中学受験情報局『かしこい塾の使い方』

夏休みに一気に成績が下る落とし穴 知らなかったでは済まされない 休校による「見えない」学力低下

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公開: 最終更新日:2021年08月12日

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こんにちは。
中学受験情報局主任相談員の西村則康です。

各塾の6月の組分けテストの結果を見て、1つ大きな事実に気づき驚いております。

休校明けのテストで得点できず「クラスダウン」をしないか?
周りのご家庭と、大きく差がついてしまったのでは?
順位が一気に下がっているのでは?

と多くのご家庭がご心配されていました。

ところが蓋を明けてみると、テストの結果は普段の順位くらい。
偏差値もほぼ、いつも通りだった。

というご家庭が大半だったのです。

一見、休校を乗り越え「成績を維持できた」というように見えなくもありませんが、例年の平均得点率と平均正答数と比較してみると、今年の平均は低下傾向にあることがわかります。

何が起きているかというと、全体的に軒並み学力が低下しているため、偏差値や順位には現れず、見た目上は「学力に影響はなかった」ように見えているということがわかったのです。

それを如実に表すように、稀有な例ではありますが、休校中に学習が上手く行っていたご家庭では、周りの学習不足もあり、例を見ないほどに著しく偏差値・順位が一気にアップしています。

中学受験は成績の良いお子さんから合格する「絶対順位」でありますから、順位や偏差値が維持できているのなら良いのでは?という楽観的な見方もできますが、休校中の学習不足によって、これから習う授業についていけなくなり、大きく足を引っ張られ、夏休みをきっかけに一気に成績が下がってしまうことが既に容易に予測できます。

例えば5年生では、休校期間中にご自宅で学習した単元に、例年でもつまずきやすい「割合」「速さ」など算数のコアとも言える単元が含まれており、この2つの単元を完璧に理解できていないと、夏休みから学習する「割合と比」「速さと比」の単元を理解することが難しくなります。

ほとんどのご家庭で、休校により学力が低下してしまっているのは否定できません。

今回の記事では、
休校中に学習ができていたかどうかのチェックシートと、夏休みを乗り越えて成績を飛躍的にアップさせるために7月中に取り組むべきことをまとめました。

1. 休校による「見えない」学力低下とは?

1.1 休校による、見えない学力低下とは?

一部の学習が上手く行ったご家庭をのぞいて、全体的に休校中に学力が低下してしまったことは間違いないと言えるでしょう。

学力低下の原因は大きく分けて2つあります。

  • 演習不足による「学習量」の低下
  • 確認不足による「学習の質」の低下

順に説明してきます。

A. 演習不足による「学習量」の低下

通常であれば塾とご家庭の両方で問題演習を行いますが、普段と比較するとさばききれた演習量がどうしても少なくなってしまったというご家庭が大半です。
問題演習は筋力トレーニングのようなもの。演習を重ねることで、問題を解く速度が上がっていきます。
演習不足による学習量の低下は、今後の成績低下の大きな要因の1つとなりえるでしょう。

B. 確認不足による「学習の質」の低下

塾では一斉授業であっても、ある程度先生が理解度をチェックして授業を進めてくれます。これは長年の経験によるものが大きく、良い先生は今子どもたちがどこで迷っているのかを瞬時に見抜けるものです。ところがご家庭での学習では先生のチェックが入らず、サポートもできないため、普段と比べて理解が浅いままで学習が完結してしまっているケースが多く見られます。
また塾から出されたテストをご自宅で行い、学習の進捗チェックも行われていますが、ついつい制限時間が甘くなってしまったり、親御さんがもう少し頑張ったら解けそうというお子さんの姿をみて、アドバイスをしてしまったりしてしまうことで、平素より「学習の質」に対するチェックが正確にできていないということも、休校明けのお母さんからお話をお聞きして見えてきました。

その結果、学習の「理解度」が浅いまま完結している単元ができており、特に5年生の「割合」「比」を始め、休校中のカリキュラムには今後の学習の基礎となる単元が多数含まれています。
これらの単元の「理解度」が浅いまま放置してしまうと、成績ダウンの大きな要因となってくるでしょう。

上記2点は休校中の対応で、どの塾もカバーできなかったことなので、予め意識的に対策をできていたご家庭以外は、学力が低下してしまってもおかしくない状況にあったことがわかります。

ただし、全ご家庭が同じ様に、学習量が不足し、学習の質を見直す機会が少なかったため、偏差値や順位という普段「学力UP」の指針としている数値には現れて来ないのです。

1.2 【チェックシート】「見えない学力低下」を疑うべきご家庭とは?

