【保存版】中学受験 プロが教える科目別勉強のしかた11のポイント
プロが教える科目別勉強のしかた11のポイント |
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Point1 中学受験は算数で決まる!
算数が得意だと有利な理由
一般的に首都圏の中学受験は、国語・算数・理科・社会の4科入試です。一方、関西圏では国語・算数・理科の3科入試が主流になっています。中学受験では、どの科目もまんべんなく高得点が取れれば理想的ですが、なかでも”得意”にしておくと有利な科目があります。それは算数です。
実は、中学受験の合否は、算数にかかっているといっても過言ではありません。それにはいくつかの理由はあります。
まず一つ目は、中学受験において算数の内容が特殊な点が挙げられます。中学受験の入試問題は、建前上は小学生が習うべき学習範囲から出題されることになっています。ところが、学校の算数のテストでは毎回100点をとる子でも、中学受験専門の塾に通っていなければ、中堅校以下の中学入試問題でも、2、3割しか解くことができません。
例えば国語なら、日常使う言語の問題ですから、日常生活の積み重ねや学校の授業が入試でも基礎点になります。ところが、算数では学校の授業では見たこともないような問題が出題されるため、「受験用」の勉強が必要になります。しかも、その内容は膨大で、難易度も高い。そのため、算数は学力に大きな差がつきやすいのです。
また、算数の試験は、他の科目と比べて問題数が少ないという特徴があります。小問題がだいたい20問くらいしかないので、100満点であれば1問あたりの配点は5点です。それに対して国語などは小問題の数がずっと多く、例えば30問あるとしたら、1問あたりの配点は3点です。つまり、算数は他の科目よりも問題数が少ない分、1問ミスをした場合のダメージが大きくなってしまうのです。
実際、受験者の点数を見ると、そのばらつき具合が一番大きく出る科目は算数です。逆を言えば算数で高得点が取れれば、合格する可能性は非常に高くなるということです。
特に関西の場合は、国語・算数・理科の3科目入試のため、その比重は大きくなります。例えば灘中なら、国語200点、算数200点、理科100点の配点となっています。つまり、首都圏よりも一層、算数の得点力が合否にかかってくるということです。算数は、中学受験においてとても重要な科目であることを知っておきましょう。
低学年の算数の学習で大切なこと
ただし、低学年のうちから極端な「先取り学習」をする必要はありません。塾に行くのは、4年生からでも十分です。3年生までは、学校の授業をしっかり学び、家で復習ができていれば問題ありません。けれども、ここでしっかり「土台」を作っておかないと、塾に行ってから非常に苦労することになります。
算数を得意になる秘訣は、「わかる楽しさ」を教えてあげることです。子どもに「算数は楽しい」と思わせるために、まず親がしなければいけないのは、親自身が算数に対する苦手意識を持たないようにすることです。ここはとても大事なポイントです。
もちろん、親御さんが中学受験の受験問題をすべて解けるようになる必要はありません。お子さんと一緒に、算数をもう一度勉強して楽しんでみよう、という気持ちになっていただくだけでいいのです。
一度、”算数が苦手”と思ってしまうと、中学受験はとてもつらいものになってしまいます。逆に「自分は算数が得意だ!」と思えたら、受験はほぼ成功といってよいかもしれません。中学受験で成功する秘訣は、算数を好きになることです。
Point2 国語の成績を上げる3つの条件
中学受験で算数が重要であることはよく言われることですが、国語はどうなのでしょうか? 理科・社会に比べると、授業数も入試の配点も高く、重要そうには感じます。
しかし、公式を覚え、演習問題で力をつけていくといったように、勉強のやり方が明確な算数と違って、国語は漢字と語句の知識を増やす以外に、何をどう勉強したらよいのかわからないという声を多く聞きます。また、国語は感受性の高さを要求する科目だから、子ども本人が成長しないことには、どうにもならないと思っている親御さんもいるようです。
結論から言うと、国語の成績を上げるには、次の3つの条件がそろっている必要があります。
- ①文章を読む力を育てる
- ②問題を解く力を育てる
- ③「読む力」と「解く力」のバランスを整える
文章を読む力の育て方
まずは、文章を読む力です。当たり前のことですが、文章の内容がつかめていなければ、国語の問題を解くことは難しいでしょう。国語という科目が、文章の内容を読み取ることを第一の目的にしていることからも、これは当然の条件です。しかし、文章が読めれば、国語の問題が解けるというわけではありません。
本を読むのは好きなのに、国語のテストで高得点が取れない子はよくいます。小学校で習う国語では、文章を生徒が思い思いに読んで、感じたことを自由に発表する形で授業が進められていきます。このため、文章を読むことだけに気持ちがいきがちになります。
しかし、受験の国語は、他の科目と同様に、設問に答えることで点数がつきます。ですから、解き方が分かっていなければ、点数は伸びません。国語のテストの問題というのは、素材文を読んでいない人でも、「ああ、なるほどね」と理解・納得できる答えを求めています。
例えば「『なんとも言えない気持ちになった』とありますが、それはどういうことですか?」という設問であれば、この素材文を読んでいない人たちにも、その登場人物が「悲しい気分になった」ときの状況や理由が分かるように説明しなければなりません。それには、「登場人物が出合った出来事」+「それまでの事情に基づくその人物の受け止め方」+「その結果生まれる感情」といったように、その素材文を読んでいない人にも伝えることができる論理的な思考が必要なのです。
