【関西セミナーレポート】2019年の入試分析からみる2020年入試対策について(前編)
今回は、2月8日に関西で実施された、2019年の入試傾向を報告するためのセミナーをレポートします。
前編では、西村先生による全体的な中学受験の入試傾向の説明と、都関先生による算数の入試傾向と今後の対策についてお届けします。
2020年の中学受験入試の参考にしていただけたら幸いです。
「条件を整理させる力」が要求された2019年の関西中学入試
まず、西村先生から以下のようなお話がありました。
「大学の入試改革を控え、中学入試の問題も思考力が問われるのかと思っていたのですが、そこまで思考力重視は表立ってないと感じました」
そして、「塾はカリキュラムがしっかりしていて勉強をたくさんやらせてくれますが、でも、やることだけをさせるだけの塾では、完全においていかれる」という話がありました。
「塾では見事な解法を教えてくれますが、それだけでは点数が取れなくなってきました」と西村先生は言います。どういうことなのでしょうか。
2019年の中学入試で要求されたのは、「条件を整理する力」。これは、問題でなにがわかっているのか、わかっていないかをはっきりさせる力です。
そして、その条件整理をもとに、一歩ずつ確実に正解に向かって作業していく「確実な処理力」も重要だったようです。
合格最低点は下がっているが、問題そのものは難しくなってない
さらに、各学校で入試の合格最低点が下がっている理由も、この「条件を整理させる力」「確実な処理力」に関わっているとのこと。
「たとえば算数の入試問題は、関西のほうが難しいです。関西の塾の先生方の算数の解き方はあざやかで、その力量はとても高いと思います。
ぽんぽんと跳ね上がってあっというまに答えを出す力を持っています。
でも、今年の入試ではひとつひとつ階段を上っていくような確実な処理力が必要でした」と西村先生。
それは、「論理的に考える力」で、一段ずつ固めて「まちがいなくこうだな」と進む力です。近年、正しいことを一段ずつ積み上げて正解にたどり着く力が大学入試に要求されていて、それが中学入試に反映されているようです。
「確実な処理力」を伸ばすための自問自答
日々、多くの子どもは、まず問題をざっと読んで、ぽんと答えを出そうとします。
「そこで抜けているのは自分の記憶とこの問題が本当に同じなのかという見方だ」と西村先生。
「この方法で解けるという確信がどこにあるのかはあまり考えないんですよね。たぶんこれでいけるという考えです。でもこの「たぶん」がミスにつながってしまうのです」
子どもの「確実な処理力」を伸ばすために家庭でできるのは、「本当にそうなの?」という声かけ。
責めるように言うのではなく、にっこり笑って優しく言うのがいいようです。
できる子は常に「本当にそうなの?」と自問自答しています。
漏れているもの、重複はないのか、常に自問自答しています。
この力が今後、重要になってくるのです。
「うちの子、こんなに勉強しているのに成績が上がらない」
「ミスが多いんです」
そう話す親御さんがいますが、これは、一足飛びの勉強をしている証拠です。
問題を解くプロセスで条件を見落としていたり、処理の途中を省いたりしています。
確実な処理力に必要なのは、問題をすみからすみまで読むことです。ひとつひとつの式を見ていくと、間違いに気づきます。
「解く力はあるのに、途中を省いてしまう、そんな学習習慣を修正していくのが、わたしたち名門指導会の役割だと考えています」
2019年入試、算数で見えてきたこと
次に、名門指導会関西総括の都関靖治先生から、関西の算数の入試問題についてのお話がありました。
まずは、灘中の算数の入試結果についての報告は以下のとおりです。
1日目
受験者平均30点内(100点満点中)合格者平均49.8点
去年に比べると14点くらい下がった 合格者平均49.8点
2日目
受験者平均44点内 (100点満点中)合格者平均56.8点
去年に比べると12点くらい下がった
「合格者平均は、500満点中290点(合格最低点)。昨年は321点でした。例年、受験生と合格ラインである320点をどう作るかという話をするのですが、今年はそれを下回った点数でした」(都関先生)
