中学受験【学年別・塾別】夏期講習で確実に効果を出すために家庭でできること
夏休みの過ごし方は中学受験に大きく影響する
中学受験生にとって、夏休みの過ごし方はとても大切です。
長い夏休みをどう過ごすかということは、秋以降の勉強や成績に大きく影響します。
夏休みが近づいてくると、各塾の夏期講習が気になってくると思います。決して費用が高くない夏期講習、各塾が大きな力を注いでいるのも事実。春期講習や冬季講習に比べて期間が長いので、塾も子どもたちもたくさんの時間を夏期講習に費やすことになります。
特に6年生にとっては、夏期講習中は本格的な受験勉強が始まる大切な時期です。
1学期で中学受験のすべての範囲の単元の学習が終わり、いよいよ「入試で点を上げるための学習」が始まります。夏期講習は、秋以降に志望校を決めるための合否判定テストにも大きく影響します。
5年生や4年生にとっても、夏休みの過ごし方や夏期講習の取り組み方はとても大切です。
そこで今回の記事では、中学受験を成功させるための夏休みの過ごし方や夏期講習について、学年別、塾別にそれぞれ考えてみました。ぜひ参考にしてみてください。
夏期講習には準備が必須
新型コロナウイルスの状況でイレギュラーなことが起こるかもしれない2021年の夏。
夏期講習の準備は早めにしておく必要があります。
夏期講習のカリキュラムは塾や学年ごとに大きく異なります。
家庭でできることとして、まずは、塾の夏期講習のカリキュラムや日程を把握しておくことでしょう。
塾の夏期講習に向けての説明会に参加できたらいいのですが、もし参加できなかった場合も、塾から配布される夏期講習のプリントで内容を把握しておきましょう。
どの塾、どの学年の子どもにも共通しているのですが、夏期講習が始まる前に「学習の正しい作法
が身についているかいないかで、夏期講習への取り組み方に大きく差が出ます。
例を挙げると、問題文の読み方ひとつにも正しい作法があります。ただぼんやりと問題文を眺めているだけ、もしくは、あっという間に問題を読んで解き始めていないでしょうか。
夏期講習が始まる前に、問題文を最後まで読み切ってから考え始める習慣を身につけておきましょう。
学年別 夏期講習の特徴とポイント
夏期講習の学年別の特徴とポイントについてお伝えします。
6年生 目標を定めて効率的に学習を進めよう
夏期講習に臨むために、まずは意識の切り替えをしましょう。
6年生の夏休みまでの学習は、インプット型。中学受験に必要な学力を養うためにたくさんの知識を得てきたと思います。これまでの塾の学習でも「しっかり授業を聞いて、家に帰ったら復習する」という意識が必要でした。
しかし、特に難関校を志望する子は、夏休みを境にこの意識を変えなければなりません。
夏期講習からはアウトプット型の学習に変わるからです。つまり、中学受験の入試に向けて、得点力を上げるための学習になります。
夏期講習は、内容が理解できていることを前提として授業内で演習に取り組みます。
ですので、しっかり授業を聞いて復習するというよりは「目の前の問題を、一発で正解してみせる」という意識が必要です。
また、夏期講習の授業は「演習+解説」で進んでいくことがほとんどです。
演習は、「この3問を10分で解いて」と先生に言われてあたふたしてしまいがちですが、全問を解こうとせず、「1問を確実に解こう」と自分に言い聞かせて、ていねいに取り組みましょう。
解説は、基本的にとても駆け足で進みます。理解していない知識が多いとついていけなくなるので、夏期講習前にしっかり確認しておくことが大切です。
夏休みが終わると、合否判定テストの結果などを参考にして、志望校を決めていきます。夏期講習で1点でも多く点数を上げることを目標にして、しっかり取り組みましょう。
5年生 夏期講習やオプション授業には参加すべき?