一方、読書が好きで、表現力も豊かなのに、テストで点が取れない子というのは、設問に答えているつもりでも、実際は自分の感じたことだけを述べているだけにすぎず、誰にでも納得できる解答になっていないのが、伸びない原因です。でも、そういう子でも、国語のテストの解き方を学べば、確実に成績を上げることができます。
20字程度の記述と50字を超える記述は根本的に違う
近年、中学受験の国語入試では記述問題を出す学校が増えている傾向にあります。また、以前から出題していた学校でも、以前は20~35字程度の記述だったのが、50字程度の記述に増えています。
実は、この「20~30字程度の記述」と「50字程度の記述」とでは、質的に大きな違いがあります。中学受験において出題される文章、内容では、「ひとまとまりの内容はだいたい20字で表現できる」のです。そのため、結論部分や筆者が理由説明をしている部分では、一文が20~30字で表現されていることが多くあります。結果として、20字程度の記述だと、本文をそのまま抜き出すだけで、解答が仕上がってしまうというわけです。
ところが、50字程度の記述になると、少なくとも2つ以上の要素を組み合わせて解答を仕上げなくてはなりません。要素を組み合わせるということは、それぞれの内容の「関係」を明らかにして、語順の判断やつなぎ言葉の選択を適切にしていかなければなりません。そして、素材文を読んでいない人にも伝わるように「論理的であること」が求められます。「論理的であること」というのは、この「内容の関係をつかむ力」が必要になります。
4年生ぐらいまでは、記述の文字数も少ないため、正解できていたお子さんが、5年生になったあたりから点数が取れなくなるケースが多く見られます。それは、文章の読み取りが不十分なだけでなく、「内容の関係をつかむ力」が育っていないことも考えられます。記述問題を解くときに、お子さんが文章の一箇所だけを見て抜き書きをしていたら、「具体と抽象」「事実と気持ち」「対比」など、文章を読む上での基本的なものの捉え方を補強していく必要があります。
国語の「解き方」を身につけるための声かけを
3つ目の『「読む力」と「解く力」のバランスを整える』のは、お子さん一人ひとりによって持っている力が異なるので、集団塾ではできないものです。そこで親御さんの働きが必要になります。
具体的に何をすればよいかといえば、「声かけ」です。声かけとは「発問する」ことを指します。例えば、「どんな人が出てくるの?」「どんな出来事があったの?」「何について書かれた文章なの?」といった感じです。
文章には「読み方」というものがあります。「読み方」とはつまり、「文章中におさえるべき情報を適切な手順で読み、整理すること」です。それができる力のことを「読む力」と呼んでいます。
また、国語の問題には「解き方」というものがあります。「解き方」とはつまり、「設問が求めていることを正確にとらえ、本文のどこを読めばいいのかを考え、読み取った内容を整理し、設問の求めに合うように答えること」です。それができる力のことを「解く力」と呼んでいます。
つまり、文章を読むときも、解くときも、考えていく手順、作業していく手順というものがあるのです。ですから、その通りに進めていけば、どの子も国語の成績は上がります。「読む力」と「解く力」の両方があれば、国語の成績は上がるのです。逆に苦労している子というのは、「読む力」はあるけれど、「解く力」がないなど、バランスが取れていない子です。例えば、先に挙げたような、読書好きだけど、テストで点が取れない子ですね。
そこで、考えていく手順、作業する手順を踏み外さないように、大人が声かけをしてあげるのです。文章を読んでいる子どもの様子を観察し、「読み方」から外れそうになったら、「ここまでどんな出来事があったんだっけ?」と発問をするのです。また、問題を解いている様子も観察し、「解き方」から外れそうになったら、「設問は何を聞いているんだっけ?」と発問でするのです。そうやって、意識させることで、「読む力」と「解く力」は確実につきます。
親にとって、国語は教えにくく、関わりにくい教科と思われがちです。しかし、実は親の声かけが一番効く科目なのです。
文章を読んだり、問題を解いたりする中で大切なのは、正しい手順を意識させることです。頭と身体に正しい手順が身に付けば、中学受験において国語はそれほど手強い科目ではないのです。
Point3 中学受験 理科入試は高得点勝負
首都圏の中学受験では、国語・算数・理科・社会の4科入試が主流です。しかし、大手進学塾のカリキュラムでは、国語と算数に比べて理科と社会の授業数が少ないことや、各校の入試が国語と算数が100点満点であることが多いのに対し、理科と社会は50~80点満点になっていることなどから、理科と社会はそれほど重要な科目ではないと思われがちです。
確かに中学受験において、理科は国語や算数の主要2科目に比べると、重要度は低いともいえます。実際、中学受験では、国語と算数が飛び抜けてできていれば合格は可能ですが、理科だけが飛び抜けてできていても、国語と算数ができていなければ、合格は難しいからです。
しかし、理科で合格することはなくとも、理科で不合格になることはあり得るのです。中学受験の理科入試は高得点勝負だからです。例えば、男子御三家の中では、実は開成の理科が一番易しいと言われていますが、70点満点中60点は取れていないと合格は難しいでしょう。つまり、中学受験における理科入試は、いかに高得点を取れるかがポイントだということです。
理科入試は、受験する学校にもよりますが、一般的には生物・物理・化学・地学の4分野がまんべんなく出題されます。
理科の中学入試は4分野から出題される
各分野の内容はおおよそ以下のようになります。
【生物分野(植物・動物)】 |
