中学受験で「スピーディー学習」よりも「スロー学習」が大切な理由とは
中学受験の学習を進めている子どもの中には、スピーディーに問題を解くことが正しい勉強だと思っている子が少なくありません。
でも実は、本当に大切なのは「スロー学習」なのです。
今回の記事では「スロー学習」の大切さについて考えてみたいと思います。
「ショートカット回路」は危険
中学受験の塾で学習をしていると、どんどん「スピーディーに問題を解くのが勉強だ」という考えになりがちな上に、子どもは塾で習ったことを繰り返し勉強するのが得意になっていきます。
確かに、類似問題を何度も繰り返し解くことで、解き方や解法が身についていきます。
でも似たような問題を熱心にやればやるほど「あ、この問題はこことここの数字を引いて、あの数字で割れば答えが出る」というように、自分なりの当たりをつけて解いてしまう子が出てきます。
そういう解き方をした子に「なぜこの式で解いたの?」と聞いてみると、はっきり答えられないことが多いのは、問題を本質的に理解しているわけではないからです。
塾で、いわゆる「裏技」のようなものを教わり、類似問題に当てはめて解いているだけなのです。
こういった「ショートカット回路」は子どもが自分で考える機会を奪ってしまうので、応用問題が出た途端に解けなくなってしまいます。
「スロー学習」が必要な理由
中学受験の勉強でなぜ「スロー学習」が必要なのか、それは、正解への筋道を自力でたどる力が養えるからです。
4年生からの学習でこの力が身についていると、6年生の受験直前期には心身ともに余裕を持つことができます。
条件を少しだけ複雑にしたようなひっかけ問題にも対応できるので、入試本番で本来の力を十分に発揮できます。
「なぜこうなるのか」をじっくり考えた経験の積み重ねによって、子どもが自分で考える筋道を再現しやすくなります。
ショートカット回路で解く習慣が一度つくと、楽に解けるのが楽しくなってその解き方しかしなくなるので、少しひねった問題にはお手上げ状態になってしまいます。
「わかったつもり」は要注意
子どもが自覚していないことも多いのですが、「わかったふり」ではなく「わかったつもり」になっていることがあります。
理解できていない問題を「わかった」と言ってしまう「ふり」ではなく、自分ではわかったつもりなのですが、実際に「どうしてこうなるか説明してみて」と聞くと、しどろもどろになってしまう状態です。
家庭教師をしているときに特に多いのが、「わかった?」と聞くと、近くにお母さんやお父さんがいる場合は「うん」と答えますが、しばらくたってから振り返り勉強をしていると理解できていないといったパターンです。
きっと、お母さんやお父さんの前で「わからない」と言うとがっかりさせてしまう、もしくは、あとで「なんでわからないの」と叱られるなど、よくない経験があるのかもしれません。
この「わかったつもり」を積み重ねてしまうと、問題の難度が上がったときに取り返しのつかないことになってしまいます。
できるだけ早く気づいてあげて、対応をする必要があります。
納得感のある勉強が合格への近道
「なぜ、そうなるのだろう」「この方法で解けるだろうか」と自分に考えながら勉強する習慣が身についている子は、正解できたときの納得感もぐっと深くなります。
ああでもない、こうでもないと試行錯誤した結果に正解したことで「やった!ついに解けた!」という喜びを得られます。
そして「なるほど」と心の奥から納得した経験は記憶に残りやすくなります。
この「腑に落ちる感覚」が勉強の喜びであり、子どもののびしろになります。
知らなかったことを知ること、知識を得ることは湧き上がってくるような快感を伴い、さらに自分の中での知識と知識がつながった瞬間は何物にも変えがたい体験です。
本質的に理解することができた子どもは、こちらから「どうしてこうなるか、説明してみて」と促すと理路整然と「どうしてこの答えが出たのか、なぜこの解き方を選んだのか」について語ってくれます。
その姿はとても楽しそうで、子どもはとてもいい表情をしています。
そんな経験を日々している子どもに、「ちょっとハイレベルな問題にも挑戦してみる?」と聞くと、「うん!」と前向きな返事が戻ってくることが少なくありません。
これまでの積み重ねから「自分はきっとできるだろう」という自信がついているからです。
スロー学習とは、ただ単にゆっくりと学習することではありません。
その過程を楽しみながら、自分が理解できるようにポイントを確認しながら勉強をすることで、それによって記憶の定着にもつながりやすくなります。
「ショートカット回路」でスピーディーに問題を解く子どもに比べたら、一見ノロノロと勉強しているように感じるかもしれません。
でも、このスロー学習こそが最終的に合格を引き寄せるのです。
本質を理解し「腑に落ちる」経験をたくさんして、本当の意味で思考力が高まるスロー学習をぜひご家庭でも取り入れてみてください。