6年生に比べると少し時間に余裕がある5年生。夏期講習の単元表をしっかり確認し、もし苦手な単元があれば基本だけでもおさえておいてください。
まだ受験が本格化していない5年生のうちから夏期講習には参加すべき?というご質問をもらうこともあるのですが、基本的に参加したほうがいいでしょう。
夏期講習は、他の長期休暇の講習と比べてもかなり学習量が多いです。同じ量を家庭で取り組むとなると難しいと思います。
オプション授業については、各家庭で検討が必要かもしれません。夏期講習で点数アップを目指している場合、後半のオプション授業の時間がその妨げになることもあります。
オプション授業の一部を休んで、夏期講習の復習にあてるなどの工夫が必要なこともあります。
4年生 学習と遊びのバランスが大切
4年生の夏休みは、学習の基本姿勢をしっかり身につけるいい機会です。
例えば「テスト直し」。これをちゃんとできるように、練習しておきましょう。4年生のうちに、テストを受けて終わりではなく、そこから自分でしっかり学べるようにしておくと、5年生6年生と学年が上がったときに役立ちます。
ひとつ注意したいのが、「塾の夏期講習があるからしっかり学習させなければ」と勉強を詰め込みすぎないこと。4年生の夏休みの計画は、まず遊びの計画を立てて、それに合わせて学習スケジュールをうまく組み合わせていくくらいでかまいません。
遊びやレクリエーションの時間を持つことで、その経験が5年生以降の「のびしろ」につながるからです。
いつもより時間がある夏休み、普段できないこと、たとえば親子で一緒に遊ぶ時間やのんびりする時間も大切にしてください。
塾別 夏期講習の特徴と対処法
夏期講習は塾によってその内容が大きく異なります。塾別の夏期講習の特徴と、夏期講習でより点数を上げるための塾別の対処法をお伝えします。
まず、各塾の夏期講習は、「予習型」と「復習型」にわかれます。子どもが通っている塾がどちらのタイプなのかを確認しておきましょう。
どの塾にも共通して言えるのは、夏期講習は学習内容がとても多いということ。夏期講習で点数アップを目指すにはどう対処したらいいのか、塾ごとに説明します。
サピックス(予習型)
サピックスの夏期講習の特徴は、夏期講習のカリキュラムが年間カリキュラムの一部として組み込まれています。つまり、他の塾のように「夏期講習では今まで習ったことを総復習する」という内容ではないということです。
多少の復習内容はありますが、基本的には全く新しい単元も夏期講習で習います。そして、それをふまえて2学期以降の授業カリキュラムも進んでいきます。
さらに気をつけなければならないことは、夏期講習期間中は普段より「目まぐるしく」授業が進んでいくということ。これはどういうことかというと、1つの単元を習うのにかける日数がふだんよりもぐんと少なくなるということです。
サピックスの「デイリー」と呼ばれるふだんの授業では「B授業」で新しい単元を習い、「A授業」でその復習をする、という構成になっています。この一連のサイクルは、一週間単位で進んでいきます。つまり、一週間かけて新しいことを習得するというサイクルなのです。
これが夏期講習になると、数日、早ければ1日に1単元のペースで授業が進んでいきます。
さらに、夏期講習期間は復習内容である「A授業」にあたるものがありません。「その日の授業はその日のうちに完全理解し、身につけていく」ということができないと、どんどん弱点が増えていってしまうのです。
夏期講習中には数日に1日の休みがあります。ここで、それまでの数日分の内容を完全に理解するというサイクルが必須となります。このサイクルをあらかじめ理解した上で夏期講習に臨みましょう。
日能研(復習型)
日能研の夏期講習は、内容としては完全な復習です。
特に6年生以外の学年については、塾としても夏期講習を「新入生受け入れ」の機会とも捉えているため、外部生も2学期から日能研の授業にスムーズに馴染めるよう、1学期までの復習をていねいに進めるようなカリキュラムになっています。
1学期までの学習で、消化不良になっていたり理解ができていない部分については、夏期講習は復習して身につけるチャンスと言えますが、逆に、もうすでに身につけてしまっている単元については、繰り返しによる無駄が多いともいえるカリキュラムです。
つまり、夏期講習を受けない、あるいは一部休んで家庭学習に力を入れる、という選択肢が取りやすいともいえるのです。
事前に日程と授業内容(単元)をしっかり調べて、重点的に身につけたい部分とそうでない部分の「色分け」をしておくと、効率よく夏期講習を利用できそうです。