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季節と生物/日光と森林/食物連鎖と環境破壊/根・茎・葉のつくり/光合成と呼吸/花のつくり/植物の発芽と成長/呼吸のしくみ/消化と吸収/血液の循環/骨格と筋肉/メダカの育ち方/生物の誕生と成長 |
【物理分野】 |
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棒のつり合い/重さとばねの伸び/音の性質/光の性質/鏡による像/光とレンズ/豆電球の回路・豆電球のつなぎ方/電流と方位磁石/電流の大きさと方位磁石/いろいろな回路と方位磁石/電磁石の性質/電磁石の利用/電流計/電熱線の電気抵抗/空気と水圧力/物の溶け方/空気や水の温度による変化/電流のはたらき/音と光/てんびんとばね/熱の伝わり方/物の温まり方/物の運動・振り子の運動/ばね/浮力/浮力/てこ/棒の重さと重心/定滑車と動滑車/輪軸 |
【化学分野】 |
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空気の体積と温度/物体の変化/物の溶け方/結晶の取り出し方/金属の性質/水溶液と金属の反応/酸・アルカリ性の水溶液と中和/水溶液の計算問題/溶質による水溶液の分類/酸性・アルカリ性・中性の分類と電流/水溶液の重さと濃さ/溶解度と溶質/酸素と二酸化炭素/いろいろな気体/実験道具の使い方/物の燃焼/金属の燃え方 |
【地学分野】 |
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季節の星と星座/星の日周運動/月の満ち欠け/緯度・経度と時差/太陽の日周運動月/太陽の年周運動/地球と宇/温度と湿度の変化/大気の流れと季節/地層の体積と変化/地層のできた順/火山のしくみ/地形の変化と地震 |
いかがでしょうか? 中学受験生はこんなにたくさんのことを勉強するのです。それぞれの分野で覚えることがたくさんあるので、どうしても暗記は必要です。実際、偏差値50以下(四谷大塚)の学校の入試問題であれば、知識を問う問題が中心のため、覚える量は多いけれど、暗記だけでもなんとかなります。
偏差値50~60の中堅校においては、知識のみを問う学校と思考力を問う問題も出る学校の二通りがありますが、全体的に見ると比較的簡単な問題が多く、高得点での勝負になっています。中堅校を狙うのであれば、正解率85%は目指したいものです。
女子御三家の桜蔭なども、知識を問う問題が並びます。ただし、中堅校の入試と違うのは、その問題数の多さです。試験時間30分の間に、40~60問も解かなければならないため、相当の知識とスピードが求められます。
これらの学校の入試対策は、とにかくたくさんの問題を解く練習をすることです。難関校向けのやや難しい問題集を何度も解いていけば、確実に点数を取れるようになります。ただし、一つの失点が合否を左右するので、苦手分野を作らないことが大切です。こうした入試問題には、「どの分野にも偏りなく、理科全般に興味を持ってほしい」という学校側のメッセージが込められています。
難関校は知識だけでは合格できない
一方、難関校の入試問題では、知識だけを問う問題はあまり出ません。男子御三家をはじめとする難関校では、その知識を元にした思考力が問われるので、暗記だけではとても太刀打ちできません。「なぜそうなのか」という理由を自分の言葉で論理的に書く記述力も求められます。
また、小学校の教科書や塾のテキストでも出てこないような、初見の問題が多いのも特徴です。例えば、男子御三家の一つである麻布中学では、小学生では習わない惑星探査機やカッコウの托卵についての問題が出題されたことがあります。
では、なぜそんな問題を出すのかといえば、難関校ではすでにある知識よりも、目の前にある問題を読み、そこからヒントを見つけて、どういう手順で解いていけば、答えを導くことができるかを考える力が求められているからです。つまり、難関校の理科入試では、物事を論理的に考える力や、初めて見る問題にもひるまずに立ち向かう力などが試されているのです。
ほかに特徴的な問題を出すのが、慶応付属校の入試問題です。慶応付属校の理科入試は、身の回り関する問題が多く出題されるのが特徴です。例えば、魚の骨や果物の種の形を問うようなユニークな問題が出題されます。これは、「普段から身の回りのことへの興味を持つことが大事であり、そういうことを意識している家庭の子に入学してほしい」という学校側の思いが込められています。
また、良妻賢母を育てる教育方針を持つ女子校の理科入試では、カレーの作り方を問われるなど、理科というよりも家庭科に近い問題が出題されるところもあります。
このように、ひとくちに理科入試といっても、学校のレベルによってその難易度が異なります。また、理科入試の内容から学校側が求める人物像を探ることができます。
Point4 子どもを社会好きにするコツ
勉強の仕方がわかれば社会で点は取れる
中学受験における社会は、理科と同様に、それだけが突出してできても合格にはつながらないけれど、ひとつのミスが合否に大きく関わってしまう科目です。算数と違って点差がつきにくい科目なので、やはり社会も高得点勝負になります。例えば、男子御三家の一つである開成中学であれば、70満点中、合格点は62~65点という高さです。
しかし理科は、計算分野や抽象的な問題など、内容自体が難しいために理解できず苦手になってしまう可能性がありますが、社会は違います。社会を苦手としている子の多くは、勉強の仕方が分からないからテストの点につながらないだけ。テストの点がとれないから、苦手意識を持ってしまっているのです。つまり、勉強の仕方さえ分かれば、誰でも得意になれる科目なのです。
では、子どもを社会好きにするにはどうしたらよいのでしょうか?
