変わります。4年生の授業は基礎学力の定着を図るものや、暗記で乗りきれるものが多いので、深く解していなくてもなんとなく勘で解けてしまうことも多いのです。

例えば4年生の算数の図形問題であれば、「ここは直角に見える」「この辺はおそらく等しいだろうから、二等辺三角形だろう」といったように、勘が当たれば正解できてしまうのです。ところが、5年生になると、そういった簡単な図形はまず出てこなくなり、複雑な図形が登場します。すると、今までは直感で解けていたものが、解けなくなってしまうのです。

計算にしても、4年生までは暗算で解くことができたものが、5年生になると、まずAという答えを出し、次にBという答えを出し、AとBを使ってCという解答を出す、とうように複雑になってきます。つまり、ごまかしが効かないようになってくるのです。

こうした計算を面倒くさがる子は、じっくり考えずに早く解こうとするのでミスも多く、ミスが続くと次第にやる気もなくなるという悪循環を引き起こすことがあります。こうした子には早い段階で、早く解くことが大事なのではなく、丁寧に解くことが大事であることをきちんと教えてあげましょう。ここで丁寧に解く習慣がつけば、スピードは後からでもついてきます。

また、4年生から5年生に上がる段階から成績が下がりはじめてしまう子の特徴として、「暗記型タイプ」の子があげられます。それまで暗記型の勉強でいい成績をとってきた子というのは、大抵がまじめにコツコツ勉強をする努力家です。

ですから、成績が下がりはじめると、「勉強時間が足りないからだ」「努力が足りないからだ」と、これまで以上に勉強をさせる親御さんが出てきます。しかし、それではますます成績は下がってしまいます。

なぜでしょうか? それは、学習量がお子さんのキャパシティを超えてしまっているからです。

前にも述べましたが、5年生になると、学習量がそれまでの1.5倍に増えます。1.5倍というのは、子どもにとっては相当の差だということをまずは親御さん自身が実感する必要があります。

4年生までは、まじめにコツコツ勉強をしていれば、暗記だけでいい成績がとれます。「この問題はこの解き方で解く」というレベルで点が取れるということです。なぜなら、まだそれほど学習量が多くないからです。しかし、5年生になって学習量が増えてくると、暗記型の勉強を続けるには時間が足りなくなってきます。また、暗記型の勉強では「なぜこの問題はこの考え方で解くのか」ということまではしっかり身に付きません。だから、少しでも難しい問題に直面すると、たちまち解けなくなってしまうのです。

そうならないためには、4年生から5年生になるまでに、勉強のやり方を変える必要があります。5年生になると、問題を解くために必要な基本知識を身に付けた上で、それを解くためにさまざまな考え方を組み合わせ、試行錯誤しながら解答を導き出すという力が求められるようになります。つまり、これまでの「暗記中心の学習」から、「考える学習」へと勉強法を切り替える必要があるのです。

4年生までの勉強の目的は、できる限り多くの事柄についての知識をつけることです。この知識があればあるほど、それらを組み合わせて使う「考える力」を伸ばすことができます。ですから、4年生までに行う暗記型の学習はとても意味があります。これに対して、5年生からの勉強は、4年生までに身に付けたさまざまな知識を使う方法を身に付けることです。

とはいえ、5年生になった時点でいきなり勉強の方法を変えるのは難しいものです。ですから、4年生のうちから少しずつ、「どういう手順で解いたのか?」「なぜそう考えたのか?」など振り返らせる習慣をつけておくといいでしょう。

中学受験勉強の3年間には、成績が上がったり下がったりと誰でも浮き沈みはあります。その時期はそれぞれの子どもの成長によっても違ってきます。しかし、中学受験全体を見たときに、4年生から5年生に上がるこの時期は、多くの子どもがつまずきやすいときであることを知っておくと、その対策も取りやすくなります。各学年、各教科におけるつまずきポイントとその対策については、後の章でも詳しく解説していきます。

Point7 転塾をするなら4年生の冬までがベストな理由

どんな塾に通わせていても、多かれ少なかれ不満や不安は出てくるものです。塾に通わせていて感じる不満や不安は、多くの場合、「頑張っているのに成果が上がらない」というもの。

