塾の授業、理解しながら聞く力をつけるには
授業では、まずは聞くことを優先しましょう
「塾の授業、ちゃんと聞いているのかしら?」
塾に通わせているのに、なかなかお子さんの成績が伸びないという悩みを持つお母さんなら、一度はこう考えたことがあるかもしれませんね。「ちゃんと聞いている」というのがどういう状態なのか、ここでは考えてみましょう。「ちゃんと聞く」というのは、先生の言ったことを理解しながら聞くということです。
上手に授業をする先生は、生徒たちへの指示の出し方が的確です。今は聞くとき、今は書くとき、という指示を的確に与えてくれるので、生徒たちは聞くときには聞くことに集中することができるのです。
では、授業が上手な先生ならすべてのお子さんが内容をよく理解できるかというと、残念ながらそんなことはありません。それは、お子さんの「作業スピード」と「聞く力」に理解度が左右されるからです。
たとえば、先生が「はい、じゃあ黒板に書いてあることを写してください」と指示を出したとき、お子さんによって写すスピードは様々です。中には、もう次の話題に先生の話が移っているのに、下を見て書き続けている子がいるのです。この場合の問題は「作業スピード」です。
こうなると、授業の中で「話が聞けなかった」部分が増えていき、理解できない、わからないことが多くなっていってしまいます。だから、まずは書くことよりも聞くことを優先しなければなりません。書くのがゆっくりなお子さんには、このことをしっかり伝えてあげなければなりませんね。
毎回の授業が理解できているか、お母さんが確認を
中学受験のために塾に通っているお子さんが集まるクラスで、先生の話を聞かない子はあまりいません。先生が説明しているときにはまじめに聞いている子がほとんどです。では、まじめに聞いているのに、なぜ理解できないということが起こってくるのでしょうか。
音声として人の声を聞くことと、聞いたことを理解することは違います。しっかり理解しながら聞くことができる力が「聞く力」ですが、これをつけるには本人の意識の問題だけでなく、訓練が必要なのです。
進学塾で習う内容は、学校の授業の内容に比べて大幅にレベルが高いものです。学校ではしっかり理解しながら聞くことができているお子さんでも、慣れるまではまるで理解できない、ということもあるのです。
だから、特に塾に入ってしばらくの間は、毎回の授業の内容をどれくらい理解できているか、お母さんが確認してあげてほしいのです。
「聞く力」の育て方
では、「聞く力」を育て、塾の授業をより理解できるようになるための練習には、どのようなものがあるのでしょうか。
ひとつは、「授業をよく思い出す練習」をすることです。
- ① 今日の授業で先生が解き方を説明した問題はどれか
- ② ①をうけて、みんなで演習した問題はどれか
この2つをしっかり思い出せるかが、まずはじめのスタートです。塾の授業は(特に理系科目は)おおむね上記の①、②の繰り返しのはずです。1つのことを習ったら、それができるようになったかを問題を解いてみて確認する。この繰り返しということです。
①では先生が例題などを解説することが多く、②では子どもたちが「基本問題」「練習問題」を演習することが多いでしょう。この①と②の組み合わせをちゃんと覚えているかがチェックポイントです。
ノートには、先生が説明した問題のあとに演習した問題が並んでいて、ノートを見れば①と②の組み合わせはすぐに分かるはずですが、実際テキストだけを見ながら、お子さんが「これははじめに先生が説明した問題」「それからみんなでこの『練習問題1』を演習した」「みんなで解いた問題の中で、先生が解説したのはこの問題」と言えるかどうかです。
こうやって、「授業で何が行われたか」をよく思い出す練習をすることで、「覚える」⇒「思い出す」訓練をします。
「先生はあの時なんと言ったか」を思い出す訓練を
次に、実際に先生が解き方を説明した問題(①)と、みんなで演習した問題(②)の中で、先生が解説した問題に関してです。先生は、具体的になんと言ったのか、どう説明したのかを思い出すのです。
はじめは断片的かもしれませんが、練習すれば少しずつ思い出せるようになっていきます。この練習を続けていると、だんだん授業中に先生の話を聞くときの「聞き方」も変わってくるからです。あとで思い出すことを前提に、「人に説明できる形」で聞き取ろうとするので、おのずと理解しようという聞き方になってくるわけです。
授業を思い出させるときは「そのとき先生はなんて言ったの?」「そしたら誰か何か発言した?」「そのときあなたはどう思ったの?」など、実際に授業で起ったことを映像のように思い出させるようにしましょう。この訓練は、理解力と記憶力を育てる上で有効です。
日常の訓練でつけることができる「聞く力」
「聞く力」は、日常生活の中でも鍛えることができます。テレビを見ているときに、CMに入った瞬間、それまでにテレビの中で起こっていたことを解説してもらうのです。もちろんドラマなどでもいいですが、バラエティ番組でも訓練できます。誰が、誰になんと言って、そのとき言われた相手はどう反応したのか。それはなぜか。
「さっき司会者の◯◯さんは、なんであんなことを言ったの?お母さんちょっと聞き逃しちゃって。」と言えば、得意になって説明してくれるお子さん、結構多いのではないかと思います。
こうやって「聞く力」を訓練していくと、自然とお子さんの頭の回転は早くなっていきます。なぜなら、後で説明することを前提に、予測したり補足したりしながら話を聞く習慣がついていくからです。
実は理系科目だけでなく、国語の読解力にもつながる「聞く力」。意識的に家庭の会話の中でも鍛えるチャレンジ、してみてもいいかもしれませんね。