日常生活の中で社会への入口を広げる
大人でもそうだと思いますが、自分の知っていることが話題に出ると、話の続きを聞きたくなりませんか? それと同じで、子どもは授業中、自分の知っていることが少しでも出てくると、興味を持って聞くことができます。
逆に知らないことに対しては、イメージがわかないので、集中して聞くことができません。ですから、子どもを社会好きにするには、できるだけ小さいうちから社会を意識させてあげることが大事なのです。
例えば、大手進学塾では4年生の社会で、日本各地の特産物についての学習をします。そのときに「愛媛県の特産物はミカンです」と教えられても、それがイメージできない子にはピンと来ません。でも、例えば、お母さんと八百屋さんに買い物に行ったときに、「このミカンの段ボールに愛媛県って書いてあるね。愛媛県はミカンがいっぱい採れるのかな。愛媛県ってどのあたりにあるんだろうね?」などと声かけをしてあげると、授業中に「愛媛県の特産物はミカン」と出たときに、「あ、買い物に行ったとき、お母さんが言っていたな」「確か四国地方だったな」と思い出し、「でも、どうして愛媛県でミカンがいっぱいとれるんだろう?」と、もっと話を聞いてみたいという興味につながります。この「興味を持って聞く」ことが大事なのです。
このように、社会はちょっと知っているか知っていないかで、興味の入口が変わってきます。子どもを社会好きにするには、できるだけ小さいうちから社会に対する興味の種をまいてあげることです。例えば、家族で旅行へ行くときには、必ず地図を持っていき、自分たちが今どの県にいて、その県はどんな形をしていて、どんな文化や郷土料理があるのかなどを話したり、実際にその料理を食べてみたりして、実体験として教えてあげられると効果的です。
歴史を入口に地理も得意に
また、歴史好きにさせてあげるには、歴史マンガや大河ドラマなどを見せると、人物像やその時代の背景がイメージしやすくなり、遠い昔の時代のことを身近なものに感じることができます。
社会が得意な子の多くには、大の歴史好きがいます。特に男の子に多いのですが、そういう子の中には、4年生の時点では地理になかなか興味を持てない子もいます。「愛媛県の特産物はミカン」と覚えろと言われても、興味がないものは覚えられないのです。でも、5年生で歴史の学習に入ると、自分の得意分野だからテストでもいい点が採れるようになります。すると、「自分は歴史が得意だから、社会だけは誰にも負けたくない」という気持ちが強まり、「社会を得意科目にするぞ!」と地理も頑張るようになる子もいます。このように、社会は興味さえ持てば、誰でも力を伸ばせる可能性が大きい科目なのです。
Point5 【算数】文章題は難しいと思い込まない
文章題というだけで「面倒くさい」と思ってしまう
算数の文章題が苦手な子は多くいます。文章題が苦手な子には2つのタイプがあります。まず基本的な国語力がないというタイプと、面倒だから考えたくないというタイプです。
文章の読解が苦手だったり、正確に読み取ろうとする意欲に欠けていたりすると、問題を解く以前の段階でつまずいてしまいます。しかし、国語の読解に比べて、算数の文章題を解くために必要な国語力は、日常の家庭における会話などでも十分に培えます。ただ、文章題を見ただけで「面倒くさい」と思ってしまうタイプは、少し対処にてこずるかもしれません。
確かに算数の文章題は慣れないと分かりにくく、面倒なものに感じます。
「AさんとBさんがそれぞれお金を持っていて、Aさんはそのときに持っていたお金の1/3をBさんにあげ、Bさんは3/4をAさんに渡し・・・」などという文章が何行も続いて、「最後に二人とも同じ金額になりました。最初にAさんはいくら持っていましたか?」というような問題がよくあります。
算数の文章題には「3行の壁」というものがあります。問題文が3行以上になると、突然思考がストップしてしまうというものです。少し長い文章を見ただけで「難しい」と思い込んでしまい、「どうせできないから」と解くことをあきらめてしまうのです。読解力がないわけではなく、国語の説明文はちゃんと理解できるのに、算数の文章題になると突然苦手意識を持ってしまう・・・。
そんなときは、文章題を声に出して読んでみましょう。そうすると、意外なことに読み終わった途端、「あ、分かった!」となることが少なくありません。「なんだ、落ち着いて読めば分かるんだ」という体験が、苦手意識や「文章題は難しい」という先入観を払拭してくれるはずです。
また、文章題の中から「分かっていることを書き出す」というのも効果的です。例えば「最終的に二人とも1200円になった」と書いてあったら、一つずつ戻って書き出してみるのです。「そのとき1/3をもらって1200円になったのなら、その前の段階は900円だ。そうすると、こっちは○○○円だったはず・・・」と戻っていくのです。
数学の場合、最初に登場するAの金額をX、Bの金額をYにして、文章通り似式を組み立て方程式で解きますが、算数はそれと逆の手順で考えていくものが多くあります。これ自体は難しいことではないのですが、この手順を「面倒くさい」と思ってしまう子は多くいます。
また、数学に慣れてしまった大人にとっては、算数の考え方は独特なものに感じるかもしれません。数学では公式で解きますが、算数は非常に限られた道具を使い創意工夫で解くものだからです。でも、それが算数の面白さでもあります。
文章題が苦手という大人は多くいます。特にお母さんに多いのではないでしょうか。しかし、お母さんが「文章題は難しい」と思い込んでいると、その苦手意識は子どもにも伝わります。ですから、できるだけお母さん自身が面倒くさがらずに、2、3行程度のやさしい文章題からお子さんと一緒に解いてみましょう。
5年生にもなると、大人でも解けないような問題がどんどん出てきます。そうなってくると、一緒に解くのは難しくなりますが、3年生から4年生半ばぐらいまでの算数については、お母さん自身も一緒に学ぶぐらいのつもりでフォローしてあげましょう。お母さんが生徒役になって、お子さんに説明をしてもらうというのもいいですね。人に説明ができるということは、「理解ができている」こと意味するからです。
Point6 【算数】割合の公式は、まずは理屈を理解する
多くの子どもがつまずく「割合」
算数でつまずきやすい単元といえば、5年生で習う「割合」でしょう。「割合」は足し算や引き算のように、目で見てすぐに分かるものではなく抽象的なもののため、子どもにはイメージがしにくいというのが、難しく感じてしまう原因です。
「割合」の問題とは、例えば次のような問題です。
問題①りんごは1個50円、ミカンは1個25円です。りんごの値段を元にして、ミカンの値段を小数と分数で表しなさい。
問題②去年庭の木からりんごが25個とれました。今年は去年の0.8倍のりんごがとれました。今年とれたりんごはいくつでしょう。
問題③リボンの全体の長さの4/5は20cmです。リボン全体の長さは何cmですか?