他の学校も点数が軒並み下がっていて、東大寺の算数も6点以上下がっていたとのこと。
逆に上ったのは、四天王寺ですが、これは去年点数が低かったと言えます。
算数は、関西のかなりの学校で点数そのものが下がっている傾向があります。
受験者平均点・合格者平均点が下がった学校は、灘、東大寺、甲陽学院、大阪星光、六甲。上がった学校は、四天王寺でした。
算数、学校ごとの傾向と対策について
都関先生によると、「全体の傾向としては、難化したのではなく、プロセス重視に変化したといえる入試問題でした」とのこと。きちっと作業ができる子が強い傾向です。
そして、各学校の2019年の入試傾向と今後の対策について、以下のようなお話がありました。
灘
算数の入試問題が難しいのは前提の灘中ですが、今年は特に、各塾で難問に取り組んできた子にとっても難しかったようです。これをどう乗り越えていくためには、「心づもり」をして臨むことが必要になってきます。
「これだけ難しいのだから、平均点はそんなに高くないはず。自分が点数を取れる問題はしっかり取ろう」という気持ちが持てた子は大きく失敗しなかった傾向があります。
灘中の入試問題にははっきりとした特色があるので、対策としてはまず、過去問をしっかりやっておくことです。2019年も去年とまったく同じが出題されました。
直近の他校の特徴的な問題もやっておくといいでしょう。
東大寺
今年は、正解を導き出すための作業量が増えた問題が出題されました。
整理できる力と、最後まで作業を正確にやりきる力が必要だったといえます。
塾で教えてもらう解法や公式で解ける問題が並んでいるので、問題を解くことに頭を使うのではなく、「限られた試験時間の中でどう仕上げていくかの工夫」に頭を使うための練習が、日々必要でしょう。
また、重複や漏れをなくすことにも注力してください。
甲陽学院
情報整理ができたかどうかが明暗を分けたようです。
問題をちゃんと読みすべての情報を汲み取って、それを回答に反映させることができたかどうかがポイントとなりました。
大阪星光
平均点は下がりましたが、問題の難易度は高くなっていません。
問題をきっちり読む力が必要です。
西大和と洛南
この二つの学校に関しては、過去の入試問題がそれぞれ入れ替わっていた感じでした。
男女で合格最低点が60点くらいちがうのも、この学校の特徴でしょう。
西大和は、女子の募集が始まってから、解き方を知っていたら解ける問題に変わってきました。
洛南は逆に、思考力を問う問題が出題されるようになりました。
これからは「思考プロセス」と「作業プロセス」が重要
算数の中学入試の問題も、大学受験を見据えて変化しています。
今年の傾向から見えてきたのは、「思考プロセス」と「作業プロセス」が重要で「思考プロセスとは問題を読む力、作業プロセスとは式などを書く力と言い換えることもできます」と都関先生は言いました。
つまりは、算数にも「読み」「書き」の力が求められるということです。
塾ができることは、「問題をたくさんやらせる」「問題を解くことを強制する」こと。
今までの中学受験なら、塾で習ったことをそのままあてはめたらできましたが、これからは思考プロセス(読み)と作業プロセス(書き)が重視されるため、それを整えて確実に点数に結びつけなければならないということになります。
「これは、1クラスに30人や40人の生徒がいて時間に限りがある塾で対応してもらうのは難しいので、できたら、塾と優秀な家庭教師を併用するのが理想的です。塾でベースを作り、家庭教師に思考プロセス(読み)、作業プロセス(書き)を指導してもらうのです」と都関先生。
でも、どのような家庭教師を選んだらいいのでしょうか。
「塾の情報をよく知っている有能な家庭教師を選んでください。それに合わせた指導やプランの相談ができるかどうかが大切です。中学受験を考えていくうえで、お母さんの心強いサポーターになり、子どもの心をぐっと掴んでいるかどうかを見極めて、家庭教師の先生を選ぶようにしましょう」
と都関先生は教えてくれました。
次回に続きます。