塾で言われた通りに講座を受け、宿題もきちんとやらせている。それなのに、成績が上がらないとなれば、塾に対する不信感を抱いてしまうのも無理はありません。

しかし、前にも述べたように、大手進学塾のカリキュラムというのは、成績優秀な子を基準に作られたものだということを忘れてはいけません。よく親御さんは「本人のやる気次第で成績が上がる」と考えがちですが、気持ちの問題よりも、そもそもわが子に大手進学塾の授業についていけるだけの基礎学力がついているかどうか冷静に判断して欲しいのです。

よくあるケースとして、SAPIXの授業についていけない子がいます。SAPIXは中学受験の最難関校と言われる男女御三家への合格者を多く出す塾です。そのため、授業のカリキュラムも上位の子を焦点に当てて進めていきます。それはどこの塾でも同じなのですが、それが最も顕著に表れているのがSAPIXなのです。ですから、上位校を狙わず、中堅校でよいというのであれば、下位のクラスで授業の内容が理解できないまま、通塾する必要はありません。もう少し難易度の低い塾で、伸び伸びと学習した方がいいでしょう。

転塾を検討する際には、次のステップをおすすめします。

①子どもの勉強がうまくいっていないことに気づいたら

テストの結果がよくない、宿題の量が多すぎて終わらない、授業の内容が理解できていない、子どもが塾へ行きたがらないなど、子どもから何らかのSOS信号を感じたら、親子で話し合います。また、塾に面談をお願いし、担当講師に話を聞いてみます。

②何がどううまくいっていないのか、現状を分析する

今現在、うまくいっているところとうまくいっていないところを書き出してみて、どちらの方が比重が大きいかを分析してみます。また、塾に対して感じる満足と不満も書き出してみます。

③「こうすればうまくいく」ということと、本人と親ができることを考える

今現在、困っている、不満に思っていることを解決するには、どうすればうまくいくのかを考えます。そのとき、本人と親ができることを書き出し、逆にできないことを補ってくれる塾を検討します。

④転塾先は距離的に子どもが通える場所か、親が送迎できるかどうか調べる

5年生になると通塾日が増え、塾との関わりがさらに深くなります。子どもにとって、親にとって負担がかからないように、自宅から30分圏内の塾を検討しましょう。

⑤いくつか転塾先の候補を挙げ、見学する

候補に挙がった塾の学習カリキュラムを知り、転塾したときに抜けてしまう単元がないかをチェックします。多くの大手進学塾のカリキュラムは、5年生までにほとんど受験勉強の範囲を終わらせ、6年生は入試対策に特化するというものなっています。

しかし、各学年でどの単元を勉強するかは、それぞれの塾で違いがあります。また、学習の進度や宿題の量などにも差があります。

例えば、早稲田アカデミーは四谷大塚のテキストを使用しているので、四谷大塚から早稲田アカデミーへの転塾は、カリキュラムの面ではスムーズにいきますが、宿題の量に大きな違いがあります。早稲田アカデミーは、大手進学塾の中でも最も宿題量の多い塾なのです。

転塾は塾の雰囲気や学習進度が変わり、子どもによっては吉と出る場合がありますが、カリキュラムの違いによるリスクもあるということを心に留めておきましょう。塾によって習う単元の順番が異なるために、A塾ではまだ習っていないことが、B塾では習っている、ということが起こりうるのです。ですから、転塾先のカリキュラムをよく調べて、未習の単元ができないように注意するか、そこは家庭学習や個別指導塾などで補うなどして、十分な対策を取らなければなりません。

転塾をするなら、4年生の冬に検討することをおすすめします。5年生になると、塾の勉強がさらに難しくなる上に、塾によって習う単元の順番が大きく変わってきてしまうため、5年生以降の転塾はあまり望ましくありません。転塾をするのなら、4年生の冬がベストでしょう。どんなに遅くても5年生の夏までには決めておくべきです。それ以降になると、未習単元が多くなって、上位クラスに入るのが難しくなります。

Point8 地元の中小塾では中学受験はムリ?