いずれも、「もとにする量」「くらべる量」「割合」の関係から解く問題です。問題①は「割合」、問題②は「くらべる量」、問題③は「もとにする量」をそれぞれ求めます。
これら問題は、次の公式を知っていれば簡単に解ける問題です。
割合=くらべる量÷もとにする量
くらべる量=もとにする量×割合
もとにする量=くらべる量÷割合
公式のまる覚えよりも「割合は『~倍』のことだ」と考える
公式の覚え方として、よく「くもわのてんとう虫」という言い方で説明されますね。円を二分し、上の部分に「く」、下の部分をさらに二分し、左に「も」、右に「わ」の字を書き込み、求めたい数を指で隠せば、残ったふたつの数字をどう計算すればいいのか(割る・掛ける)分かるようになっているため、子どもにとっては分かりやすい覚え方になっています。けれども、この覚え方だけに頼ってしまうと、少し難しい問題が出たときに、かえって頭が混乱してしまうことがあります。
例えば、「○gの20%は100g」ということが分かっていて、「○」を求めたい場合、「○」がもとにする数字で、20%が割合、100gはくらべる数だから、「も=く÷わ」で「100÷0.2」で計算をすればいいんだな、という考えはあまりおすすめしません。むしろ、「割合というのは、○倍のことだ」と考え、「○の20%は100g」をそのまま「○×0.2=100」というかけ算の式で考える方がいいのです。その式を頭においたところで、「100÷0.2」というのが、正しい求め方です。
多くの塾では、「もとにする量(基準量)=くらべる量(比較量)÷割合だから・・・」と教えますが、割合の概念の理解がないまま進んでしまうと、「なぜここでわり算なのか」が分からないまま、ただ公式に数字を当てはめるだけの作業になってしまいかねません。「てんとう虫の図」のどこに何が当てはまるのか、何を何で割ればいいのかを考えるより、「基準量×割合=比較量」という割合の概念をまず理解し、例えば上の問題で言うなら、基準量の0.2倍という大きさが結果である「比較量」なのだ、という感覚を身につけておくようにしましょう。それを理解せずに「てんとう虫の図」だけで覚えてしまうと、本当の意味で理解したことにはなりません。
「てんとう虫の図」は確かに便利なアイテムです。でも、機械的に利用するのは意味がありません。「割合とはこういうことだ」という理屈が分かった上で、図を利用するようにしましょう。
同じことは、「速さ」でも言えます。速さの公式を覚えるときに使う「はじきのてんとう虫」も、理屈は分からないまま、図だけに頼らないこと。「速さ×時間=距離」の基本を十分に理解した上で活用しましょう。
Point7 【国語】長文は「傍線を引く」がポイント
問題を解きやすい「読み方」を習慣化させるのが大切
長文の素材文は、全体をあまり丁寧に読むと時間がなくなってしまいます。そこで多くの塾では、ポイントとなりそうな部分に自分で傍線を引きながら読むことを指導しています。物語文であれば状況の変化を表す部分、時間経過を表す部分、感情が変化している部分などに傍線を引くようにします。
一方、説明文の場合は、段落同士のつながりを表す言葉、形式段落の要旨に当たる部分に線を引きながら読みます。こうして素材文を読み進めていくと、設問に答えるときに非常にラクになります。なぜなら設問の多くは、それらを聞いてくるからです。
国語の読解問題が苦手な子には、こうした読み方を習慣化させましょう。それが、苦手克服の一番の早道です。この習慣がつけば、文章の「型」がわかるようになります。「対比」を中心に書かれている構成なのか、「例示」を中心に書かれている構成なのかなどがわかるようになり、それが結果として「答え」につながっていきます。
構成をつかむときにポイントとなるのが、「つながりを示す言葉」です。「一方」「これに対し」などの言葉があれば「対比」で、「さらに」なら「例示」の継続といったように、つながりを示す言葉に傍線を引いて常に意識をしておくと、文章の構造が把握できるようになります。
国語も親の声かけで伸ばすことができる科目
算数などと違って、国語は親が教えにくい科目と思われがちです。しかし、前にも説明しましたが、国語は親の声かけによって伸びる科目なのです。
お子さんが説明文を読み進めていく際に、「この段落はどんな内容だった?」「この文章を3つに分けるとしたら、どことどこで切れると思う?」など、適度なタイミングで発問をしてあげると、子どもは「そうか、そういうことを意識して読まないといけないのだな」ということに気づきます。
物語文で「何を聞かれているか」について、きちんと把握させることも大事です。「花子さんの気持ちの変化」を聞いているのに、「気持ち」を表すところだけに傍線を引き、「変化」の部分に線がない場合は、問題文の把握が不十分です。こうした場合は、まず「何を聞いているのだと思う? 気持ち? それとも気持ちが変わったこと?」と聞いてみましょう。ここが曖昧のまま、とりあえずあちこちに線を引いてしまう子が案外多くいます。傍線は引きすぎてもいけません。引きすぎはかえって混乱します。「気持ちの変化の部分を聞いている」ということを理解させた上で線を引かせると、正しい部分に傍線が引けるようになります。
こうした声かけを4年生の段階から根気よくやっていくことをおすすめします。そうすることで、お子さんは、「国語の答えはすべて素材文の中に書いてある」ことに気づくはずです。読解問題というのは、「キーワード探しのようなもの」ということに気づけば、国語に対する苦手意識は薄れ、楽しみながら解けるようになります。
特に物語文については、「自分の感想」や「自分の意見」にこだわりすぎないことが大事です。通常の読書であれば、自分が思うように解釈していいのですが、入試の場合は、設問者がいて、回答者がいるということを忘れてはいけません。そのためには、まず素材文を俯瞰することが前提になります。つまり、自分の意見はさておき、客観的に読むことが大事なのです。