では具体的に、どのようなご家庭が「見えない学力低下」を疑うべきなのでしょうか?

下記の項目に心当たりがあるご家庭は、既に「見えない学力低下」が始まっていると考えた方がよいでしょう。

□ 休校明けと休校前で、順位・偏差値ともに大きな変化がなかった
□ マンスリーテストはできるが、組分けテストは思ったほど得点できない
□ 塾から出された宿題を全部やっている
□ その日塾で習ったことを聞くと、上手く説明ができない
□ 基礎問題はできるが、応用問題は手も足も出ない傾向がある

上記の項目が2つ以上あてはまる場合、休校の影響で既に「見えない学力低下」が始まっている可能性が高いです。

というよりも、休校期間を経て、「どれだけ頑張っても成績が上がらない学習方法」が身についてしまい、例年と比較にならないほど忙しい夏休みに、その良くない学習方法が更に染み付いていくリスクがあると言えます。

2. 夏休みに確実に成績を上げる「理解型」学習方法を身につける

それでは夏休みに成績をダウンさせずに、安定して成績を伸ばしていくためには、今どのような学習が求められているのでしょうか。

2.1学習レベルのピラミッド

私の経験上、お子さんの学習方法は大きく3パターンにわかれます。
下記の図を御覧ください。

成績上位層ほど、「理解型学習」と呼ばれる学習方法を実践できていますが、成績が伸び悩んでいるご家庭の大半が、「丸暗記型学習」か「作業型学習」をしています。

各学習方法の特徴を簡単に解説します。

A. 作業型学習

勉強を作業として捉えているお子さんが陥ってしまう学習方法です。
塾から与えられた宿題は全部こなし、とにかく宿題や課題をさばくことを大切にしていると陥りやすい学習方法です。
学習時間をしっかり取れていても、問題を埋めることに集中するあまり、解法を記憶することもなく、その場の問題をこなしていく「作業」に没頭するタイプの学習方法です。
解法を覚えていないため、テストになると得点できず、出題範囲の狭い定期テストでもあまり得点できない傾向があります。

B. 丸暗記型学習

お子さんが「この問題は、この解き方が使えるぞ」と、「解法と問題を紐付け、何故そうなるのかを理解している」というより、「ただ解き方を覚えてしまう」という学習をしてしまっているパターンです。
具体的にいうと、普段の塾の学習では、とりあえず今習った「解き方」をそこにある問題に当てはめれば問題が解けてしまうため、普段の勉強では、「理解できている」ように見えているのです。
解法だけを暗記しており、「なぜそうなるか?」を理解するまでたどり着いていないため、いざテストになって、複数の単元から様々な問題が出題されると、目の前の問題に、どの解法を使えばいいのか思考が停止してしまい、応用問題はおろか、少しだけ変形された基礎問題ですら全く手が出なくなってしまうのです。
このタイプの学習方法をしているお子さんは、マンスリーテスト、カリテなどの出題範囲の狭いテストでは得点できるものの、複数単元から出題される組分けテストでは点数が伸び悩む傾向があります。
頑張っているのに成績が上がらない状態は、丸暗記型学習がみについてしまっている可能性が高いでしょう。

C. 理解型学習

お子さんが、「どうして、その答えになったのか?」をきちんと順序立てて説明できるまで理解を深める学習です。成績を安定して伸ばしていくために最も必要とされる学習方法といえます。問題の問われ方が変形しても柔軟に対応でき、応用問題も得点していけるレベルまで理解度を深めているため、安定して成績を伸ばしていくことができます。この学習方法が習慣づいているご家庭では、テストの種類を問わず、広範囲からの出題でも安定した点数が取れ、まさに中学受験の合格に必要な学習方法と言えるでしょう。
演習量を増やして無理矢理詰め込む必要もないため、高度な学習方法ですが、より効率よく勉強できるというのも特徴です。

今年の夏休みに成績を安定して伸ばしていくためには、「塾で習った単元をしっかりと理解する」という学習習慣を身につける必要があります。

ところが休校期間中に、ご自宅で演習をこなすだけで、しっかりとした解説を聞けなかったという環境がお子さんたちの「理解」深める機会を減らし、「丸暗記型学習」「作業型学習」の癖が強くなってしまったご家庭が多いようです。