ここまで、中学受験をするのなら大手進学塾へ通うことをおすすめしてきました。なぜなら、大手進学塾には、受験のためのカリキュラムが整っているからです。

しかし、大手進学塾の受験カリキュラムは、成績上位の子を基準に作られているため、内容が理解できず、授業についていくのが難しいという子も出てきます。また、テストの結果によるクラス分けや、多人数での授業の雰囲気に馴染めないという子もいるでしょう。

そういう子は、地元の中小塾に通うケースもあります。一般的に中小の塾は1クラスの生徒の人数が大手進学塾よりも少ないため、生徒一人ひとりに目が届きやすいという良さがあります。しかし、学力がつくかどうかは別問題です。ただし、講師の教え方が上手で、子どもとの相性も良ければ、予想以上に学力が伸びることもあります。中小塾で成績が上がるかどうかは、良くも悪くも担当講師の力によって大きく左右されるといっていいでしょう。

中小塾を選ぶ際には次の3つをチェックしましょう。
①地元での評判はどうか
②その塾が得意としている受験対象校はどこか
③入試当日までの学習カリキュラムはどうなっているのか

特にチェックが必要なのは、「学習カリキュラム」についてです。というのも、中小塾の中には、中学受験のための学習カリキュラムがきちんと用意されていないところもあるからです。教材にしても、授業のたびに、市販の問題集のコピーを配るだけのところさえあります。

前にも述べていますが、中学受験において「学習カリキュラム」はとても重要で、受験の成功に大きな影響を与えます。中学入試の出題範囲は膨大です。また、学校によって入試傾向も違います。入試の当日までに、入試を受けるために必要な単元の勉強が完了していないというようなことになっては取り返しがつきません。

中学受験の最終目的は志望校に合格することです。なので、中小塾を検討する際には、そのための対策がきちんととれた「学習カリキュラム」があるかどうか必ずチェックをするようにしましょう。

Point9 個別指導塾は目的に応じて選択する

大手進学塾は集団クラスで授業が進められるため、講師は生徒一人ひとりまではなかなか目が届きません。また、授業を行う講師と、学習相談をする担任と仕事が分業されている場合もあり、きめ細かい対応ができないという難点があります。

個別指導塾もいろいろですが、授業も学習相談も一人の先生が担当することが多いところなら、生徒一人ひとりの状況を把握しやすいというメリットがあります。

手厚い指導が受けられるという点で、個別指導塾に魅力を感じる親御さんはいると思います。しかし、指導の中身は、塾によってさまざまです。マンツーマンという魅力だけに引かれて選んでしまうと、あまり効果がないまま、お金を捨ててしまうことにもなりかねません。

個別指導塾に通う目的は大きく分けると3つあります。

①苦手な科目や分野を克服する
②学習法を身に付ける
③テストや入試の対策をする

個別指導塾は、講師と生徒が1対1、または1対2や少人数で授業を行うため、一斉塾に比べて多くの講師数を確保する必要があります。そのため、学生講師を雇っている塾がほとんどです。例えば①のように、苦手な単元の勉強だけであれば、学生講師でも十分に対応ができるでしょう。その講師自身が中学受験経験者なら、中学受験に必要なテクニックを教えることもできます。

けれども、②のように、勉強嫌いな子や学習の取り組みが身についていない子に対する指導は、解き方やテクニックではなく、勉強のやり方を教えたり、勉強に対するモチベーションを上げたりといったスキルが必要になります。となると、学生講師よりも経験豊富なプロの講師に託した方が心強いでしょう。

また、③のテストや入試対策であれば、今はどこまでを理解していて、どこからができないのか、どの単元でつまずいているのかなど、その子の学力レベルを正確に捉え、子どものタイプによるミスの傾向を分析するといったことが必要になるので、こちらもベテランの講師が適任ということになります。

このように、ひとくちに個別指導塾といっても、塾に何を求めるかによって、どの個別指導塾を選ぶかが違ってくるのです。ところが、多くの親御さんは「個別指導塾」=「手厚い指導が受けられる」と思い込んでいます。けれど、目的が合っていなければ、思うような効果は得られません。

また、個別指導塾というのは、良くも悪くも講師の熱意と指導力に結果が左右されます。そういう点では、ある一定レベル以上の講師を揃えている大手進学塾よりもリスクが高い選択となります。入塾前は面談でよく話し合い、授業の質も体験授業などでチェックするようにしましょう。

Point10 理想的な個別指導塾を見つけるには

一般的に中学受験の勉強を進めていくには、大手進学塾に通うことが必須です。大手進学塾には、テキストやテスト、ある一定レベル以上の講師による授業など、中学受験に必要な最高の学習環境が用意されているから、これを利用しない手はないと、これまで述べてきました。

しかし一方で、この最高の学習環境で、ライバルたちと同じテキスト、同じ講師の授業、同じテキストを受けているのに、「成績が思うように上がらない」と悩んでいるお子さんが後を断ちません。

それはなぜでしょう?