それを気づかせるために、親の声かけはとても重要になります。こうして、読み方と解き方がわかってくると、自然とポイントに傍線を引く習慣がつきます。正しい傍線が引けるようになれば、あとはそれに答えるだけ。そう思ったら、国語のハードルがぐっと下がるのではないでしょうか。
Point8 【理科】理科嫌いになるターニングポイントは5年生
5年生で内容が抽象的に&計算単元が出てくる
大手進学塾の理科の授業は、4年生から(3年生の2月)スタートします。4年生では、「メダカ」「昆虫」「植物」「太陽と月」など、いわゆる暗記単元といわれるものの中でも身近な内容を扱うので、4年生の段階では理科の学習につまずく子はあまりいません。また、春・夏・秋・冬と一年を通して季節を意識しながら学んでいくので、ストーリーを楽しむこともできます。
しかし、5年生になると、算数・国語の宿題が多くなると同時に、理科の学習も「てこ」「ばね」「水溶液」「ふりこ」などいわゆる計算単元のものが増えてきます。こうした計算が出てくると、”算数嫌い”な子は”理科嫌い”にもなってしまう傾向があります。また、「浮力」や「電流」などの物理単元は、物質として目に見えにくく、抽象的な内容なため、子どもには理解しにくく、5年生を境に”理科嫌い”になる子が増えてしまうのです。
大手進学塾のテキストは、「5年生で6年生の単元まで学習+6年生でもう一度繰り返し学習」というカリキュラムになっているところが多いので、5年生の授業では、難解な化学・物理単元も1週間という短いスパンで学習していきます。そうなると、1週間の学習は大忙しです。特に5年生は算数・国語の宿題も多く、それをこなすのに時間がかかってしまため、理科の学習にあてる時間があまり取れません。
その上、習う単元も難しくなるのですから、一度「分からない」となった単元の振り返りの時間が取れないというのは、大きな痛手となります。こうした単元が1つ、また1つと増えていくと、復習テストだけでなく公開テストの成績も下がっていきます。すると、自分が「理科ができない」と思い込んでしまい、ますます”理科嫌い”になってしまうのです。
子どもを「理科嫌い」にしないために親ができること
では、”理科嫌い”にしないためには、どのようなことを心がければよいのでしょうか?
先にお伝えしたように、理科嫌いになるタイミングはほとんどの場合、5年生になるときです。4年生で学習する「昆虫」が苦手というお子さんもいますが、それは「昆虫」を身近に感じたことがないからであって、5年生の”理科嫌い”とはまた少し違った話になります。
大手進学塾にお子さんを通わせている場合、5年生のカリキュラムを細かくチェックし、次の単元がいつ行われるか確認しておきましょう。
- ものの溶け方
- 中和
- てこ
- ばね
- 浮力
- 電流
- ふりこ
具体的な内容から抽象的な内容に変わる5年生を境に、”理科嫌い”になってしまう子は多くいます。理由は明確です。内容そのものが、子どもにとっては難しいのです。また、これらの単元は、塾の先生の授業スキルによって、お子さんの理解度に大きな差が出る単元でもあります。ですから、これらの単元を習った日は、塾から帰ってきたらお子さんに「今日の理科の授業はどうだった?」と聞いてみましょう。そのとき、すぐに答えられず、今ひとつ内容が理解できていないようだったら、要注意です。
けれども、ただ漠然と「何が分からなかったの?」と聞いても、多くの場合要領を得た答えは返ってこないでしょう。なぜなら、何が分からなかったか具体的に説明できるようなら、そもそも授業を分からないと感じないからです。
そこで、こういう聞き方をしてみましょう。
「○○って、何のことって塾の先生は言っていた?」
ここでは「先生は何て言っていた?」と問いかけるのがポイントです。お子さんは、今日塾であったことを答えるだけなので、答えやすくなります。また「正解か不正解か」を問われているわけではないので、お子さんの気持ちのハードルを下げることができます。
そこで、うまく答えられないようなら、ヒントを出します。ヒントの出し方にも工夫が必要です。「カタカナ4文字。○○○○現象って、塾の先生は言ってなかったかな? さて何でしょう?」と勉強でもクイズ形式にして聞いてみると、子どもは喜んで乗ってきます。そのとき、なかなか答えが出てこなくても「何で分からないの? 塾で習ったんでしょ?」となじるように言ってはいけません。そういう口調になった途端、お子さんの楽しい気分が消え、「勉強をさせられている」モードになってしまうからです。記憶が曖昧で、言葉が出てこないときは、一部分だけ答えさせましょう。
ここで何をしてほしいのか言えば、今日習った単元が何であったかを思い出させてあげてほしいのです。こうした質問は、塾の帰り道や夕飯の時間に聞くことができます。この振り返りが復習の第一歩なのです。
そして、親の子の会話の中で、お子さんがどこまでを理解していて、どこからが理解できていないかを探っていきます。それから、実際に問題を取り組ませる段階へと入っていきますが、いきなり難しい問題を与えてはいけません。まずは基本問題から入り、応用、発展へと進めていきましょう。
理科の「わからない」をつくらない秘訣
理科を”苦手”にしない秘訣は「わからないまま」にしないことです。中学受験では、理科は算数や国語と比べて重要度の低い科目と思われがちです。また、暗記科目だから、後回ししても大丈夫と思っている親御さんも多いようです。
しかし、先にも紹介しましたが、中学受験で学習する理科の範囲は膨大です。それを6年生になってから必死に覚えようと思っても、時間がありません。多くの塾では、中学受験に必要な理科の学習は5年生でおおよそ終了し、6年生からは演習問題に取り組んでいきます。