今年の夏休みは塾と学校の両方に通い、限られた時間の中に、カリキュラム消化を優先し、膨大な量の宿題が次々と出されます。

ご家庭で今必要な学習を取捨選択してあげることも大事ですが、今年の夏の大量の詰込型の学習をただこなしていくと、更に「丸暗記型」「作業型」のよくない学習傾向が身につき、どれだけ頑張っても成績が伸びないという悪循環に陥ってしまうことは容易に予測ができます。

2.2ご家庭で「理解型学習」を実践する2つの方法

現在、お子さんは「理解型学習」を実践できているでしょうか。

特に5年生は日能研を除き、夏〜新年度にかけてで、受験に必要なカリキュラムを全て消化する期間に入ります。

今から学習方法を切り替えておけば、志望校対策の勉強がよりスムーズにできるようになります。

そこで下記にお子さんの理解を深めるために、今日からご家庭でできる方法をまとめてみました。

方法1. 塾から帰った後の親御さんの声かけ

授業から帰ってきたら、「今日塾ではどんなことを習ったのか?」を聞いてみてください。

塾の先生がどう問題を解いていたか?
大事なポイントは何か?
どんな図を書いて説明していたか?

必要があれば、図も書いてもらって、今日やったことをどれくらい理解しているか聞いてあげ、本当に理解できているかを確認してあげてください。

もし説明が上手くできていないようでしたら、塾の授業だけでは「理解」を完璧にすることができていないため、ご家庭で親御さんが教えてあげるか、家庭教師・個別指導の先生に重点的にその単元を扱うことをお願いしてみるとよいでしょう。

方法2. わかりやすい解説が乗った問題集の導入

塾の教材だけで理解させてあげることが難しい場合は、書店で「解説がわかりやすい問題集」を買って、お子さんと一緒に取り組むことも有効です。

「解説がわかりやすい問題集」の特徴としては、問題文と解説文の割合が1:1くらいのしっかりと解説が書かれているものがオススメです。

お母さん・お父さんが読んで理解できる解説が書かれている問題集があれば、お子さんの理解を促す学習をご家庭でも行うことができます。

「暗記型の学習」の癖のあるお子さんは、問題の問われ方が少し変わると詰まるため、「理解度」を確かめるという点でも、別の問題集を導入するのは有効です。

ご家庭だけで出来ることとなると、できることは限られて来ますが、上記2つの方法を導入することでお子さんの「理解度」を深めることはできます。

ここまでをまとめますと…

    夏休みに成績をあげる「理解型学習」に切り替えるポイント

  • 塾の休校により全体的に学力が下がっている傾向がある
  • 偏差値/順位が休校以前と変わっていないご家庭は注意が必要
  • 学習方法には「作業型」「丸暗記型」「理解型」の3つがある
  • 成績を安定して伸ばすためには「理解型学習」が必要
  • 「理解度」を確かめるには、塾で習ったことをお子さんに説明させる
  • ご家庭での理解型学習促進は、解説のしっかりした問題集を補助教材として導入する
  • 今年の夏休みは詰込型の学習に追われ、理解が追いつかなくなるため、特に注意が必要
  • 特に5年生は今後の学習効率を上げられるかのターニングポイント

ということでした。

特に5年生では休校中に取り扱われた「速さ」や「割合」といった基本的な概念が理解できているかどうかが、夏休み中に取り扱う「速さと比」「割合と比」(辻さんに入れてもらう)の学習に必ず必要となるため、休校中に消化した単元がしっかりできているかどうかが夏休み中の成績が上がるかどうかの分かれ目にもなってきます。

よって今日から始めるべきことは、休校中の単元を使って、お子さんに再度ご家庭で説明をしてもらい、本当に理解ができているかどうかを確かめてあげるところから始めることがよいでしょう。

理解ができない場合は、ご家庭で問題集でカバーするか、短期的でもよいので個別指導・家庭教師のプロ講師をつけ、理解型学習が定着するまでみてもらうということもオススメです。

いかがでしたでしょうか。
今年の夏休みを乗り切るためには、
休校中に習った単元の理解を完璧にし、
暗記ではなく「理解をする」学習方法を定着させることが必須となります。

塾の休校により全体的に学力が低下している中だからこそ、飛躍的に順位と偏差値を上げることができるチャンスであるともいえますので、ぜひこの機会に学習方法を見直して、成績をアップさせるチャンスをつかみ取りましょう。

お子さんの中学受験が成功することを祈っております。

この記事を書いた人
主任相談員 西村 則康 主任相談員 西村 則康
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