大手進学塾の学習環境を最大限に、効果的に利用する方法は、お子さん一人ひとりによって違うからです。

大手進学塾では、大勢の子どもを一斉に教えるため、おおよその成績別にクラス編成を行うとはいえ、指導レベルをクラス内のどこかへ合わせる必要があります。大手進学塾の一番の目的は、優秀な子を難関校にできるだけ多く入れることですから、必然的にクラスの上位の子に合わせた授業が行われるということも、先述のとおりです。

中学受験に大手進学塾が不可欠ですが、そこに通わせたからといって誰もが成績が上がるわけではないのです。

でも、学習のスピード、量、学ぶタイミング、学び方、モチベーションの上げ方など、お子さんに合った形で塾の利用ができれば、成績は必ず上がります。

そうです。中学受験の勉強は、大手進学塾のカリキュラムを賢く利用しながら、自分に合った学習法を確立していくことが大切なのです。それが、合格への道につながります。

そんな視点で、理想的な個別指導教室の利用のしかたを考えてみましょう。

  • お子さんが通っている大手進学塾の学習環境を最大限に活かし、志望校への合格を手に入れるためのサポートをしてもらう
  • ご家庭だけでは十分にできないお子さん専用の「学習指導」「スケジューリング」「メンタルケア」をしてもらう
  • 学生講師ではなく、プロの講師に1対1で解き方や考え方だけでなく、勉強法を教えてもらう
  • 今、塾で習っていることを無視して過去に遡るのではなく、今習っていることを理解しながら、一方で過去に習ったことで「今の足かせ」になっている単元を解決してもらう

塾には休まず通っている。宿題もきちんとやっている。なのに、成績が一向に上がらない・・・。
もしも今塾に通っているけどそんな状態で、上記のような条件を満たす個別指導教室があれば、ぜひともお子さんを通わせてあげるべきでしょう。

しかし残念なことに、そのような教育サービスはほんの一握りしか存在しません。

多くの親御さんは、はじめは大手進学塾に通わせていれば、成績が上がり、志望校に合格できるのではないかと期待しています。しかし、現実は塾に通っているのに成績が上がらずにつらい思いをしているお子さんがとても多いのです。

一斉塾と個別指導を併用しようと考えるご家庭の多くが抱えているお悩みも、「頑張っているのに成績が上がらない」というもの。実は、お子さんが「まじめで素直」であればあるほど、「責任感が強いタイプ」であればあるほど、こういった悪循環に陥ってしまいやすいのです。そして、この悪循環からなかなか抜け出すことができず、本来の実力が発揮できないまま、合格できるはずの学校に落ちてしまうケースが多くあります。

そうならないために、個別指導を併用してでも悪循環から抜け出したいわけですから、選び方はどうしたってシビアなものになります。

まず、入塾までにアンケートや親御さんと個別の学習カウンセリングはあるか、そのときにはどんな内容のことが話し合われるのか。これは実際に問合せてみなければわかりづらいことではありますが、今のお子さんの現状を詳細に聞いてくれるか、しっかりチェックしましょう。これまで積み重ねてきた勉強のクセ、習慣、家庭学習の様子などを聞いて理解してもらわねばならないですから、それなりの時間と手間がいるはずです。質問もそこそこに今後の授業の話に入るようなところは避けるべきです。

ある小学5年生の女の子が、個別指導教室に通って成功したケースをご紹介します。

その女の子は、小学3年生の2月から大手進学塾に通い始め、それから塾を一度も休まず、宿題も大変だけどきちんとやり、頑張ってきました。にもかかわらず、成績は一向に上がりません。特に社会の成績が伸び悩んでいました。

親御さんの話によると、娘さんは「やらなきゃいけないことはきちんとやる子」だと言います。それでも、成績が上がらない原因は何でしょう?