5年生の段階で苦手分野を作ってしまうと、その後、なかなか点が採れず、理科に対する苦手意識が増してしまうので、5年生でしっかり知識を定着させる必要があります。そのためには、先に述べたように、授業後の振り返りを習慣化させましょう。
それと、もうひとつ大事なことがあります。それは、授業前の準備です。例えば理科の授業では、植物の葉や電気の流れなど、先生が黒板に絵を描いて説明をすることがあります。そのときに、同じ絵をノートに書き写すことに夢中になってしまう子がいますが、そういう子は、授業中の先生の大事な説明を聞き逃している可能性が高く、その単元の大事なポイントを理解しないまま授業を終えてしまう傾向があります。それでは授業の後、振り返りをしようと思っても、何が大事なのか答えることができません。
「わからない」のは、授業中にポイントを聞き逃しているからです。そうならないためには、その日に習う単元のテキストのイラストをあらかじめコピーしてノートに貼っておき、そこに説明を書き込んでいくという方法が有効です。授業で知識をゼロから学ぶのではなく、授業を「大事なことを確認する場」として活用するのです。そうすれば、「わからないまま」にはなりません。大事なのはその日にうちに「わかった」という状態にしておくことです。
Point9 【理科】どんな問題でも「図」にするとわかりやすくなる
理科の計算問題を上手に解く「見える化」の技術
理科が苦手という子は多くいます。特に物理分野や科学分野など、数字が出てくるものに苦手意識を持つ子が多いようです。
そんな子におすすめしたいのが”見える化”です。例えば、問題文の中にたくさんの数字が出てきたとしましょう。数字が苦手な子は、それを見ただけで「難しそう」「私にはムリ」と思ってしまいますが、どんなにたくさん数字が出てきても、きちんと分類し、対応する数字同士を結びつけて表などにまとめると、情報がすっきりしそれほど難しく感じなくなります。
例えば、水溶液の問題でこんなものがあります。(『中学受験は親が9割[学年・科目別]P91より』
【問題】下は塩酸50gに水酸化ナトリウム水溶液を加えていったあと、水分を蒸発させると残る固体の重さを表しています。塩酸50gと中和する水酸化ナトリウム水溶液の重さは何gが答えなさい。またそのときにできる固体の名前と重さも答えなさい(表)
塩酸 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
水酸化ナトリウム水溶液 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 |
固体 | 2 | 4 | 6 | 7.5 | 8.5 |
これは水溶液の中和の問題で、水酸化ナトリウム水溶液の重さと、固体の分量、できた固体の名前の3つが問われています。まず、固体の名前については単純に知識があれば答えられます。答えは「食塩(塩化ナトリウム)」です。
あとの2つについては、表を見ただけでも、6と7.5の間が固体の増え方に変化があることが読み取れるので、このあたりに解答がありそうだなという見当はつきます。実際、この表をグラフに表すと、簡単に解くことができます。このように理科の問題は、常に分かっていることを「表」で表す習慣ができていて、それをさらに「グラフ化」することに慣れていると、一見難しく見える問題も容易く解けてしまうのです。
日常の学習から「わかっていることを『見える化』する習慣を
濃度の問題が苦手という子は多くいますが、まず分かっていることを表にして視覚化することで、非常に分かりやすくなります。ホウ酸などの物質の重さ、水の重さ、水溶液全体の重さを整理し、その上で解けきれなくなったときにできる結晶の重さを考える、という道筋がすぐにつけられるようになります。中和にせよ、溶解度にせよ、設問を読み解いて「表にできるかどうか」、あるいは「表をグラフにできるかどうか」が決め手になるのです。
こうしたことを習慣化させるには、日頃から問題を解くときに、「分かっていることをリスト化する」「表にする」、可能なら「グラフにする」といったことに慣れておく必要があります。
濃度の問題に限らず、理科や算数の問題全体に言えることですが、難問を考える上で、図を描いたり、整理したりすることは絶対に必要です。なぜなら、問題に示される条件が複雑かつ多岐に渡ると、頭の中の記憶だけでは対応できなくなるからです。
図を描く癖をつけさせるには、とにかく「描きたいように描く」から始めましょう。各単元には「この問題はこういう図を描くと考えやすい」という方法はありますが、はじめはあまり正解にこだわる必要はありません。多くの子どもは、図を描くことを面倒くさがります。それは、「図を描いた方が、結果として面倒ではない」という経験をしていないためです。ですから、はじめは求められる図から少しかけ離れていても、図を描いて頭の中を整理しようとしたことを褒めてあげましょう。
そして、徐々に図を描くメリットを感じることができるようになったら、より見やすい効果のある図示の仕方を提案してあげるといいでしょう。はじめから、「この図を描いて解きなさい」というのは、そのときは短時間で理解でき効率的ですが、長い目で見たときに、お子さんの「自分で考える力」を奪ってしまうことになります。
こうやって、たくさんの図を描き、考える癖がつくと、高学年になったとき、問題を読んだ瞬間に「あ、これはこの図を描くとわかるぞ」「この図を描くと解けそうだな」と、対応策を自分で選択できるようになります。
Point10 【社会】「点」ではなく「つながり」で覚える
山や川の名前を知っているだけでは答えられない
社会のテストで「地図」が出ると、かつては白地図の空欄を埋めるという問題が多かったと思います。親御さんたちが小学生だった頃も、地名、県庁所在地、山や川の名前など、一生懸命覚えた記憶はありませんか?
