中学受験の結果に差がつく「ある学習法」とは
今回の記事では2人の子どもを例に、タイプ別に中学受験に必要な学習法についてお伝えします。
中学受験の学習過程でどう差がついてしまうのか、中学受験に成功するために必要な学習法とはどのようなものなのかについてご説明します。
【4年生】好発進のAさんとちょっと心配なBさん
Aさんは、4年生から入塾し、最初の月例テストから好調です。
Aさんの親御さんも安心している様子で「このまま順調にがんばってくれたら中学受験を乗り切れそうだ」と思っています。
Aさんは塾の宿題にも一種懸命取り組み、前向きに学習を進めています。
4年生の夏、秋、冬と、時間とともに順調な上昇カーブを描いていきます。
一方、Bさんは最初の月例テストでの成績もイマイチで、塾の宿題もすべてをこなしきれていません。
親御さんは「いつになったら本気になってくれるのだろう。うちの子には中学受験は無理かもしれない」と考えています。
塾の勉強のスピードが早すぎると感じているBさんは、やっとついていけているという様子です。
それでもマイペースで、好きな科目には夢中になり週末でも問題集を開いています。
成績はゆるやかに上昇カーブを描いてはいますが、「このままで大丈夫だろうか…」と親御さんはかなり不安になっています。
【5年生】停滞するAさんと安定のBさん
Aさんの成績は入塾してから順調に伸び続けていました。
しかし、5年生の5月の定例テストで下がってしまいます。「こんなこともある」と考えていた親御さんですが、6月にもまた下がってしまいます。
そこで親御さんは「もっと勉強しないと!」とAさんを叱咤激励し始めます。
Aさんもそれに応えて勉強時間をさらに増やしますが、成績はさらに下降曲線をたどってしまいます。
そんなAさんの答案を見てみるとすべて埋まってはいるのですが、間違いの数が増えています。
勉強時間を増やしてがんばっているAさんですが空回りが続きます。
Bさんは、5年生の夏までは成績が上下するなどばらつきがありましたが、2学期以降に安定してきます。
実際のテストの答案を見てみると、Bさんの答案には空欄が目立ちますがそれも徐々に減っていきました。
5年生の10月ごろ、この2人の成績が逆転します。
【6年生】志望校変更を余儀なくされるAさん
6年生になってBさんは志望校に手が届く実力を身につけることができました。
しかしAさんは、今まで以上に勉強時間を増やしてがんばりますが、成績が伸びず苦戦します。
最終的には、志望校を変えなければならない状況になってしまいました。
このようなAさんの成績の伸び悩みを、塾のせいにする人もいるでしょう。
もちろん塾との相性はあります。
でも、どのような塾へ行っても同じように伸び悩む可能性もあります。
AさんとBさんの違いはどこなのでしょうか。Aさんはなぜ成績が伸び悩んでしまったのでしょうか。
2人の差は「ある学習法」を実践していたかどうか
Aさんは入塾した頃から、塾の勉強量とそのスピードに対応できていました。
最初はあまり順調といえなかったBさんが5年生になってぐんぐん伸びたのは「ある学習法」が習慣づいていたからです。
それは、「スピーディかつスローな学習法」です。
中学受験では難関校になればなるほど、多くの問題を短時間で処理できる力が求められます。
スピーディーにこなす力は塾の宿題やテストでも大きな武器になります。
しかし、勉強が難しくなるにつれてAさんのようにスピーディーなだけでは立ち行かなくなります。
特に5年生の5月以降につまずく子の多くが、スピード重視でアタフタと勉強する習慣がついてしまっている子です。
もちろんスピード感は中学受験に必須なのですが、それを前提にしてさらにBさんのように着実に進めるスローな学習法が身についている子はぐんぐん伸びていきます。
「スローな学習法」とは
それでは、スローな学習法とはどのようなものなのでしょうか。
ポイントは3つあります。
1、問題文をじっくり「読む」
2、自分の手を使って式や図を「書く」
3、自分で自分に問いかけながら「考える」
この3つのポイントを意識しながら学習することで、学習内容が確実に身についていきます。
少ない演習数でも効果的な学習法なので、結果的には勉強時間の短縮になり心身の余裕につながるので、合格の近道になるといえます。
Aさんは学習時間を増やしても上記の3つのポイントを実践せず、慌てて「とにかく終わらせる」ことを重視していたので、いくらやっても成績が伸びませんでした。
これは極端な例ですが、中学受験にはじっくり勉強に向き合う「スローな学習」が必要だということです。
Bさんの成績が伸びたのは、塾などでスピーディーな学習をこなしつつ、スローな学習の時間もしっかり確保し落ち着いて取り組んでいたからです。
中学受験に必要なのは「スピーディー&スロー学習」
スピーディーな学習は中学受験の基本ともいえます。
中堅クラスの中学校なら、それだけでも合格可能な場合もあるでしょう。
しかし、御三家などの最難関校や上位校を目指すなら「スロー学習」を組み合わせることが必須となります。
近年、多くの中学校で「難問に向き合い、試行錯誤できる子」「自分の頭で考えられる子」が求められています。
大学入試改革を受けて、思考力や表現力を試すような問題も増えています。
受験を取り巻く環境は大きく変化していて、今は「なにを勉強するか」より「どのように勉強するか」が問われる時代になっています。
そのためにはじっくりと思考を巡らせるスロー学習が必須であり、親御さんがそれに気づくかどうかで大きな差が出ます。
中学受験の勉強が、これからの世の中で必要とされる能力や感性を身につける経験につながるように、読む、書く、考えることを重視する「スロー学習」を習慣づけるようにしましょう。
きっとそれは、子どもの生涯の糧になるような経験になります。