それは、その勉強がちゃんと「自分の勉強になっていない」からでした。既に勉強時間は目一杯ですから、勉強時間を増やすという選択は現実的ではありません。となれば、勉強の仕組みを変えていく必要があります。

勉強のやり方がうまくいかない子の多くに、授業の受け方が受け身になっている点があげられます。例えば、黒板を写すことに必死なっていて、先生の大事な話を聞き逃してしまっている子です。

社会というと暗記科目というイメージがあって、「家に帰ってから覚えればいい」と思いがちです。でも、実際は根拠のある情報やデータをもとに、出来事や現象の因果関係を読み解いていく科目なのです。「これってどういうことかな?」「○○だから、こうなるのかな?」というように考えながら学ぶことが大切なのです。それを知って授業を受けるかどうかで、同じ時間内に身に付く中身も大きく変わってきます。

問い合わせた個別指導教室の最初の面談で、担当者は1時間近くにわたってお母さんからこの女の子の学習の様子を聞き、成績資料、テストの答案、ノートなどを見て、社会の成績が伸び悩んでいるのは授業の受け方にあると判断しました。その根拠もお母さんが納得できるものでした。

この問題を解決するため、体験授業が行われました。1対1の授業ですから、講師はどんどん質問をします。

例えば、地理の雨温図の学習では、ホワイトボードに図を書きながら、「この地方にあるこの山脈は何?」「海に囲まれた地方はどんな気候かわかる?」「瀬戸内海地方に雨が少ないのはなぜ?」「どうしてそう思ったの?」と次々に質問を投げかけます。そうすることで、「受動的」から「能動的」な授業の受け方を身に付けていきます。

こうした授業の受け方は、大勢の生徒がいる一斉授業ではなかなかできません。いちいち質問をしていたら、授業が進まないからです。でも、意識的に「なぜそうなのか?」と考える癖をつけさせると、集団クラスの授業でも能動的に受けることができます。こうした授業の受け方を教えてあげると、子どもの学力はみるみるうちに上がっていきます。

個別指導教室を探し、やって来るご家庭のお子さんの“つまずき”は人それぞれです。そして、その解決法もまたそれぞれに違ってきます。受講前に親御さんとしっかりカウンセリングを行い、その子に合った学習を進めてくれるところでなければ、単に勉強すべきことが増えただけ、ということにもなりかねません。

今、その子にとってどんな学習が必要で、どんな学習が不必要なのか。大手進学塾の大量の学習カリキュラムに追われ、手が回らなくなってしまわないように、そのときどきに適確なアドバイスをしてくれるか。個別指導の併用を真剣に考えるなら、問い合わせから入塾までの流れの中で、上記のようなサービスを現実に受けられそうか、しっかり判断する必要があります。

Point11 家庭教師のかしこい選び方

苦手科目を克服する、今の学力をさらに伸ばすなどの目的で、家庭教師を利用するご家庭もあります。しかし、中学受験の学習においては、塾にいかず、家庭教師だけで乗り切るというのは、とてもまれなケースです。前にも述べましたが、今の中学受験の入試問題は出題範囲が広いというだけでなく、非常に難解なため、中学受験に対応できるレベルの家庭教師を最低でも週3回頼み、何年か来てもらうには、多額の費用がかかりあまり現実的ではありません。

中学受験において家庭教師を利用するのは、塾だけでは成績が伸びない、または今よりもさらに学力をつけたい場合など、大手進学塾に通いながら、家庭教師を併用するというもの。特にその年に中学受験を控えた6年生が、「今の成績をなんとか上げ、志望校に合格させたい」と駆け込むケースが多く見られます。

中学受験における家庭教師の役割というのは、受験勉強をいかに効率よくやるかというアドバイスをしながら、塾の授業で理解が曖昧だった部分をきちんと定着させ、試験で使える状態にすることです。こうした指導をしていくには、ある一定以上のレベルのプロの家庭教師に頼むことが望ましいでしょう。

よく知り合いに東大に受かったお兄ちゃんがいるから、週に一度勉強をみてもらうことにした、といった話を耳にしますが、限られた期間で今ある学力を確実に伸ばしたいという場合は、まずうまくいきません。そのお兄ちゃんが、優しくていい人でも、あまり結果は期待できないでしょう。成績を上げるための指導は一朝一夕で身につくものではなく、その東大生が直近に経験した受験勉強(東大を受験するためにした高校時代の勉強)は、小学生であるお子さんには当てはめられないからです。

もし、これが大学受験であれば、話は変わってくるでしょう。大学受験を経験したばかりの先輩のアドバイスはとても役に立ちますし、大学生活に対する憧れを持たせ、受験勉強のモチベーションを上げることができます。

でも、中学受験と大学受験は別物です。

では、中学受験に対応できる家庭教師はどうやって選べばよいのでしょうか?

