【公立中高一貫校の基礎知識】入学者選抜や受検対策について
私立の中高一貫校に魅力を感じていても、かかる費用などが気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで近年、注目されているのが公立中高一貫校ですが、受検事情はどうなのでしょうか。
ここでは、入学者選抜や受検対策についての情報をまとめてみました。
公立中高一貫校の2022年度入試倍率は4〜6倍
2005年に東京都初の都立中高一貫校が開校したのをきっかけに人気を集めた公立中高一貫校。
2010年までの間に11校の都立中高一貫校が誕生しました。
2022年度入試は4〜6倍と高倍率になるほどその人気は衰えていません。
公立中高一貫校の「入学者選抜」とは
同じ中学受験でも、公立中高一貫校は私立中高一貫校の入試と大きく異なります。
「入学者選抜」と呼ばれる公立中高一貫校の入試では学力テストではなく、小学校の成績や活動の記録を反映させた「報告書」、筆記テストの「適性検査」で合否が判定されます。
ちなみに学力による選抜でないので、漢字も「受験」ではなく「受検」と書きます。
「適性検査」は、教科に関係なく総合的な知識を問う問題です。学力テストのような選択問題や抜き出し問題はほとんど出題されません。
文章やグラフ、資料などを読み、そこから思考をまとめて自分の言葉で表現する記述式の問題がほとんどです。
出願時に「志望理由書」を提出する必要がある学校も多く、それが面接の資料として面接官の質問につながることもあります。
多くの学校で面接が実施されていて、学校によってはグループ面接、個人面接など形式が違うので、事前に確認して対策をしておくとよいでしょう。
公立中高一貫校の受検対策
都立中高一貫校が誕生した頃は2,000円という受検料もあり、「とりあえず受検してみて、もし合格したらラッキー」という感覚で挑戦するご家庭もあったのですが、近年は状況が変わってきました。
徐々に各校の「適性検査」のデータが蓄積され、公立中高一貫校専門のカリキュラムを組む塾も出てきました。
代表的なのが学習塾ena(エナ)で、4〜5年生から塾に通わせるご家庭が増えています。
また、中堅以下の私立校で公立中高一貫校の適性検査を意識した適正検査型の試験を行う学校も増えていて、公立中高一貫校に挑戦する子が受検本番前の「お試し受検」として併願するケースもあります。
公立中高一貫校入試を得意とする塾や通信教育の例
首都圏メインの大規模塾「栄光ゼミナール」が首都圏全域で公立中高一貫校に強いと言われていますが、その他、地域別に公立中高一貫校の受検対策をしている塾の特徴をご紹介します。
東京都
都立の中高一貫校対策に強いのは「ena」。西東京や多摩エリアに多い
神奈川県
湘南ゼミナールや中萬学院など
千葉県
市進学院や京葉学院など
埼玉県
あづま進学教室など
全国
通信講座「Z会」。塾に通いながら通信教育で一貫校対策をするという使い方をすることも
公立中高一貫校には「併設型」と「中等教育学校」がある
公立中高一貫校には大きく分けて、2つのタイプがあることを知っておきましょう。
併設型・・・中学と高校が併設されていて、高校でも生徒募集を行う
(東京都の例) 白鷗高校附属中、両国高校附属中、富士高校附属中、大泉高校附属中、武蔵高校附属中
中等教育学校・・・中学1年生から高校3年生まで切れ目なく一環したカリキュラムで教育を行う。高校では生徒募集しない
(東京都の例) 小石川中等教育学校、桜修館中等教育学校、南多摩中等教育学校、立川国際中等教育学校、三鷹中等教育学校、区立九段中等教育学校
公立中高一貫校受検の注意点
近年、コロナ禍などによる経済的不安もあり、学費の安い公立一貫校の人気が高まっていることもありますが、受検の注意点もあります。
公立一貫校受検の場合、どうしてもその学校に行きたいから一校だけ受検するというご家庭も少なくないのですが、私立の併願なしの一発勝負で受検すると不合格になったとき、子どもの精神的負担はとても大きなものになります。
通える範囲で公立一貫校を狙うとなるとどうしても選択肢が狭まります。
一校だけしか受けないとなると、そもそも倍率の高い学校ではさらに厳しい戦いになります。
そのうえ、適性検査についての対策などがまだ蓄積されておらず、また記述式という検査の性格上、子どもにとっては勉強の目標を定めづらい点があります。
それでも4、5年生から塾に通い、一生懸命勉強に取り組んだご家庭は、不合格という結果を受け取った場合に大きく落ち込んでしまうことがあります。
特に子どもは小学校高学年から習い事やスポーツをやめ、友達と遊ぶことも我慢して塾に通うので、大人は「挑戦したことに意義がある」と思えても、子どもにとっては「あんなにがんばったのに」という気持ちになってしまうことも否めません。
高校受験でそのリベンジをと考える親御さんもいますが、一度がんばって結果が出なかった経験をしてしまうと、子どもが「もう受験はこりごり」と言い出してしまうこともあるようです。
高校受験は中学生という多感な時期なので、大人の希望通りの進路選択をしないこともあります。
公立中高一貫校を受検する場合は、私立に進学する可能性があるのかないのか、私立を併願するのかしないのか、万が一不合格になったときにどうするのかなどを子どもも交えてしっかり話し合い、方針を決めておくことが大切です。