夏期講習とは別に「身につけたい」「復習、強化したい」単元をリストアップし、夏期講習以外にどのように勉強するか、家庭教師や個別教室なども含めて検討し、予定を立てておくこといいでしょう。
四谷大塚、早稲田アカデミー(復習型)
早稲田アカデミーも含めた四谷大塚系の塾は、夏期講習のカリキュラムに一部「先取り」内容が含まれていますが、全般的には復習中心の内容です。
復習中心という意味では、必ずしも「夏期講習を絶対に受けなければならない塾ではない」といえます。先取り内容が含まれるとはいえ、「先取り」なので2学期以降にそれらの単元もちゃんと習う機会が用意されているからです。
四谷大塚のカリキュラムで要注意なのは、4年生です。
数年前の改訂により、算数のカリキュラムがかなりハードになり(サピックスと同等以上のカリキュラム進度と難度)、1学期の間にかなりの「積み残し」「消化不良」単元を抱えているお子さんが多くなっていると思います。
それらの単元を夏期講習以外の時間で、うまくモノにすることができるような計画を考えておく必要があります。
浜学園・希学園(復習型)
関西の浜学園、希学園も夏期講習は復習型ですが、並行して通常授業も進むので注意が必要です。
例えば浜学園では、午前か午後に夏期講習の授業を行い、夕方からは通常授業という忙しいスケジュールです。家庭学習の時間をどう確保するのか検討しておく必要があります。夏期講習のカリキュラムを細かくチェックし「この日は絶対に授業に出たほうがいい」「この日の授業は欠席して自宅で学習しよう」など、科目や単元ごとに検討して家庭での学習時間を確保しましょう。
夏期講習、通常授業双方で宿題も出るので、学習計画をしっかり立てて準備をしておけたらいいですね。
夏期講習の効率を上げる!家庭での実践方法
どの塾の夏期講習もその内容と学習量は膨大です。
特に「予習型」であるサピックスと日能研の場合、新しく学ぶ内容と、これまでの弱点補強を同時に進めていくことになります。
一回の授業でその内容を完全に理解することは無理です。しかもその日のうちに復習して記憶を定着させるとなると、子どもにとってはかなりハードルが高いでしょう。
そこで、夏期講習にご家庭で実践できる2つの方法をお伝えします。
家庭内ミニ授業
これは夏期講習だけでなく、普段の塾がある日に、特に4年生のうちからぜひ実践してほしい方法です。
塾から帰宅した日、10〜20分でかまいませんので、塾の授業で習ったことを家庭内で「ミニ授業」する習慣をつけてください。これは、大人が生徒役、子どもが先生役になり、その日に習ったことを説明するものです。
「今日はどんなことを習ったのか、お母さんにも教えて」
そう声をかけ、子どもが問題文を読んだりノートを見返しながら、授業内容を説明してもらいましょう。
子どもがうまく説明できなくても最後まで口を挟まないようにするのがポイントです。最後に
「ちゃんと説明できて、すごいね」
「今日もしっかり先生の話を聞いていたんだね」
などと子どもをねぎらい、認めてあげるといいでしょう。
授業で先生からどんな解説を聞き、その時にどう感じたかなどを振り返ることによって、記憶を定着させる効果があります。
○△×(まるさんかくばつ)勉強法
この方法も普段の学習で役立ちます。
夏期講習は特に学習量が多いので、問題の取捨選択が必要です。難しすぎる問題より、解けそうな問題を優先させましょう。
方法としては、授業で出た問題に○△×の印をつけていくことです。
○…簡単に解ける、確実に解ける問題
△…授業中は理解できたけど確実に解ける自信がない問題
×…授業中の先生の解説もよく理解できず、解けなかった問題
復習をするときに、○と×の問題はあとまわしにして、△の問題に重点を置きます。
この「○△×(まるさんかくばつ)勉強法」で、時間を効率的に使うことができるのでぜひ夏期講習中に試してみてください。
夏期講習や夏休みを実り多き時間に
最後に。
2020〜2021年にかけて、コロナの影響で大人がテレワークになり、子どもと一緒にすごす時間が増えたのはいいのですが、つい小言が増えてしまったというご相談を多く受けるようになりました。
思春期の入り口にいる小学校高学年の夏休み、親も声かけを工夫する必要があります。
たしなめたり叱ったりする場合は、短い言葉で簡潔に伝えましょう。
親として「子どものがんばりを認める」という基本姿勢は崩さずに、中学受験生にとって大切な時間である夏期講習や夏休みが充実した時間になるといいですね。