実はこれがとても難しい問題なのです。「東大に行っている知り合いのお兄ちゃんではダメ」と言いましたが、プロの家庭教師でも、派遣会社に登録している人もいれば、個人で貼り紙をして生徒を募集している人もいます。そこから、教師の力量を見定め、さらに子どもとの相性がいい人を見つけるというのは、容易なことではありません。本来なら、プロの家庭教師と名乗る以上、どんなタイプの子どもにも臨機応変に合わせられることが絶対条件であるはずなのですが、実際はこうした教師が少ないというのが現状です。

「先生に来ていただくようになって3カ月以上経つのですが、成績が一向に上がりません」と派遣会社に伝えてみても、「そうですか。お子さんとの相性もありますからね。別の教師に変えてみましょう」と言われてしまうのがオチです。

結局のところ個別指導教室同様、親がしっかり先生をチェックして、力量を見抜くしかありません。とはいえ、親がその判断をするのもまた難しいものです。

中学受験における家庭教師のスキルで大切なのは、子どもの能力や理解度に合わせた臨機応変な教え方です。子どもに分かるように教える、勉強に対するモチベーションを上げるという点では、優れたコミュニケーション能力も求められます。さらに、高学年の受験対策になると、塾でやっている内容を熟知しておく上に、最新の入試傾向もしっかり把握していなければなりません。

ダメな家庭教師によくいるのは、塾とは別の市販の問題集を使って勉強をさせるケースです。これは、「私は力量がありません」と宣言しているようなもの。先生自身が予習をしておかないと解ける自信がないからです。塾のテキストも、四谷大塚や日能研のものを入手して予習することはできます。しかし、SAPIXでは毎週授業のときにテキストが渡されるので予習ができません。力量のない先生だと、いきなり解くことができない難問もあり、子どもに教えることができない場合もあります。

もちろん先生が解ければいいというのではなく、その子がどこでつまずきそうか、どこまで説明をすれば理解できるか、またこの問題がわからないということは、過去のどこの部分がわかっていないのか、といったことを瞬時に見抜けて、指導ができなければなりません。つまり、中学受験に熟知した家庭教師でなければ対応は不可能なのです。

信頼に足る、スキルのある家庭教師かどうかは、親の目で確かめるしかないと述べましたが、その意味でも重要なのが「親の目の届くところで授業をしてもらう」ということです。子ども部屋ではなく、リビングのテーブルで授業をしてもらい、親御さんが見学するのです。

教師は子どもと並んで座り、向かい側に親御さんが座って見学するイメージです。子どもの表情の変化が感じられ、家庭教師の授業をお子さんがどのくらい理解できているかが分かります。

よく家庭教師に多いのが、問題をやらせてその解答を教えるだけで終わりにするケース。これでは、わざわざお金を払って見てもらう意味がありません。

「どうしてそう思ったの?」「どうやってその答えを導いたの?」といった解く過程の考え方に関しての質問がお子さんに対してなされているか、そしてそれを説明させることによって知識を定着させようとしているかを、よく観察しましょう。もちろん、そのときにコミュニケーションが上滑りや一方通行になっていないかも大切です。お子さんに感想を聞くまでもなく、親御さんならお子さんの反応でわかると思います。

また、各教科には「勉強のやり方」というものがあります。例えば算数なら、計算問題のようにすばやく解かなければならないものと、図形や文章問題のようにじっくり考えながら解かなければならないものがあります。そういうことを意識させることも、中学受験の勉強ではとても大事なことです。

また、「今できていなければいけない問題」「今できておいた方がいい問題」「今できなくてもいずれできるようにしておきたい問題」「やらなくてもいい問題」などの選別も中学受験の勉強には必要です。なぜなら、すべてをやろうとすると手が回らなくなり、その先の学習へ進めなくなってしまうからです。

こうした「道しるべ」を示してくれるかどうかも、中学受験のプロ家庭教師かどうかを判断するポイントです。

個別のサービスになればなるほど、親の「選ぶ目」も試されますね。

以上、大手進学塾から始まり、それを補完する個別のサービスまで、「中学受験で成功するために3年間で一番大切な11のチェックポイント」をご説明しました。いかがでしたでしょうか?

みなさんのお子様の中学受験が成功しますようお祈りしています。

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