高学年で成績が下がる子の2つの特徴
「できる子は長時間勉強している」という幻想
保護者の皆様から質問されることが多いものとして「(我が子より)成績の良い子たちはどれだけ勉強しているのか」という質問があります。
つまり我が子はすごく頑張って勉強しているが、どうしても上位の子たちに及ばない。ならば上位の子たちは「睡眠時間を削って勉強している」のではないかという思い込みです。
当然答えはノーです。中学受験は長丁場の戦いになりますので、睡眠時間を削るといった無理を強いれば、お子さんの健康面・精神面にまず間違いなくマイナスの影響が出ます。
頑張りすぎは、なぜ成績を下げてしまうのか
サピックス、日能研、希学園といった大手進学塾で中位クラスあたりで伸び悩む子たちの中には「頑張り過ぎている」(≒睡眠時間を削って勉強している)子たちが一定数います。
そして悲しいことに、こういった子たちの多くは5、6年生あたりで、ずるずると成績を落としていくパターンに陥ります。こういった光景は学習塾の先生たちが毎年たくさん見ているものです。
このタイプの親御さんやお子さんは、不安から自分より成績上位の子たちが「(自分よりもっと)長時間勉強しているに違いない」と考え、自ら勉強や生活のリズムを崩して成績を下げていくというスパイラルに落ち込んでいってしまっているのです。
睡眠時間を削って練習するスポーツ選手はいません。そんなことをすればむしろコンディションを落として練習効果が下がり、非効率になることを知っているからです。一流の選手ほど練習量を緻密にコントロールし、身体と心のコンディションを高い次元で維持しながら、効率的に訓練を行なっています。
長時間ダラダラと勉強する習慣をつけると他にも弊害がでてきます。それは中学受験で最も重要な「集中力」が身につき辛くなることです。そして長期間そういった勉強を繰り返すと、むしろどんどん「集中力」がなくなっていきます。
短時間で効率よく勉強することで「集中力」を高める
中学受験の試験時間はどの教科の試験も30分から60分程度です。算数を例にとってみると、設問1つあたり5分から10分程度の配分になるものがほとんどです。本番の試験がそうなので、日々の訓練もそういった時間で繰り返すのがいいでしょう。
長時間ダラダラと勉強させていると、本来5分から10分で解かなければならない問題であるにもかかわらず、解法が分からない箇所で思考を停止し、ボーッとしてしまうという悪い癖がつきます。そういった子の多くがテストで時間配分を失敗します。
そして時間配分の苦手な子は、焦りから簡単な問題でのケアレスミスも増えます。その結果テストの点が非常に不安定になり、最終的には成績が下がります。
学校や塾の授業が、1コマ30分から90分程度なのは、一般的な人間の集中できる時間がその程度だからです。肉体的にも精神的にも幼い小学生であることを考えれば、家庭でも、ダラダラと長時間勉強させず、中学入試と同様に30分から60分程度に区切って、集中して学習を繰り返させる方が、はるかに学習効果が高いのです。
「集中力」と「基礎学力」が高学年での学力の伸びしろになる
サピックス、日能研、希学園といったトップクラスの進学塾で高学年時に、特に5年生あたりで中位のクラスで伸び悩むもう一つの典型的なタイプが暗記型学習タイプの子供です。4年生くらいまでの単純な問題では、繰り返しパターンを暗記することで好成績をとれてしまいますが、5年生になると一気にパターンが複雑化するので、思うように点数が取れなくなります。
この暗記型の学習に決定的に欠けているのは「考える力」です。「考える力」というのは、何を問われているのかを正確に理解した上で、求められている答えまで、自分の中にある知識のストックを組み合わせながら答えへ至る能力のことです。
こういった「考える力」を養わずにきた暗記型の子は、今まで自分が見たことがない、解いたことがない問題を極度に恐れます。高学年になると学習内容はだんだん複雑になり、パターンも多様になってきます。暗記で全てのパターン網羅していくのは非常に非効率になり、ましてや難関中学で出題されるレベルの問題パターンを全て暗記していくのはほぼ不可能です。
しかし「考える力」がある程度身についている子であれば、初めて見る問題だったとしても、恐れることなく立ち向かっていきます。例えば、数列の1000番目の数字を求める問題で、公式のような解き方が分からなかったとしても、1000個の数字を間違えずに書くことができれば答えに到達できるというように考えます。そして20~30個の数字を書いているうちに、簡易な計算で答えに到達する方法をみつけてしまったりします。
暗記型や、長時間ダラダラ勉強する子たちが、伸び悩んだり、成績を落としていく高学年の応用学習は、「集中力」と「基礎学力」をしっかりと身につけている子であれば、逆に「考える力」をつけていく絶好のチャンスになるのです。
中学受験の時期が近づいていくればくるほど不安は増し、保護者は長時間の勉強を課したり、子どもは考えることを止めて、暗記型の学習に流れていく傾向にあります。誰でも受験が迫れば不安になるものですが、今回書いてきた内容を読んでいただいた保護者の皆さまなら、そういったことが引き起こす危険性を理解し、ぜひそうならないよう気をつけて、計画的に中学受験にのぞんでいただければと思います。