確かに社会の学習では、これらを一つひとつ覚える必要があり、今でも暗記すべきことが多いのは変わりません。しかし、かつてと大きく違うのは、今はそれらを単純に問う問題はほとんどなく、項目同士のつながりを理解していないと答えられない問題が増えている点です。
例えば、かつてなら「この川の名前は何ですか?」だったものが、今は「この地域にこの川とこの川がこうした位置関係にあることから、どんな産物が多いと考えられるか?」といった問いに変わってきています。地図上を「点」で覚えるのではなく、点と点がどうつながっているかを聞いてくるのです。地図の読み方も暗記ではなく、「そこから何を読み取れるか」という視点で捉えないと解答できなくなっています。
雨温図も「そこから何を読み取るか」が大切
同じように、雨温図も「点」ではなく、「つながり」を問う問題になっています。中学受験の地理では、必ず雨温図に関する問題が出題されます。日本の気候にはいくつかの特徴的な雨温図がありますが、なかでもよく登場するのが、新潟県の雨温図です。
例えば、お子さんに「新潟辺りの気候の特徴って分かる?」と聞いたとしましょう。そのとき「冬は寒い」と答えたときは要注意です。間違ってはいません。確かに寒いんです。ただ、雨温図の勉強を通じて理解しておきたいポイントの一つに、「新潟県は付近を暖流である対馬海流が流れているから、1月の平均気温が氷点下にはならない」というものがあります。ですから、「新潟県の気候の特徴は?」と聞かれたときの模倣解答は「冬は寒い」ではなく、「冬に雪が多い」となります。「冬の降水量が多い」と答えられたら完璧ですね。
この特徴を理解できていると、例えばよくある問題ですが、「新潟県では伝統工芸が盛んですが、それはなぜですか?」というような問題にも答えられます。「冬に雪が降り、農業ができないから」が、この答えです。
こうして雨温図から、その土地の気候の特徴を読みとり、そこから見えてくる暮らしや文化を「つながり」で知ることができるのです。
中学受験において、社会は単純な暗記科目と思われがちです。でも、単純な詰め込み学習では、知識をバラバラに覚えるだけで本当の意味で理解することまではできておらず、少し角度を変えた問題が出ただけで何が正解か分からなくなってしまうことがあります。
各都道府県に関する知識は、自分の頭の引き出しにそれぞれ都道府県別に整理しておくようなイメージで、「新潟県」という引き出しを開けたら、地形から気候、気候による特徴から農業、工業、文化、人々の暮らしに至るまで総合的に理解しておくようにしましょう。
Point11 【社会】難関校入試求められるのは「知識力」と「論理力」
難関中の社会科入試の2つのタイプ
一般的に社会の入試は、地理2:歴史2:公民1の割合で出題されます。しかし、男子御三家をはじめとする難関校の社会入試では、地理・歴史・公民と分野を分けずに、総合的な問題を出題する傾向にあります。
社会は、学校や塾の授業では、地理・歴史・公民の3分野に分かれていますが、ざっくり言えば「世の中を知る教科」だといえます。ですから、「歴史は好きなんだけど、地理は苦手なんだよね」などと分野を分けて考えずに、例えば”地理を横の線””歴史を縦の線”というようなイメージで、立体的に学習をすると、”得意””不得意”という意識が薄れます。
では、中学受験の社会入試で最も難しい問題を出す学校はどこなのでしょうか?
難関校の社会入試は、大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつは、「知識の量」が求められる入試です。一般的に、社会入試は、国語や算数よりも配点が低く、国語・算数が100点満点なら、理科は50~80満点になっています。しかし、女子学院や頌栄女子学院など、社会入試にも力を入れている学校は、中学受験ではめずらしく、配点は国語と算数と同じで、問題数が非常に多くなっています。
また、男子御三家の中でも開成は、「知識の量」で勝負が決まります。そして、合格者平均点が非常に高くなっています。つまり、ひとつの”知識の欠け”が命取りとなってしまうのです。これらの学校の社会入試は、「世の中のことを幅広く関心を持つ子に来てほしい」という学校側のメッセージが込められています。
一方、麻布と海城の社会入試は記述問題が中心です。この2校では、単に知識を問うだけの問題はほとんど出題されません。文章やグラフなどの資料から問いに答えるのに必要な情報を読み取り、それを論理的に説明する記述力が求められます。麻布の社会に対応するには、ある程度、大人の世界の常識に通じておく必要がありますし、海城の社会は、社会のテストというよりは読解問題に近く、どちらに対しても特別な対策が必要になります。単純に偏差値で比べると、海城よりも開成の方が上ですが、開成の社会ができても海城の社会ができない子はたくさんいます。
社会は「親が教えてあげられること」が多い科目
このように、ひとくちに社会入試といっても、問題の内容は大きく違うのです。ですから、「この学校にわが子を入れたい」と思うような学校があれば、まずは親御さん自身が、その学校の過去問題を解いてみてください。「今の中学受験ではこういう問題が出るんだな」と親が知っていると知らないとでは、大きな差が出ます。
なぜなら、中学受験において社会は、親が教えてあげられるところが多い教科だからです。前にもお伝えしましたが、子どもを社会好きにするには、できるだけ小さいうちから社会を意識させてあげることが大事です。それには親の関わりがとても重要になります。
子どもは小さいときほど、自分のまわりのいろいろなことに関心をもち、「これって何? これってどんなこと?」と親に質問をしてきます。お子さんに何か聞かれたら、どんどん教えてあげましょう。ただし、そのときについ「こんなことも知らないの?」と言ってしまう親御さんがいますが、それはNGです。そう言われた途端、子どもは「人に聞く」ことを躊躇してしまうからです。
また、大人だからといって、すべてを知っているわけではありません。お子さんから質問をされて、親御さん自身も分からなければ、「なんだろうね? 調べてみようか」と親子で一緒になって調べてみるといいですね。
休日に親子で博物館や歴史館に行くのもおすすめです。ただし、連れて行くことだけに満足しないようにしましょう。せっかく連れていっても、親御さんがスマホをいじっていたり、退屈そうにしていたりして、興味がなそうにしていては台無しです。展示物の資料などを読み「へぇー、そうなんだ。この時代の人はすごいことをやっていたんだね」など、親がおもしろそうにしていると、子どもも興味を持つようになります。
社会入試は、知識の量を求めるものでも、論理的思考力を求めるものでも、大事なのは「世の中に関心が持てるかどうか」です。そして、それを導けるかどうかは親の力にかかっているのです。